Netpress 第2083号 改正法で努力義務に 70歳までの「創業支援等措置」の実施手順
1.改正高年齢者雇用安定法により、4月から高年齢者就業確保措置を講じる努力義務が課されました。
2.具体的な措置の内容を確認したうえで、企業としてどのように対応していけばよいか解説します。
特定社会保険労務士 平倉 康司
今回の法改正は、65歳までの雇用確保措置に、70歳までの就業確保措置を努力義務として加えたものです。
講じる措置は、上の①〜⑤のなかから、「複数」でも、「どれか1つ」でも構いません。
①〜⑤のうち、④業務委託契約と⑤社会貢献事業を合わせて、「創業支援等措置」といいます。これは、従来の65歳までの雇用確保措置にはなかったものです。事業主の努力義務として新設された65歳から70歳までの労働者の就業機会を確保するための措置のうち、雇用によらない措置を指します。
1.創業支援等措置の実施手順
創業支援等措置を講じる場合には、次の3つの手順を踏む必要があります。
まず、計画の作成ですが、計画に記載すべき事項は次のとおりです。
① 高年齢者就業確保措置のうち、創業支援等措置を講じる理由
② 高年齢者が従事する業務の内容に関する事項
③ 高年齢者に支払う金銭に関する事項
④ 契約を締結する頻度に関する事項
⑤ 契約に係る納品に関する事項
⑥ 契約の変更に関する事項
⑦ 契約の終了に関する事項(契約の解除事由を含む)
⑧ 諸経費の取り扱いに関する事項
⑨ 安全・衛生に関する事項
⑩ 災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項
⑪ 社会貢献事業を実施する団体に関する事項
⑫ ①〜⑪のほか、創業支援等措置の対象となる労働者のすべてに適用される事項
計画を作成したら、その計画について過半数労働組合等の同意を得ることになります。創業支援等措置は雇用ではないこともあり、同意を得ようとする際には、次の3点について十分に説明することが望ましいでしょう。
・労働基準法等の労働関係法令が適用されない働き方であること
・そのために創業支援等措置の計画を定めること
・創業支援等措置を選択する理由
過半数労働組合等の同意を得たら、その計画を従業員に周知することになります。
2.創業支援等措置を実施する際の契約
実際に創業支援等措置を実施する場合には、個々の高年齢者や社会貢献事業を実施する団体と契約を結ぶ必要があります。
業務委託や自社による社会貢献事業と、他の団体による社会貢献事業の場合とでは、契約の当事者が異なります。
業務委託や自社による社会貢献事業の場合は、会社と高年齢者が当事者となり、書面による契約を締結します。
他の団体による社会貢献事業の場合は、会社と高年齢者間の契約のほかに、会社と他の団体間でも、社会貢献活動に従事する機会を提供する旨を約する契約が必要です。この会社と他の団体との契約については、書面までは要求されていませんが、トラブル防止のためにも書面によることが望まれます(下参照)。
なお、65歳から70歳までの継続雇用制度と同じく、創業支援等措置についても対象者の基準を設けることは可能です。
ただし、労使で協議したうえで定めた基準であっても、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど、高年齢者雇用安定法の趣旨や他の労働関係法令に反するものや公序良俗に反するものは認められません。
3.業務委託・社会貢献事業の留意点
70歳までの就業確保措置として行う業務委託では、高年齢者は、個人事業主(フリーランス)として、または起業して会社と契約を締結します。契約内容は、過半数労働組合等の同意を得た創業支援等措置の計画に則ったものにします。雇用される従業員と同じような(労働者性が認められる)働き方は、この措置には該当しません。
また、70歳までの就業確保措置としての社会貢献事業とは、「不特定かつ多数の者の利益に資することを目的とした事業」です。したがって、特定の団体や少数の者の利益に資する事業は該当しません。個々の事業が社会貢献事業に該当するかどうかは、その事業の性質や内容等を勘案して個別に判断されます。
社会貢献事業を実施するのは、「自社」「自社が委託する団体」「自社が出資(資金提供)等する団体」のいずれかとなります。ここでいう「団体」は、委託、出資(資金提供)等を受けていて、社会貢献事業を実施していれば、株式会社等の法人でも問題はありません。また、出資(資金提供)等には、出資や寄付などの金銭的なもののほか、事務スペースの提供など社会貢献活動の実施に必要な援助を行っている場合も含まれます。
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