Netpress 第2245号 Z世代社員の教育 OJTや「叱る」文化では育ちづらい20代を活かすために
1.Z世代に対する従来型の指導育成は、早期離職をもたらす負のスパイラルを生んでしまいます。
2.世代間ギャップではなく、会社への期待とキャリアそのものの激変として理解する必要があります。
3.年齢にかかわらず、相手を尊重したコミュニケーションを取ることが重要です。
セレクションアンドバリエーション株式会社
代表取締役 平康 慶浩
1.若手活躍における負のスパイラル
「優秀な新卒社員が集まらない」「入社してもなかなか育たない」「数年で辞めてしまう」……。あなたの会社でも、若者への不満があるでしょうか。世代間のギャップは常にあるものだから仕方がない、と思うかもしれません。
しかし、近年の20代社員についての採用・育成・離職の負のスパイラルは、本質的な課題を浮き彫りにしています。
それは、世代間ギャップにとどまらない、キャリアの変化そのものです。一言でいうなら、「同じ会社にずっと勤め上げることのほうが珍しい」状態になっていることです。
かつては新卒で入社した後、定年まで同じ会社に勤め上げることが一般的でした。そのため、採用基準は社風に合うかどうか、育成方法は先輩・後輩間での厳しいOJT。転職を考える人は少なかったので、無茶な転勤や単身赴任命令を出す会社も多かったようです。そして、定年退職の時には花束で祝福するというキャリアが用意されていました。
しかし、今やより良い条件を求めての転職は当たり前です。人事コンサルティングの現場でも、2015年頃から「優秀な人材ほど早く転職してしまう」という声を聞くようになりました。人生100年時代といわれるなかで、会社に頼っていても自分の将来が安泰なわけではない、ということがわかってきています。だからこそ、もっと成長できる環境を求めることや、同じような仕事でもより高い報酬を得られる会社への転職が当然になっているのです。社会人大学院への通学や資格取得のための学び直しが活発化し、副業で少しでも多く稼ごうとする人も増えています。
そうしたことは、実は若い世代だけの問題ではありません。若者はまだ社会がわかっていないから、として放置していては、30代、40代の優秀な社員もどんどん離れていきます。20代社員の行動は、炭鉱のカナリアのようなものなのです。
どうしようもなくなる前に、会社が変わらなければなりません。そのために、まず20代社員に接する先輩や上司側の意識と行動を変えていきましょう。
2.イマドキの若者であるZ世代の特徴
ここでは、特に1995年以降に生まれ育ったZ世代をターゲットに説明します。たとえば、2000年生まれだと、2023年で新卒あるいは2年目くらいの社員です。
このZ世代の特徴は、デジタル環境が当たり前であるだけでなく、SNSなどネットでのつながりを当然とするソーシャルネイティブであるという点にあります。言い換えるなら、必ずしもリアルな対面でのつながりを求めるわけではありません。
また、将来への考え方も、それ以前の世代とは大きく異なります。不況と社会不安のなかで育ってきているため、「明日は明るい」という発想がありません。だから、“今”を大切にします。
その結果としてのZ世代が有する特徴を4つ示します。
1.ソーシャルネイティブであり、承認・称賛を重視
2.個性や自分らしさを重んじ、多様性を受容
3.お金やキャリアに保守的で堅実な考え
4.社会貢献への高い意識
3.Z世代への間違った対応
Z世代は、上記のような特徴があるため、これまで当たり前だった上司や先輩からの指導や教育が、うまく“刺さらない”ことが多いのです。
たとえば、「仕事で成果を出せば給与や賞与が増えるから頑張ろう!」と声をかけ、実際に昇給させたり賞与を増やしたりしても、あっさりと辞めてしまうことがあります。そんな若者からは、「お金はたしかに嬉しいけれど、それで釣ろうとするのがしっくりこなかった」という離職理由を聞くことがあるくらいです。
だったら褒めればいいだろうと考え、成果が出たときに「よく頑張ってくれて嬉しいよ」と伝えても、モチベーションが上がらなかった例もあります。これも若者側に聞いてみると、「普段相談したいときには忙しいからと取り合ってくれないのに、成果が出た時だけ褒められてもしらけるだけです」と理由を教えてくれました。
それなら普段からコミュニケーションを取ればいいだろうと、「わからないことはなんでも聞いてよ」と伝えたところで、「自分から相談があります、って声をかけるのは悪いじゃないですか…」と何も相談に来ません。上司や先輩からすれば、「相談がないから大丈夫だろう」と考えるかもしれませんが、その間にどんどん若手の心が離れていってしまうのです。
では、どうすれば若手活躍の良いスパイラルを実現できるのでしょうか。
4.上司や先輩が自分の「常識」を「偏見」だと理解する
若手を活躍させるために重要なことは、価値観や意識の違いを踏まえたコミュニケーションです。上司や先輩が「わざわざそうしてやっている」という恩着せがましい意識で対応しては見透かされてしまいます。
本当に時代が変わって、自分たちも変わる必要がある、という認識をしっかり持つ必要があります。そのために、無意識の偏見を知るための認知バイアス調査を踏まえた意識改革を行うことも有効でしょう。
そのうえで、たとえばお金でやる気を高めようとするのではなく、お金ではない部分でのモチベーションを意識した指導や指示命令をしなければいけません。それぞれがどんな価値観を持ち、何を実現したくて今この会社にいるのかを知る必要があります。全員一律に出世や成功を目指す世代ではないのです。
最も重要なことは、一人ひとりのそのままの存在を認めることです。「こんな人材になるべきだ」というキャリアモデルは重要ですが、だからといって現状の個性や多様性を否定してはいけません。かつては入社後に徹底して人格を否定し、「社会人」として叩き直す教育をしていた会社もありますが、今の若者には通用しません。
日々のコミュニケーションをしっかり取り、時には若手から学ぶこともあると考え、対等な関係として接することが必要です。その結果、組織に心理的安全性が生まれてくれば、若手の採用から成長、引き留めにつながる、良いスパイラルが生まれてくるでしょう。
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