Netpress 第1898号 実は最も怖い調査!? 税務署の「反面調査」対応のポイント

Point
1.自社ではきちんと税務処理をしているつもりでも、正確な記載・記録等が行われていないと、取引先等に対する「反面調査」の対象となることがあります。
2.必ずしも「反面調査=不正がある」ということではありませんが、取引先等への影響をふまえた慎重な対応が求められます。


税理士 内田 敦


反面調査とは、税務調査の手法の1つで、調査対象者の取引先等に対して実施される税務調査のことです。反面調査は、すべての税務調査で行われるわけではなく、保存されている資料やデータなどから正確な取引内容が確認できないような場合に実施されます。

以下では、反面調査の実態とその対応策についてみていきます。

1.具体的な反面調査の内容とは

反面調査が行われる主なケースは次のとおりです。

・売上もれが多い

・資料が保存されていない

・現金取引が多い

・改ざん・不正があった(疑われる)

・税務調査に協力しない

反面調査の具体的な方法としては、「直接、取引先等を訪問する調査」「文書(郵送等)による調査」「電話による調査」の3種類があります。


(1) 直接、取引先等を訪問する調査

取引先等を訪問して、調査対象者との取引について聞き取りや資料の確認を行います。反面調査の具体的な手法として最も一般的なものです。事前に通知せず、突然、反面調査先を訪問するケースもありますが、最近は用件を伝えて、日程調整をしたうえで調査することが増えてきました。

反面調査は、調査対象者との取引や特定の取引だけの調査となりますので、反面調査先の会社の申告内容についての調査が行われるわけではありません。

(2) 文書(郵送等)による調査

文書(郵送等)による反面調査が実施されることもあります。「○○社との取引金額を記入し、返信してください」といった内容の文書による調査です。

文書による調査は、反面調査の目的が特定の取引についての金額確認など、会社・事務所等を訪問(臨場)するほどの内容ではない場合に行われます。多いのは現金取引の金額の確認などです。

(3) 電話による調査

電話によって確認調査が行われる場合もあります。

たとえば、人件費の調査で、従業員や外注先に直接、電話連絡をするケースがあります。また、在職(在籍)、職務内容、取引内容などの確認もあります。

そのほか、些細な事実確認の場合には、電話による調査が行なわれます。


■こうして反面調査は実施される



2.反面調査への対応のポイント

反面調査が行われると取引先等に迷惑がかかる、今後の取引等に影響が出る、などと考えてしまいがちですが、反面調査は「質問検査権」によるもので、調査対象者は反面調査を拒否することができません。質問検査権とは、税務職員が納税義務者等に対して質問し、帳簿書類その他の物件を検査し、当該物件の提示もしくは提出を求めることができる権限です。
調査官が反面調査を匂わせたら、必ず理由を確認しましょう。反面調査は、その必要性を十分に検討したうえでなければ実施できないことになっているからです。
また、反面調査が必要だということは、確認すべき事項があるということです。必要な資料を自社側で用意することができないか、提案してみることも有効です。税務署から取引先等に連絡されるよりは、こちらから取引先等に連絡して必要な資料などを取り寄せたほうがよいでしょう。
顧問税理士がいるのであれば、税理士から税務署に「こちら側で資料を揃えて調べてみる」旨を伝えてもらいましょう。税務職員は同時に数件の調査を掛け持ちしていることが多く、なるべく手間をかけずに調査を終わらせたいと考えています。反面調査は手間がかかるので、税理士とのやりとりで疑問点等が解消するのであれば、反面調査はしないと判断することもあり得ます。
なお、反面調査は、必ずしも不正があって行われるものではありませんが、取引先等から不審を抱かれる可能性があります。いきなり税務署から反面調査の連絡がいくと取引先等も驚きますので、反面調査をされる可能性を感じたら、その旨を伝えておいたほうがよいでしょう。

3.自社が反面調査を受ける場合の対応

事前に反面調査の連絡があればよいのですが、突然、来訪された場合には、まず調査目的をしっかり確認する必要があります。対応できる担当者等がいなければ、日を改めてもらうこともできます。
反面調査への対応は、基本的には通常の税務調査と同じです。異なるのは、調査される項目が限定的であること、取引先等との関係に注意が必要なことです。
反面調査では、聞かれたことについて事実のみを伝えることが大切です。想像や憶測は、極力避けなければなりません。反面調査は、あくまで特定の取引先・取引についての調査であり、自社の税務調査ではありませんから、質問されたことについてのみ回答すれば問題ありません。
相手のことを思って下手に書類の改ざんや口裏合わせなどはせず、事実を伝えることのみに徹します。後日、事実と違うことが判明した場合には、不正に加担したと判断されかねませんので注意しましょう。
反面調査があったからといって、相手側が不正をしているとは限りません。あくまで事実の確認のために行われるものですので、調べた結果、問題がないこともあり得ます。不正行為がなければ何も問題はないので、誠実かつ冷静に対応するようにしましょう。


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