Netpress 第2285号 ロイヤルカスタマーを増やす! 顧客体験価値を実現させるマーケティング手法
1.優良・新規顧客を獲得するためには、総合的品質(トータルクオリティー)を高める必要があります。
2.その一環として、顧客体験価値(CX)を実現させるためのマーケティング手法について解説します。
株式会社タナベコンサルティング
現在の顧客需要は多種多様です。そうしたなかで、マーケティングによって顧客を満足させるには、他社よりも競争力のある顧客体験価値(CX:カスタマーエクスペリエンス)を提供する必要があります。
当然のことながら、商品のパフォーマンスが期待を下回れば顧客は不満を覚え、上回れば顧客の満足度と喜びは大きくなります。企業・ブランドに対する顧客の愛着や信頼度を示す「顧客ロイヤルティー」を高めるためには、他社よりも優れた価値提案をしなければなりません。
企業は、高い顧客価値を継続的に提供できる価値提供システムを仕組み化することで、より強力なロイヤルティーを生み出すことができます。ロイヤルティーを継続して維持する顧客のことを「ロイヤルカスタマー」といいます。企業は、いかにしてこのロイヤルカスタマーを増やすかを常に念頭に置かなければなりません。
ロイヤルカスタマーになってもらうためには、総合的品質(トータルクオリティー)を高める必要があります。このトータルクオリティーの管理をTQM(トータルクオリティー・マネジメント)と呼びます。
TQMの向上には、全社レベルの情報共有と活用が必要であり、マーケティングが果たす役割として、次の6つが挙げられます。
① | 顧客ニーズを正しく把握する |
② | 顧客の期待を商品設計者に的確に伝える |
③ | 顧客の注文を的確に処理し、納期を守る |
④ | 商品の使用方法について的確にサポートする |
⑤ | 販売後も顧客との接点を維持し、顧客満足度を高める |
⑥ | 顧客の求める商品に対する改善点を集め、各部門と連携し、共有し、改善する |
必ずしも、これらすべてに対応しきれるわけではありませんが、実現することができれば、長期にわたって取引が続く優良顧客、また口コミによりさらなる顧客を獲得することに成功し、それが新たな顧客を獲得するためのアピール材料(好事例)にもなり得ます。つまり、トータルクオリティーを上げることは、既存顧客に喜んでもらうだけでなく、新たな顧客の創出にもつながるのです。
顧客が継続して商品を購入し続ける場合、顧客が企業にもたらす利益は、取引開始から現在に至るまでの総合的な利益ということになります。
1回の購入でもたらす利益は少なくても、継続的に購入してくれる場合は、結果的に大きな利益をもたらしてくれる顧客になります。逆に、一度は高い利益をもたらしたとしても、リピート購入がないとトータルの利益は少ないということになります。
継続的な取引によってもたらされる利益のことをLTV(顧客生涯価値:Life Time Value)と呼びます。企業によっては、1回の利益よりLTVの高い顧客のほうが最終的に有益な顧客となります。
そのため、次の2点が企業にとって大きな経営課題となっています。
① 顧客がいかに商品や自社に対して価値を感じ、ブランド力を誇りに思うか |
② 関係性を維持し、LTVの高い顧客をいかに増やすか |
LTVを最大化させるために、企業は長きにわたって顧客と良好な関係を築く必要があります。継続的な関係性を築くために必要なのが、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)です。
CRMとは、個々の顧客情報を管理し、最適な商品を適時提供して、ロイヤルティーを高めていくことです。これにより、企業は大きな利益を生み出すことができます。
このとき重要なのは、徹底的に「顧客主導型」で考えることです。特にデジタルを活用するのであれば、「顧客重視」から「顧客主導」へのマインドチェンジが必要です。その理由は、IT・デジタルの浸透によって、以前のように企業が顧客をコントロールできなくなったからです。
マーケティングが目指すのは、顧客を理解し、商品を顧客に合わせ、自然と売れるようになることです。
しかし、デジタル化が進む前は企業と顧客の情報の格差(非対称性)が大きく、企業による押し売りが通用していました。Google検索もFacebookもない時代に、人々がアクセスできる情報は限定的であり、テレビCM、知人の口コミ、スーパーマーケットの棚、新聞、書籍など限られたソースから判断せざるを得なかったからです。
IT・デジタルが生活に浸透した今、顧客は商品を買うまでに、さまざまな場面で、さまざまな情報を得ることができるようになっています。企業と顧客のパワーバランスが逆転したからこそ、本当の意味で顧客主導のマーケティング活動が必須となってくるわけです。
それに加え、顧客の満足度を最大化させるために考えなければいけないのが、競合他社を念頭に置いた差別化戦略です。他社との明確な商品の違いをつくり、顧客にとってより特別感の強い商品を創出する必要があります。
「商品の差別化」においては、商品設計や製造技術、特徴を他社商品と違う魅力的なものにすべく、さまざまな施策を重ねます。特徴的で魅力的な商品であることは競争優位性に直結します。
また、サポート制度やサービス面での差別化も忘れてはなりません。いわゆる「スタッフの差別化」において、より高いクオリティーを発揮することで顧客の信頼を高めます。技術力の高いスタッフがいることも、他社との差別化において大きな意義を持ちます。
「チャネル」においては、輸送スピードや送料の安さ、ブランドイメージの良さは顧客にとって大きな価値になります。実際、その名を聞くだけで、クオリティーが高いと認知されている商品のブランド力は、かなり成熟したものだといえます。
高い体験価値を顧客に提供し、ロイヤルカスタマー化を実現している企業は増加しています。ぜひ、本メソッドを参考にしてください。
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