Netpress 第2345号 ルールを定めて明文化 自家用車通勤におけるガソリン代の取り扱い
1.自家用車通勤時のガソリン代は、通勤距離、ガソリン単価および想定燃費に基づいて計算し、通勤手当として支給するのが一般的です。
2.自家用車を使用して通勤している場合の非課税となる1か月当たりの限度額は、片道の通勤距離に応じて定められています。
3.就業規則等において通勤手当に関するルールを定め、明文化しておく必要があります。
あかね社会保険労務士法人
社会保険労務士
澤田 啓一
通勤手当は、企業が従業員に対して、通勤に必要な経費を補填する目的で支給する手当です。
一般的な手当ですが、その支給は、法律上義務付けられているものではなく、支給の有無や基準、限度額等の条件は企業が自由に決めることができます。
電車やバス等の公共交通機関を使用する場合には、通勤定期券代、または往復運賃相当額を労働日数分支給しているケースが一般的です。
自家用車による通勤では、通勤に要したガソリン代相当額を支給することになりますが、公共交通機関と異なり、ガソリン単価や車種による燃費の差異といった変動要素が多く、その合理的な算出方法については悩ましいものです。
そこで、自家用車通勤時のガソリン代の取り扱いについて解説します。
1.自家用車通勤時の通勤手当の計算例
通勤手当としてのガソリン代の計算式(例)は、次のとおりです。
通勤手当=ガソリン単価÷燃費×往復通勤距離×労働日数 |
(1)ガソリン単価
ガソリン代の市況変動に応じて定期的に見直す企業が多いように見受けます。経済産業省・資源エネルギー庁が発表している小売価格調査の結果が参考になります。
(2)燃費
燃費はガソリン1リットルで何キロメートル走行できるのかを数値で表したものです。
燃費は車種により異なります。スポーツカー等は1リットル当たり10キロメートルを下回る場合がありますし、逆にハイブリッド車等は30キロメートル近くのものもあります。
従業員ごとに燃費を設定して計算することは、実務が煩雑になりますので、平均的な燃費として15キロメートルを目安にするのがよいでしょう。
また、車と二輪車では燃費が異なるため、それを考慮している企業もあります。
上記の計算式(例)では、ガソリン単価を燃費で除すことで、「1キロメートル当たりのガソリン単価」を算出し、実際の通勤にかかる距離と労働日数によって、通勤手当を算出しています。
「労働日数」については、実際の勤務日数ではなく、月平均所定労働日数を用いると、通勤手当を固定額にすることができます。
なお、月平均所定労働日数は、下記により算出できます。
月平均所定労働日数=(365日− 年間所定休日の日数)÷12か月 |
このほかにも、後述する自家用車を使用して通勤している人の非課税となる1か月当たりの限度額に基づき、通勤距離に応じた非課税限度額を定額で支給するという方法もあります。
2.自家用車通勤の場合の非課税限度額
自家用車を使用して通勤している人の非課税となる1か月当たりの限度額は、2023年12月現在、片道の通勤距離(通勤経路に沿った長さ)に応じて、次のように定められています。
片道の通勤距離 | 1か月当たりの限度額 |
2キロメートル未満 | (全額課税) |
2キロメートル以上10キロメートル未満 | 4,200円 |
10キロメートル以上15キロメートル未満 | 7,100円 |
15キロメートル以上25キロメートル未満 | 12,900円 |
25キロメートル以上35キロメートル未満 | 18,700円 |
35キロメートル以上45キロメートル未満 | 24,400円 |
45キロメートル以上55キロメートル未満 | 28,000円 |
55キロメートル以上 | 31,600円 |
上表の限度額を超えて通勤手当を支給する場合には、超える部分の金額は給与として課税されますので注意が必要です。
3.就業規則または賃金規程への規定
通勤手当の支給要件は、就業規則等に定めて明文化しておきます。
規定する際の主なポイントは次のとおりです。
・ | 通勤手当を支給する場合としない場合について、明確にしておく。たとえば、自宅から勤務先までの距離が一定距離未満の場合には支給しないなどの大前提の条件を定める。実費支給が目的である旨もあわせて規定するとよい。 |
・ | 通勤手当の対象となる通勤手段(公共交通機関または交通用具等)と、各々の計算方法を定める。賃金計算期間中の入退職や休職の場合の支給方法(日割計算等)も記載しておくと、従業員はもとより給与計算担当者にもわかりやすい。 |
・ | 支給基準があいまいであったり、ルールの解釈が複数考えられたりするような表現は避ける。 |
なお、自家用車による通勤は、通勤途上の事故が懸念されます。事前に、運転免許証のほか任意保険の加入状況を確認したうえで、許可制とするのが望ましいでしょう。
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