Netpress 第2269号 「譲れない軸」で成長に貢献 これからの人材育成は選別+多様性の時代!
1.「誰を育てるか」が育成計画の根幹で、「どの役割をいつまでに育てたいのか」を明らかにするだけでは、求める人材を確保することはできません。
2.「譲れない軸」を見極め、「多様性」ある候補から「誰を育てるか」を考えることで、企業はさらに成長できます。
セレクションアンドバリエーション株式会社
代表取締役 平康 慶浩
1.「素直でまじめ」が過去の美徳になってしまった理由
「うちの従業員は素直でまじめなんです」
セレクションアンドバリエーションが実施する人事制度改革の最初のヒアリングで、社長からこの言葉が出たら、その表情を見つめ直します。するとほとんどの社長が、自慢ではなくむしろ恥ずかし気な、自虐的な表情を浮かべます。
「素直でまじめ」であることが会社や従業員の強みであった時代はすでに過去のものです。
売るべき商品が決まっていて、買ってくれるお客様はほぼ固定、仕事の進め方は先輩に教わればよかった時代。過去の成功体験を何十年にもわたって引き継いでいけた時代には、上司や先輩などの年長者に対して「素直でまじめ」なことが美徳でした。そうあることで、年功に基づく序列を守り、先輩より出すぎることなく、また後輩に対しても立場をわきまえさせ、決まった仕事を覚えてこなしていったのです。
でも、今や商品も、顧客も、仕事の進め方も、まるで変わっていますよね。
2.今求められる自発性
もちろん、「素直でまじめ」というのはよい性質です。それを否定する必要はありません。
ただ、「素直でまじめ」であること以上の行動や能力、意識がクローズアップされ、求められるようになっています。なぜなら、今日も昨日と同じことをしていたのでは、会社も従業員個人も成長できず、やがて変化の濁流にのみこまれてしまうからです。
人事改革の現場で突きつけられるのは、成長なくして存続し得ない企業の現実です。
それゆえ今従業員に求めるのは、言われたことを素直に聞いたうえで、さらに深掘りする論理性や思考力です。まじめでありながら、時には前例を否定して新しいチャレンジをする行動力です。
そうした意識や行動は先輩から学べるものではなくなっていますから、経営層が旗を振り、人事が育成計画を立て、成長を当たり前にすることが求められるのです。
3.「どう育てるか」よりも「誰を育てるか」をまず考える
先輩から学べない状況は、「社内にお手本になる人がいない」ということです。「キャリアモデルがない」という従業員視点だけでなく、そもそも「どんな人材が自社を成長させてくれるのか」が社長自身にもわかっていない状況です。
だからこそ育成計画が必要になるのですが、そのポイントを示してみましょう。それはまさに「選別(セレクション)」と「多様性(バリエーション)」の確保に他なりません。
まず、選別とは「誰を育てるのか」ということです。
「誰を」を考えるためには、「どの役割をいつまでに育てたいのか」が前提になります。次期社長を3年で育てたいのなら、対象は役員となるでしょう。部門の責任者を5年で育てたいのなら、部長~課長が対象になります。次世代管理職を10年で育てたいのなら、入社5年目~10年目の社員が対象となるでしょう。
このように「誰を育てるのか」を考えるということは、「どの役割をいつまでに育てたいのか」という、会社が注力したい人材の具体化につながります。
この段階で多くの会社が、すぐに選別候補者を選ぼうとします。しかし、ちょっと待ってください。
この段階ですぐに候補者を選ぼうとしても、おそらく誰もが想像していた人物だけがピックアップされるでしょう。その人物はできる人ではあるでしょうが、もしかしたら「素直でまじめ」である呪縛からは逃れられていないかもしれません。
そこで、多様性を考えてみます。
具体的には、育てたい役割について「多様であってよい条件」を列記します。
たとえば、その役割は男性だけに任せたいのか、男女を問わないのか。年齢は一定以上なのか、年齢を問わないのか。出自は日本だけなのか、海外からの人材であってもよいのか。新卒からのたたき上げのみなのか、中途を含めて考えるのか。営業系や管理系などの専門性が必要なのか、複数部門の経験なのか。
これによって明確になるのは、多様であってはいけない「譲れない軸」です。それを踏まえて、あらためて「誰を育てるのか」を考えてみると、当初想定していた以外の候補者が挙がってくるはずです。
育成計画の根幹は、まさに「誰を育てるのか」という問いかけについて、過去の延長線上にない人をも候補に挙げて考えることなのです。
そうしてはじめて、変化の時代の成長を実現できるようになります。
4.選別と多様性が育成計画の根幹になる
一昔前の人材育成では、求める人材像を具体化し、そのために持ってほしい能力や意識、行動を整理しました。それらを座学で教え、役割として発揮する機会を与え、周囲からのサポートでモチベートと気づきを与えてきました。
それらの育成方法はもはや当たり前です。それだけでは、勝てないし、成長できないのです。今の育成計画には、多様性の観点が必須になります。
たとえば、次世代役員について、性別も年齢も自社での経験も「譲れない軸」ではないとしたら、どんな人が候補に挙がるでしょう。
ある会社の実際の検討では、IT部門の責任者候補として、外部から20代後半の人を招いた例もあります。
その会社では、事業の閉塞感を打破できただけでなく、周囲の若手を中心に、成果創出に向けて大きく盛り上がりを見せました。
あらためて皆さんには、選別と多様性、セレクションアンドバリエーションの観点から、育成計画の根幹を検討することをお勧めします。
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