Netpress 第2262号 中小企業にこそ求められる! 健康経営に取り組むべき3つの理由とは

Point
1.健康経営は企業業績を高める効果があり、中小企業こそ健康経営に取り組む必要があります。
2.健康経営を促進するためには、過去の常識=社長の経験、量を重視する働き方、いつまでも若々しく働けるという錯覚を正していくことが重要です。


セレクションアンドバリエーション株式会社
代表取締役 平康 慶浩

1.健康経営と業績にどんな関わりがあるのか

経済産業省が積極的に推進している健康経営です。しかし「健康管理を経営課題として捉え、その実践を図ることで従業員の健康の維持・増進と会社の生産性向上を目指す」という定義を、本気で自分事として捉えている中小企業はどれくらいあるでしょうか。


従業員が健康になるのは喜ばしいことではありますが、その結果、会社にとってどんなよいことがあるのでしょう? 言い換えるなら、従業員数百名以下、いや数十名以下の中小企業で、「従業員の健康の維持・増進」を会社にとっての重要課題として認識できる会社はどれほどあるでしょうか。


実際のところ、経済産業省が健康経営を推進する理由は、健康保険料・医療費の削減と健康寿命の長期化、それに伴う労働力確保のためではないか、と勘繰ってしまいます。国としての支出を減らし、税収などを増やすことこそが目的であり、その方法として各種疾患や高齢化により働けなくなる人を減らそうとしているのではないか、とも。


そんな国全体のための取り組みに中小企業が本気になったところで、何もよいことはないのではないか、と思う人がいてもおかしくはありません。


しかし、各種研究などをもとに実際に健康経営と会社業績との関係を確認してみると、健康経営に取り組むことが大きなメリットを生んでいることが見えてきました。たとえば、会社が従業員の健康を気遣うことで、会社に対する期待度と満足度指標としてのエンゲージメントが高まることがわかっています。エンゲージメントが高まれば、会社の評判サイトの内容もよくなります。結果として採用実績が3倍になったり、1人当たり採用コストが5分の1にまで減少した例があります。メンタル不調者の激減により、人材不足が解消された会社すらあるようです。


重要なことは、従業員の健康は「会社のメリットとは関係がない」というこれまでの思い込みを正す点にあります。典型的な思い込みは3つあります。順に考えてみましょう。

2.社長の思い込みから変えていく

最初に正すべき思い込みは、「社長の経験によるもの」です。


今の社長の平均年齢は62.77歳(2021年の東京商工リサーチ調査)。この世代の誕生年は1960年前後です。バブル景気が全盛を迎える前の1980年代前半に社会人になり、1990年代以降の景気低迷の時代を、ハードワークで乗り越えてきた方々が想像されます。


このような経歴を歩んでこられた社長には、従業員を家族のように考えるメンバーシップ型の意識が根付いています。それは従業員を一生雇い続けようという責任感の源泉にもなっているのですが、一方で会社のために時間を問わず働いてほしいという、従業員への甘えにもつながってきます。


しかしこの意識を変えなければ、会社が続かなくなってしまう時代になりました。それは若い世代に選ばれなくなるからです。今の20代の若者は、最初に入った中小企業に40年も勤めようとは思っていません。


だから「雇い続けてあげる」ことは、何のメリットにもならないのです。そんな彼らに残業や休日出勤を求めてしまうと、もっと働きやすい会社に転職してしまいます。


健康経営を構成する要素としてのワークライフバランスの推進、長時間労働の削減のために、まず社長の思いを変えなければいけません。そうしなければ、会社の中は「どこにも行きようがない高年齢者ばかり」になってしまうでしょう。

3.生産性の基準を変えなければいけない

第2に正すべき思い込みは、「量を主体に考えてしまう」ことです。たくさん仕事をして、たくさんのものを作ることが素晴らしい、という考え方です。たくさん残業してでも多くのものを作ろう、という発想です。


しかし、いま求められるのは生産性です。残業をしてたくさんのものを作るのではなく、限られた時間のなかでより多くのものを作ることなのです。


では、効率的にものを作るために必要なことは何でしょうか。それは人が集中して作業をすることであり、適切な睡眠、体の健康、精神的な余裕を確保しなければいけません。気合や根性で量は達成できても、生産性を高めることはできないのですから。


これからは、従業員一人ひとりが自分の健康状況を把握することはもちろん、健康であり続けるための意識付けが必要です。「休みをとらず、毎日遅くまで働くことが素晴らしい」という思い込みがあるとすれば、それをまず変えていかなければいけません。

4.人が年をとるということを考えなければいけない

最後に正すべき思い込みは、「人はいつまでも若い」という勘違いです。


人は必ず年をとり、衰えるものです。60歳が定年の状態であれば、たとえ50代で衰えたとしても、それほど問題にはなりませんでした。しかし、これからは60歳を超えて働くことが当たり前になります。そうなると、どうしても人が老いるということに直面しなくてはならないのです。


会社側の仕組みとして、能力の衰えに合わせてやってもらう仕事を減らし、その分給与を減らすことができるなら、それもよいでしょう。けれども、年をとっても同じような生産性を発揮してもらい、その分だけ高い給与を支払い続けることができれば、働く側も会社も幸せではないでしょか。


だからこそ、健康の保持や増進のための各種取り組みが必要になるのです。

5.健康経営に取り組まなければどうなるのか

逆に、もし健康経営に取り組まなければ、会社がどんな状態になるのかを考えてみましょう。


社長が従業員にハードな働き方を求め続けた結果、行き場のある人から転職し、行き場のない何らかの事情がある人が主に残っていきます。そうなると、生産性に対する意識が育たないので、長時間労働が常態化し、心身を疲弊させる人が増えていくことになります。


そうして、行き場がないまま、非効率に働き続ける人たちがそのまま年をとり、さらに生産性を悪化させます。会社はその分給与を減らしますので、従業員は十分な休みも得られないまま、長時間労働を続けることになるでしょう。


そんな働き方をしている会社に、成長していく未来が見えるでしょうか。


誤った3つの常識を変革し、会社と従業員の明るい未来を実現するためにも、中小企業こそ健康経営に取り組む必要があるのです 。



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