Netpress 第2248号 効率よく成功に導く! 企業のDX戦略を実現させる業務棚卸の3つのポイント

Point
1.効果的なDX実現のためには、まず業務棚卸による整理を行い、適切な施策を着実に実行していきます。
2.ここでは、比較的、時間を掛けずに業務の棚卸ができる3つのポイントを紹介します。


さくら情報システム株式会社
デジタルクリエーション部
網代 三穂子


デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が聞こえるようになって数年が経ちますが、DX推進が順風満帆であると自信をもっていえる企業は少ないのではないでしょうか?


DXを実現するためには、「目の前の業務がどうDXと紐づけられるか」を現場ユーザがイメージできることが大切です。それがイメージできないと、DXは進みづらい傾向にあります。


今回は、そんな苦戦中の企業がDX戦略を実現するための業務棚卸に関する3つのポイントを紹介します。


DXは、業務プロセスを最適化しないまま、最適なデジタルツールだけを導入してもなかなか成果は出ません。最適な業務プロセスに、最適なデジタルツールを導入することで実現できます。


効果的なDXを実現するためには、まず業務棚卸による整理を行い、適切な施策を着実に実行して、現場に成功体験を与え、そして経営層にわかりやすい評価を見せて、全社一体となって進めていくことが重要です。

1.DXを推進していくうえでの課題

DXを推進していくうえで、よくいわれる課題は次のとおりです。















経営層

DXの効果が見えづらく、経営的判断が難しい。

DXチームを起ち上げたが、進捗が乏しく、なかなか売上や利益の効果に繋がらない。
管理者層

経営層に対する投資対効果の提示の仕方がわからない。

効果測定として、定量的評価は出せるが、限定的な数字でしかなく、また定性的評価はすぐには効果が現れにくい。

現場ユーザのモチベーションが低く、協力を得られない。

現場ユーザは、自分の仕事や役割がなくなると思い、デジタル化に対するアレルギーがある。
現場
ユーザ

現業に縛られ手を付けられない。

業務の全体像がわからないため、新しい手段、プロセスの変更などに対して不安があり、現状から変化することを恐れて二の足を踏みがち。


このように、経営層、管理者層、現場ユーザなどそれぞれの立場で異なる課題があります。特に、現場が“ツールを導入したこと”で満足してしまい、実際の導入効果が薄く、経営層に評価してもらえないケースが散見されます。また、業務課題自体が多いと、DXを進めようにも社内がバラバラに動いてしまい、効果的に行えない場合があります。


では、どうすればこうした事象を防ぐことができるのでしょうか。


直ぐに効果を求めて目の前の業務課題へ闇雲に手を付けるのではなく、業務の棚卸をすることによって業務プロセス全体を俯瞰して検討し、全体効率を上げる施策を順序だてて進めていくことが肝要です。


業務棚卸というと、すべての業務の洗い出しに時間が掛かりすぎて、二の次と考えがちですが、前述の通り、DXには業務の可視化は欠かせません。

2.業務棚卸の3つのポイント

以下は、比較的、時間を掛けずに業務の棚卸をすることができる3つのポイントです。



現場の業務課題をワークショップで洗い出し、効率化できる業務を整理しましょう!

経営課題と連携できるよう、経営理念をもとに①で抽出した課題に優先順位をつけましょう!

現状分析だけでなく、将来像まで描きましょう!


【①について】

現場ユーザに本来やってほしい、もしくはやるべき作業があるのに、次のような業務に時間を取られていませんか?


・一つの作業に時間を費やす業務

・ミスが発生しやすくチェックが必要な業務

・納期が厳しく人手が掛かる業務

・問い合わせ対応など、手間や人数が掛かる業務


対策としては、現場メンバーが一同に集まり、上記のような業務や課題を洗い出すワークショップをします。現場の課題を短時間で可視化し、自分の課題をチームで共有できるため、チーム全体が協力しやすい雰囲気になります。


【②について】

上記①で課題を洗い出すことができました。ただ、その課題が自社の経営課題と紐づいているかがわかりません。したがって、課題抽出後、経営課題を解決できるかどうかで効率化する業務の優先順位を決めていきます。


よくある経営課題は、以下のような内容となります。


・経営課題の解決に直結

・属人化の解消、自動化の促進

・テレワーク・生産性向上/効率化

・企業価値の創出


こうした内容を軸に、業務の棚卸を行い、きちんと課題分析をすることで、DX推進が経営課題を解決する重要な一手と認識してもらうことができます。


【③について】

単に業務の棚卸をして、現時点をシステム化するだけでは、効果は限定的になります。一方で、すべての業務を一気にDXするには、膨大なリソースが必要です。


RPAやAIなどのDXに欠かせないツールを将来像(TO BE)に含めたロードマップを作成しつつ、マイルストーン(中間目標点)を設定して、まずはスモールスタートし、DXの一歩を踏み出しましょう。



最後に、DX推進には業務棚卸が重要と説明しましたが、棚卸をするにも経営課題に沿った棚卸をしなければなりません。もう一度、誰のために、何のためにDXを推進するのかを明確にしましょう。また、DX推進は、「技術/組織 または トップダウン/ボトムアップ」の両軸で行うことが重要です。独力ではなく、業務棚卸サービスや改善ワークショップを活用するなど外部の力を使って、効率よくDX推進を成功に導きましょう!



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