Netpress 第1583号 知っておきたい固定資産の税務上の扱い 固定資産の取得・売却・除却のポイント

Point
1.固定資産を取得した場合には、それが減価償却資産に該当するか、取得価額はいくらになるかは、税務上の基準に従い判断・算定します。
2.固定資産の売却・除却に際しては、その事実を示す証明書類等を保管することが大切です。
3.適用対象法人に該当するのであれば、中小企業者等の少額減価償却資産の特例の適用を受けるか、決算時に検討することが有用です。


税理士法人AKJパートナーズ
マネージャー 税理士 青柳 淳子


1.固定資産の取得に関する実務ポイント

(1)固定資産の範囲

固定資産とは、企業が事業のために使用する土地、建物、建物附属設備、構築物、機械装置、車両、工具器具備品、ソフトウェア、美術品などをいいます。

固定資産のうち、時の経過等によってその価値が減少する資産は、減価償却資産とされ、耐用年数に応じてその資産を費用化(減価償却)する必要があります。一時の費用にはできませんので注意が必要です。ただし、使用可能期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のものは、その取得に要した金額の全額につき使用を開始した年度の費用とすることができます。

なお、土地、一定の美術品は、時の経過等によってその価値が減少しないため、費用化は行いません。

(2)固定資産の取得価額

固定資産の取得価額は、下記のように算定します。


①資産を購入した場合   購入の代価 + 付随費用 + 事業の用に供するために直接要した費用の額

②資産を建設等した場合 原材料費 + 労務費 + 経費 + 事業の用に供するために直接要した費用の額


(3)取得価額に含めるもの、含めないもの

事業の用に供するために直接要した費用について、下記のように取り扱いが個別に規定されているものもあります。

① 土地・建物を取得するための立ち退き料は、取得価額に含めます。

② 不動産取得税、自動車取得税、登記登録のための費用等は、取得価額に含めないことができます。

③ 資産を取得するための借入金の利子(使用を開始するまでの期間に係る部分)は、取得価額に含めないことができます。

2.固定資産の売却・除却に関する実務ポイント

固定資産の売却・除却は一度の取引金額が大きいこと、また、譲渡日・除却日がわかりにくいことが多いため、税務調査等でチェックされやすい項目となります。

(1)固定資産を売却した場合

固定資産の売却日は、原則的に契約日ではなく引き渡しがあった日とされ、一般的には相手方がその資産を自由に使えるようになった日をいいます。売却を事業年度末付近に行うときは特に、売却日がどちらの事業年度に係るものなのか検討を要します。
また、売却した際の売上に係る仮受消費税は、売却益ではなく譲渡代金に対して認識(現在ですと売却代金総額×8/108を認識)しますので、会計処理にはご注意ください。なお、土地の売却は消費税のかからない取引となります。

(2)固定資産を除却した場合

税務調査等では、実際に除却されたのか、除却がどの事業年度に行われたのか、厳しくチェックされることが多々あります。そのため、除去に際しては、稟議書や、除却に至った理由を記載した書類、廃棄証明書など、除却の事実を証明するものを保管する業務フローが求められます。

3.「中小企業者等の少額減価償却資産の特例」が中小企業にもたらすメリット

(1)制度概要

青色申告法人である中小企業者等(注)が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得し事業の用に供した場合には、その取得価額に相当する金額につき1事業年度当たり300万円まで税務上損金とすることができます。
なお適用を受けるためには、事業の用に供した事業年度において、少額減価償却資産の取得価額に相当する金額につき会計上費用とすること、確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表十六(七))を添付して申告することが必要となります。

(注) (a)資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人(同一の大規模法人〔資本金の額もしくは出資金の額が1億円を超える法人、または資本もしくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く〕に発行済株式または出資の総数または総額の2分の1以上を所有されている法人及び2以上の大規模法人に発行済株式または出資の総数または総額の3分の2以上を所有されている法人を除く)
   (b) 資本または出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人

(2)税制改正の影響

平成28年度税制改正により、平成28年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度については、上記の適用対象となる法人から常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人が除外されることとなりました。

(3)特例の適用を受けるメリット

一事業年度当たり300万円という制限はあるものの、通常の減価償却では数年にわたって費用化すべき資産をその事業年度のみで一時の費用とすることができますので、利益が多く出た年度には積極的にこの特例の適用を受けることにより、会社の所得金額を減らすことが可能です。
また、特例の適用を受けた固定資産については減価償却を行う必要がないことから、固定資産台帳で管理しない場合には、事務処理の手間を減らすことができます。
ただし、特例の適用により会計上も税務上も費用処理をした固定資産であっても、償却資産税の対象にはなりますので、償却資産申告の際にはご注意ください。


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