Netpress 第2328号 求められる対応は? 長時間労働者に対する労務管理のポイント

Point
1.事業者としては、時間外労働・休日労働時間数が一定以上の長時間労働者について、次の3つの措置を行う必要があります。
①医師による面接指導
②労働者への労働時間に関する情報の通知
③産業医への情報の提供
2.ここでは、事業者に求められる措置の詳細と押さえておくべき留意点などを確認します。


社会保険労務士法人トムズコンサルタント
特定社会保険労務士 林 隼


労働安全衛生法では、事業者に対し、雇用する労働者の労働時間の把握を義務付け、把握した労働時間が長時間労働となっている場合、健康障害を防止するための措置を行うことを求めています。


本稿では、長時間労働者に対して、事業者が対応しなければならない事項について解説します。

1.医師による面接指導

長時間労働による脳・心臓疾患等の発症を予防するため、長時間の時間外労働・休日労働をしている労働者に対して、事業者は医師による面接指導を行わなければなりません。


医師による面接指導の対象となる労働者は次の通りです。




1か月あたり80時間を超える時間外労働・休日労働を行い、疲労の蓄積が認められ、医師による面接指導の実施を申し出た労働者

研究開発業務従事者であって、1か月あたり100時間を超える時間外労働・休日労働を行った労働者

高度プロフェッショナル制度の適用者であって、1週間あたりの健康管理時間(事業場内にいた時間と事業場外で労働した時間)が40時間を超えた場合におけるその超えた時間について、月100時間を超えて行った労働者


医師による面接指導の実施は、上記①の労働者からの申出があった時は、申出から概ね1か月以内に、上記②、③の労働者にあっては時間外労働・休日労働時間数を算定した一定の期日(賃金締切日等)から概ね1か月以内に行うものとされています。


さらに、事業者は、面接指導を実施した労働者の健康を保持するための必要な措置について、医師の意見を聴き、その意見を勘案して、必要と判断するときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の適切な措置を講じなければなりません。


また、面接指導を実施した事業者は、面接指導の結果の記録を作成し、5年間保存する必要があります。


この面接指導の結果の記録は、面接指導を実施した医師からの報告をそのまま保存することで差し支えないものとされています。

2.労働者への労働時間に関する情報の通知

時間外労働・休日労働時間数が1か月あたり80時間を超えた労働者に対して、事業者は速やかにその超えた時間に関する情報を通知しなければなりません。


この通知については、書面や電子メール等により通知する方法が適当とされ、疲労の蓄積が認められる労働者の面接指導を促すためのものであることから、労働時間に関する情報のほか、面接指導の方法・時期等の案内を併せて行うことが望まれます。


また、1か月あたりの時間外労働・休日労働時間数の算定について、事業者は毎月1回以上、一定の期日を定めて行う必要があります。給与明細に時間外労働・休日労働時間数が記載されている場合には、これをもって労働時間に関する情報の通知として差し支えないものとされています。


なお、通知対象となる労働者については、高度プロフェッショナル制度の適用者を除き、管理監督者、みなし労働時間制の適用者を含めたすべての労働者が対象となります。

3.産業医への情報の提供

事業者は、産業医学の専門的立場から労働者の健康を確保するために、産業医がより一層効果的な活動を行いやすい環境を整備する必要があります。


そのため、産業医を選任した事業者は、産業医に対して、次の①から③までの情報を提供しなければなりません。



㋐健康診断、㋑長時間労働者に対する面接指導、㋒ストレスチェックに基づく面接指導実施後のすでに講じた措置または講じようとする措置の内容に関する情報(措置を講じない場合は、その旨・その理由)
【提供時期】
㋐から㋒の結果について医師または歯科医師からの意見聴取を行った後、遅滞なく

時間外労働・休日労働時間数が1か月あたり80時間を超えた労働者の氏名・その労働者に係る超えた時間に関する情報
(高度プロフェッショナル制度の適用者については、1週間あたりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間について、1か月あたり80時間を超えた場合)
【提供時期】
時間外労働・休日労働時間数の算定を行った後、概ね2週間以内

労働者の業務に関する情報であって、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの
【提供時期】
産業医からその情報の提供を求められた後、概ね2週間以内


なお、常時使用する労働者数が50人未満の事業場の事業者は、医師または保健師に対して、上記①から③までの情報を提供するように努めなければなりません。


また、上記②について、該当する労働者がいない場合には、該当者がいないという情報を提供する必要があります。



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