Netpress 第2319号 明示すべき事項が追加 2024年4月からの労働条件明示ルールの改正

Point
1.労働契約の締結・更新時における労働条件明示事項について、次の事項が追加されます。
①就業場所・業務の変更の範囲
②有期労働契約の更新上限の有無とその内容
③無期転換申込機会と無期転換後の労働条件
2.これらの新たに追加される労働条件明示事項について、記載イメージや留意点をみていきます。


社会保険労務士法人
トムズコンサルタント
特定社会保険労務士
中山 祐介


使用者は、労働契約の締結に際して、労働者に対して所定の労働条件を明示しなければならないことが定められています。


今般、労働契約内容の明確化と有期労働契約更新ルールや無期転換ルールの明確化を背景として、2024年4月から労働基準法15条(労働基準法施行規則5条)に規定する労働条件の明示事項が追加されます。


本稿では、追加される明示事項やその留意点について解説します。

1.就業場所・業務の変更の範囲

現在も就業場所・業務内容について明示義務がありますが、その内容は「雇入れ直後のもの」を明示すれば足りることとされています。


その後の配置転換等の可能性やその範囲が不明瞭であることに起因するトラブルを防止するため、改正後はすべての労働契約の締結時や更新時において、将来の配置転換等によって変わり得る就業場所・業務の範囲の明示が必要となります。




2.有期労働契約の更新上限の有無とその内容

有期労働契約の締結・更新の際に、現在は「契約更新の有無」と「更新の判断基準」を明示することとされていますが、更新の上限の明示義務までは定められていません。


更新上限があるにもかかわらず、これが不明瞭な場合には、労働者の契約更新への期待と、会社側との認識の相違に起因するいわゆる雇止めのトラブルが想定されます。


そのため、改正後は有期労働契約の締結・更新のタイミングごとに、更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無とその内容の明示が必要となります。




なお、以下に該当する場合には、更新上限を新たに設ける理由または短縮する理由を、労働者にあらかじめ(更新上限の新設・短縮をする前のタイミングで)説明することが必要です。


①最初の契約締結より後に更新上限を設ける場合


②最初の契約締結の際に設けていた更新上限を短縮する場合

3.無期転換申込機会と無期転換後の労働条件

2013年(平成25年)4月から、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合に、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約に転換できる制度(無期転換ルール)が施行されています。


この制度に関しては、現在は無期転換申込権が発生する有期雇用労働者に対して申込機会の周知が義務付けられていません。


無期転換申込権を有していながらも、これを行使しない労働者の割合が高いことの要因として、制度の認知状況が低いことが挙げられています。


改正により、無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、有期雇用労働者が無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示が必要となります。


また、これに併せて無期転換後の労働条件についても明示が必要となります。




なお、「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の賃金等の労働条件を決定するにあたって、他の通常の労働者(正社員等のいわゆる正規型の労働者と無期雇用フルタイム労働者)とのバランスを考慮した事項(例:業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について、有期契約労働者に説明するよう努めなければならないこととなります。



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