Netpress 第2365号 法律による規制対象に! ステルスマーケティングの禁止とインターネット広告の留意点

Point
1.2023年10月1日から、いわゆる「ステルスマーケティング」が法規制の対象になり、これに伴い運用基準(ガイドライン)が公表されています。
2.すでに掲載している広告や、従来の宣伝手法が規制対象になる可能性もありますので、インターネット広告について注意すべき点について解説します。


梅田総合法律事務所
弁護士 伴城 宏
弁護士 佐野 翔平

1.ステルスマーケティング規制の導入

近年、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などを通じて、誰もが容易に情報の発信ができるようになってきています。


これに伴い、消費者に広告・宣伝であることを隠して宣伝する手法(いわゆるステルスマーケティング)が問題視され、海外では法規制の対象となっていました。


2023年10月1日より、不当景品類及び不当表示防止法(以下、「景品表示法」といいます)第5条第3号に基づく指定として、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が規制対象として告示され(令和5年内閣府告示第19号。以下、「ステマ告示」といいます)、本邦でもステルスマーケティングが法律で規制されることになりました。

2.ステマ告示の規制内容

(1)規制内容

ステマ告示では、いわゆるステルスマーケティングを「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」と位置づけし、その内容について、以下のように定めています。


(A)
事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、
(B)
一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの


(2)(A)事業者の表示に該当すること

「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」については、消費者庁から運用基準(ガイドライン)が示されています。


これによると、第三者が自発的に表示したように見えるものでも、「客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合」などは、(A)「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」に該当するとされています。


事業者の表示に該当する場合として、運用基準(ガイドライン)では以下のような例が挙げられています。



事業者が第三者(たとえば著名人やインフルエンサーなど)に対し、当該第三者のSNSアカウントで商品の宣伝をしてもらう場合

インターネットモールに出店する事業者が、口コミ代行業者や購入者に依頼して、自社の商品のレビュー・口コミ評価を投稿させる場合、または、競合事業者の商品または役務について、自社と比較した低い評価を投稿させる場合


第三者の自主的な意思で行われているかどうかは、事業者と第三者とのやりとりの有無、対価提供の有無とその内容、提供理由、事業者と第三者との関係性などの事情から、総合的に判断されます。


そのため、著名人に対し、高額な商品や接待を提供して自社の商品についてSNSで言及することを依頼した場合や、事業者にとって優位な取引相手に対し、今後の取引を匂わせて宣伝を依頼した場合なども、実質的には事業者の宣伝と判断される可能性があります。


なお、運用基準(ガイドライン)上では明言されていませんが、実際の表示内容も判断の要素になると考えられます。たとえば、第三者の投稿が事業者の商品を酷評するものであれば、通常は当該事業者が依頼したとは考えられないでしょう。


(3)(B)一般消費者にとって広告・宣伝であることの判別が困難であること

(B)「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」に該当するかどうかは、表示全体を見て一般消費者にとって広告・宣伝であることが明瞭となっているかで判断されます。


そのため、たとえ広告である旨を表示していたとしても、その示し方が不明瞭である場合は、これに該当する可能性があります。


運用基準(ガイドライン)では、事業者の表示であることが不明瞭な場合の具体例として、以下のような事例が挙げられています。



事業者の表示である旨について、部分的な表示しかしていない場合

表示位置や文字サイズ、色などにより、一般消費者にとって事業者の表示であることを認識しにくい表示をする場合

大量のハッシュタグに広告である旨を紛れ込ませる場合

3.実務上の留意点

ステマ告示は、「現になされている表示」を規制対象としています。


そのため、投稿を依頼したのがステマ告示の施行日前であっても、現在もその投稿が表示されている場合は、景品表示法に違反することになります。


特に、SNSなどでは、アカウントや投稿を削除しない限り過去の投稿が閲覧できることが多いため、違反状態の広告が表示され続けることになりかねません。


また、運用基準(ガイドライン)を見る限りは、たとえば顧客にSNSで良い評価を投稿してもらうことを依頼して割引券や商品を渡すことも、事業者からの依頼であることを明らかにせずに行った場合は、ステマ告示の規制対象になる可能性が否定できません。


ステマ告示は、施行からまだ間がないため今後の運用を注視する必要がありますが、特にSNSを活用した広告や宣伝は、慎重に表示の仕方を検討する必要があります。



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