Netpress 第2367号 人事制度とリンクする研修体系の見直し 研修を座学で終わらせないための3つのポイント

Point
1.役割に沿った等級体系をベースとして、研修における座学の構成を考えることが大切です。
2.研修の対象者(受講生)が自分を客観視できる仕掛けをあわせて導入しましょう。
3.研修の結果を適切に評価して、実際の配置(昇進)に反映させるようにしましょう。


セレクションアンドバリエーション株式会社
代表取締役 平康 慶浩


1.研修体系は人事企画と考えるのが望ましいが、採用併設部門でも何とかなる

人事戦略、制度設計がメインの弊社ですが、研修制度についてのご相談を受けることも増えてきました。その際に確認する重要な点があります。


それは、研修の実施部門が人事企画や経営企画に関わっているかどうかです。


弊社がご支援してきた例だと、研修に関わる人事部門は、研修専門か、あるいは採用と兼務されている場合がほとんどです。特に新卒がメインの会社ではそれが顕著です。新卒を採用した後で教育をすることがセットなので、自然とそうなってしまうからです。


新卒採用を担当する部署が新卒の教育について責任を持つことは、一貫性のある適切な取り組みです。しかしその一方で、管理職や経営幹部層向けの研修が十分に進められない弊害が生じます。


なぜなら新卒採用担当は、新卒との親和性から比較的若い世代が配属されることが多いからです。そのため、管理職や経営幹部層、あるいは中堅プロフェッショナル層に対する研修のイメージがわきづらくなります。新卒に対しては社会人としての基本が何かを示せても、自分たちの先輩や上司がどう育つべきかがわからないからです。


だからこそ、経営幹部や管理職、中堅社員を育成するための研修体系構築には、人事制度を理解した人事企画が携わることが望ましいのです。とはいえ組織体制はなかなか変えられません。


そこで今回は、新卒採用を主体としている会社の研修部門において、経営幹部や管理職向け研修体系を考えるための3つのポイントをお伝えします。

2.役割に沿った等級体系をベースに座学の構成を考える(ポイント1)

人事制度を理解して研修体系に反映するためのポイントの1つ目は、等級体系に沿った検討です。階層別研修の設定、と考えればわかりやすいかもしれません。


ただし、素直に等級別に設定するのではなく、「資本の論理」「新規のバリューチェーン構築」「既存のバリューチェーン改善」「既存のバリューチェーン機能の推進」という明確な役割変化の4区分で考えてみましょう。その際には、役割、求められる能力や行動、成果を整理すると、よりわかりやすくなります。


通常の教育の仕組みは、今進めている仕事への習熟、上記の4区分でいえば既存のバリューチェーンを対象とした取り組みになりがちです。



3.自分を客観視する仕掛けを併用する(ポイント2)

2つ目のポイントは、研修の対象者が自分自身を客観視できる仕掛けをあわせて導入することです。典型的には多面評価の仕組みが有効です。


管理職以上の研修では、「研修なんて受けている暇があったら稼ぐほうがマシ」ということを口にする方も大勢います。しかしそんな方々ほど、過去に培ったスキルが陳腐化することを認めず、やがて会社のお荷物になったりもするのです。また人によっては、自分がすでに時流に合っていないことを理解しつつも、定年までの逃げ切りを図ろうとしている場合もあります。


だからまず、自分自身が客観的にどのように見えているのかを可視化することが必要です。そのうえで、可視化された他者からの視点を自分事として受け止めるステップを取り入れることが有効なのです。


そのための方法として、多面評価以外に、さらに上司との1on1を実施する例も増えています。執行役員や部長に対して、役員が1on1を行うのです。それは今や珍しい姿ではありません。

4.研修の結果を評価して配置に反映する(ポイント3)

3つ目のポイントは、研修の結果を評価して実際の配置に反映することです。言い換えれば、研修をまじめに受けて結果を出せば出世できる、という関係性を明示することです。


そのためには、研修体系の検討に際し、人事権を持つ経営層を巻き込まなくてはいけません。「研修を受講した人に対して、どのような配置を考えられるか」ということを問いかけていきましょう。


研修を配置につなげるには単年度で終わらせない計画策定が有効で、わかりやすいサイクルは3年です。初年度研修の対象となった管理職の中で優秀な方を幹部に抜擢し、翌年度に幹部研修を受けていただき、その翌年にさらに活躍いただくようなサイクルを構築できれば、研修に対する社内の印象も変わってきます。

5.研修体系を企業成長のためのサイクルに組み込む

重要なことは、研修体系のコアを日々の業務に置くことです。日々の業務で得た経験を客観視する機会として座学を設定しましょう。そこで得た気付きをもとに成長するきっかけを、1on1などのコミュニケーションで促進します。そして新たな成果を生んだ人に新しい役割を与えていく。


ぜひ研修体系を改めることで、成果と成長の好循環をつくりあげてください。


◎協力/日本実業出版社
日本実業出版社のウェブサイトはこちら 
https://www.njg.co.jp/



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