Netpress 第2296号 2024年4月から段階的に 障がい者の法定雇用率引き上げ〜民間企業2.7%へ〜

Point
1.障がい者の法定雇用率が、現行の2.3%から2024年4月に2.5%、2026年7月に2.7%となります。
2.2024年4月から、雇用率の算定対象となる短時間勤務障がい者の範囲が拡大されます。
3.2025年4月から、雇用する労働者数を計算する際の除外率が一律10ポイント引き下げられます。


社会保険労務士法人 HRM
社会保険労務士
落合 敏夫


1.障がい者の法定雇用率引き上げ

障がい者雇用率制度は、障がい者について、一般労働者と同じ水準において常用労働者となり得る機会を確保することとし、常用労働者の数に対する割合(障がい者雇用率)を設定し、事業主に障がい者雇用率の達成義務を課すことにより、それを保障することを目的としています。


民間企業における障がい者雇用率は、次の計算式により算出され、労働市場の状況や経済状況を反映するため、およそ5年ごとに引き上げが行われています。




この障がい者雇用率が、障がい者雇用促進法の改正により現行の2.3%から段階的に引き上げられ、2024年4月に2.5%、2026年7月に2.7%となります。


障がい者雇用率は、常用労働者1人に対する障がい者の雇用割合ですから、1人/2.3%により従業員43.5人以上(端数0.5人単位に切り上げ)を雇用する企業から、2.5%で40.0人以上、2.7%で37.5人以上の企業に拡大されて対象となることになります。


企業ごとに雇用しなければならない障がい者数は、企業の常用労働者数に障がい者雇用率のパーセンテージを掛け、小数点以下を切り捨てると算出できます。

2.雇用率算定対象障がい者の範囲拡大

障がい者雇用率制度上の障がい者の範囲は、身体障がい者手帳、療育手帳、精神障がい者保健福祉手帳の所有者を実雇用率の算定対象としています。


ただし、障がい者雇用に関する助成金は、手帳を持たない統合失調症、そううつ病(そう病、うつ病を含む)、てんかんの人も対象となり、またハローワークや地域障がい者職業センターなどによる支援では、「心身の障がいがあるために長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な人」が対象となります。


障がい者雇用率の算定においては、必ずしも1人の障がい者が1人の雇用として算定されるのではなく、障がいの種類や程度に応じて算定方法が異なります。


今回の改正によって、2024年4月から障がい者雇用において実雇用率の算定対象となる短時間勤務の障がい者の範囲が拡大されます。


これまで、週所定20時間以上30時間未満の短時間で働く障がい者については0.5人(重度の身体・知的障がい者と、一定の要件を満たす精神障がい者の場合は1人)と算定してきましたが、新たに週所定10時間以上20時間未満の重度の身体・知的障がい者と精神障がい者が0.5人と算定されることになります。



※精神障がい者である短時間労働者で、次の①と②を満たす人については、1人をもって1人とみなす

①新規雇入れから3年以内の人または精神障がい者保健福祉手帳取得から3年以内の人
②2023年3月31日までに雇い入れられ、精神障がい者保健福祉手帳を取得した人

3.除外率の引き下げ

除外率制度は、一律に雇用率を適用することになじまない性質の職務もあることから、障がい者の就業が一般的に困難であると認められる業種について、雇用する労働者数を計算する際に、常用労働者数の一部をパーセンテージによって除外することで、障がい者の雇用義務数を下げるという仕組みです。除外率は職種ごとに異なります。


【例】常用労働者数:300人 雇用率:2.3% 除外率:40%
300 × 2.3% = 6.9 ➡ 一般企業の場合、6人の障がい者雇用が必要
300 × 40% = 120 ➡ 除外率による常用労働者の控除数
(300 - 120) ×2.3% = 4.14 ➡ 除外率適用企業の場合、4人の障がい者雇用で可


この除外率が、2025年4月から一律10ポイント引き下げとなります。今回の引き下げによって、除外率5~10%の倉庫業、航空運輸業、窯業原料用鉱物鉱業等、9業種で制度廃止となります。

4.障がい者雇用納付金制度

障がい者雇用納付金制度は、障がい者の雇用に伴う事業主の経済的負担の調整を図るとともに、全体としての障がい者の雇用水準を引き上げることを目的とするものです。



(1)


雇用率未達成の事業主……不足1人当たり月額50,000円の納付金を徴収する(常用労働者100人超の企業から徴収し、100人以下の企業からは徴収しない)


(2)


雇用率達成の事業主……超過1人当たり月額27,000円の調整金を支給する(常用労働者100人超の企業を対象とする)


(3)


障がい者多数雇用中小企業事業主……超過1人当たり月額21,000円の報奨金を支給する(常用労働者100人以下で障がい者を4%または6人のいずれかを超えて雇用する企業を対象とする)




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