Netpress 第1754号 年度末に備えた注意事項 不良在庫処分はここだけ気をつけろ

Point
1.不良在庫の廃棄で大切なことは、廃棄を行った事実を証明する各種証明書類の保管です。中でも特に重要なのは第三者である廃棄事業者が発行する廃棄証明書です。
2.従業員による不良在庫の横流しなどを防止するには、不良在庫品管理の仕組みを導入すること、保管場所へのネットワークカメラの設置、担当者の複数人制導入が大切です。
3.不良在庫品を社員へ値引き販売する際の価格設定は、正常品の販売価格よりも低くなり、正常品の販売価格の70%に満たなくても現物給与とされないこともあります。


田中税務会計事務所
所長 田中 利征


年度末になると、在庫を一掃するために、セールや在庫処分をすることが多いと思います。その場合、通常月の販売と異なる処理をするケースがあります。本稿では、セールや在庫処分に関わる経理、税務処理、従業員の不正対策について紹介します。

1.廃棄する場合の証拠


多額となる在庫品の処分は、税務調査の重要ポイントとなります。そのため、どの会社でも在庫処分をした日、処分した在庫品の明細、処分をした理由と処分方法、について正確な記録を残されているようですが、廃棄した事実を証明する書類の備えについては十分でないケースがあります。

在庫品の廃棄を行った場合は、証明書類として、次の資料を保管します。

(1)廃棄の理由・経緯を記した稟議書/廃棄を決定した取締役会議事録

(2)廃棄品のリスト

商品名称・購入時期・購入金額・数量などを記したもの

(3)廃棄直前の在庫品写真

最終保管場所において日付入りで撮影したもの

(4)廃棄事業者へ引き渡した時の写真

トラックへの荷積み完了時に日付入りで撮影したもの

(5)廃棄処分時の作業状況を写した写真

廃棄事業者が撮影したもの                                          

(6)廃棄証明書

廃棄事業者が発行する。

廃棄事業者に廃棄証明書がなければ、自社で作成したものに署名・押印をもらいます。    

2.従業員への不正対策

従業員による不良在庫の横流しや盗難を防止するためには、簡単でいいので正常在庫と同様に不良在庫品管理の仕組みを導入するのが一番です。不良在庫品であっても会社が管理をしていることを従業員が知れば、不正は確実に減少します。

もし、残念にも不良在庫品管理を導入しても思うように不正が減らない場合は、保管場所にネットワークカメラを設置し、常時モニタリングできる環境を整える、という管理方法もあります。

また、従業員の中には、不良在庫の買取価格があるにも関わらず、買取業者と口裏を合わせて、不良在庫の買取価格を実際よりも低い金額で会社に報告し、裏で業者からリベートをもらうことがあります。こうした不正を防止するには、在庫品管理の担当者を一人としないで、常に適度な緊張関係を維持できるように複数人体制とすることが大切です。

3.従業員に売却するときの価格設定

不良在庫品を社員へ値引き販売する際は、適正な価格設定で販売することが重要です。「どうせ不良在庫なんだから」と言って、いい加減に決めた低価格で販売すると、社員に対する「現物給与」とみなされることがあります。給与とされると源泉所得税が課されてしまうので十分に注意してください。

また、正常品を社員へ販売する際の販売価格については、基本的に「会社で取得した価額以上」で、「正常品の販売価格の70%以上」であれば、給与課税はされません。これは正常品での取り扱いであり、通常価格での販売が困難な不良在庫品に対してストレートに適用するのは適当でありません。

そこで、不良品については、まず評価損を計上することにより商品の原価を下げ、正常品を参考にした利益率に従い販売価格を設定するなどの方法が採られています。

不良品の販売価格は正常品の販売価格よりも低下するのは当然ともいえ、正常品の販売価格の70%に満たなくても現物給与とならないこともあるわけです。



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