Netpress 第2315号 注目が集まる「2024年問題」 建設・物流業界の働き方改革への対応

Point
1.2024年4月1日から、建設業と物流業の運転手に対して時間外労働の上限規制が適用されます。
2.建設・物流の両業界ともに人手不足で長時間労働が常態化しており、難しい対応が迫られています。
3.両業界の稼働減少により、建設工事の工期の長期化や物流の停滞などが見込まれ、社会全体での対応が求められることになります。


社会保険労務士法人NACマネジメント研究所
特定社会保険労務士・中小企業診断士・行政書士
小林 弘和


2023年度も半ばを過ぎ、「2024年問題」が話題となることが多くなってきています。


2019年4月1日に施行された働き方改革関連法では、建設業、物流業の運転手、医師に対する労働時間の上限規制の適用が5年間猶予されました。2024年問題とは、2024年4月1日に建設業、物流業の運転手、医師に対して労働時間の上限規制が適用され、それにより発生することが想定される諸問題のことをいいます。


今回は、建設業と物流業の運転手について、上限規制の内容や影響をみていきます。

1.建設業の2024年問題

現在、建設業は事業として労働時間の上限規制の適用が猶予されていますが、2024年4月1日以降は、下表のとおり、一般の事業と同様の時間外労働の上限規制の対象となります。


区分
上限時間

原則としての時間外労働の上限

1か月:45時間

1年:360時間

1年単位の変形労働時間制を適用し、対象期間が3か月を超える場合には、1か月42時間・1年320時間

原則の限度時間を超えて時間外労働・休日労働を行わせることがある場合(「特別条項」を適用)の上限

1年:720時間

1か月:100時間未満(休日労働を含む)

複数月平均で1か月当たり80時間以下(休日労働を含む)


ただし、建設業については、災害時の復旧・復興の事業に関して、2024年4月1日以降も「月100時間未満、複数月平均で1か月当たり80時間以下の規制は適用されない」という例外が設けられています。


建設業においては、2024年問題に対応するため、週休2日制の導入など休日の増加、適正な工期の設定といった対応が図られているところです。

2.物流業の2024年問題

物流業においては、運転手以外の作業員や事務員に対しては、すでに一般の事業と同様の労働時間の上限規制が適用されていますが、自動車運転業務(運転手)については、現在、職種として労働時間の上限規制の適用が猶予されています。


2024年4月1日以降、自動車運転業務(運転手)に対しても、下表の労働時間の上限規制が適用されることになります。


区分
上限時間

原則としての時間外労働の上限

1か月:45時間

1年:360時間

1年単位の変形労働時間制を適用し、対象期間が3か月を超える場合には、1か月42時間・1年320時間

原則の限度時間を超えて時間外労働・休日労働を行わせることがある場合(「特別条項」を適用)の上限

1年:960時間(年間の上限のみ)


なお、運転手については、労働時間の上限規制に加えて、「改善基準告示」(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)による拘束時間の規制も遵守しなければなりません。


改善基準告示は、トラックなどの自動車運転者について、すべての産業に適用される労働基準法では規制が難しい拘束時間(休憩時間を含んだ始業から終業までの時間)、休息期間(勤務と勤務の間の自由な時間)、運転時間等の基準を定めたものです。


2024年4月1日から適用される改正改善基準告示により、運転手の年間の拘束時間の限度が3,516時間から3,300時間に短縮されます。


つまり、2024年4月1日以降は、現行と比較して運転手1人当たりの拘束時間を年間で216時間、月平均で18時間短縮しなければならなくなるということです。


こうした新たな規制に対応するため、物流業においても拘束時間や労働時間の削減、休日の増加などの対策を進めているところです。


しかし、労働時間の削減が賃金(残業代)の減少を招くことになると、運転手不足にさらに拍車がかかってしまうことから、難しい対応を迫られています。

3.2024年問題の影響

2024年問題への対応の結果、建設業・物流業とも大きな影響を受けることになります。


建設業においては、これまでの資材価格の高騰に加えて、工期の延長、それに伴う人件費の増加等により建設価格の一層の高騰につながることが想定されます。


一方、物流業においては、稼働減少により物流が停滞することや物流の確保が困難となることが懸念されます。また、運転手を確保するための人件費の増加や原油価格の上昇により、運賃の大幅な引き上げを行わざるを得ない状況となっています。


これらの影響は、両業界にとどまらず社会全体に大きな影響を及ぼすこととなるため、すべての業種・業界において対応策を検討することが必要になるでしょう。



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