Netpress 第2242号 業務変革への第一歩! システム企画書の上手な書き方・作り方

Point
1.システム企画書は、DXなどに取り組む中小企業においても非常に重要になってきています。
2.書くべき項目(情報)を押さえ、外部の知見や支援も上手に使いながら、システム企画書を作成しましょう。


さくら情報システム株式会社
技術開発部 松澤 文明


「あの業務の効率化は、このシステムを導入すれば実現できるのになぁ…。導入には会社の決裁が必要だけど、決裁を得るための企画書なんて書いたことがないし、どう書けばよいかもわからない」という方も多いのではないでしょうか。システム企画書は、大企業だけの話ではなく、これからDXなどに取り組む中小企業にとっても重要となります。システム企画書は、「予算を取る」ということに加えて、DXやIT化によって組織変革の方向性を決めるものでもあるからです。


以下では、システム企画書に必要な項目(情報)や記載のポイントなどについて解説します。

1.システム企画書を書く前の準備

システム企画書を書く前に、次の点について準備をしておく必要があります。


(1)
企画がどんな承認ルートを通り、誰が決裁権を持っていて、誰が味方(企画の支援者)になってくれそうかを把握しておく
(2)
IT投資できるか? できるとすれば、どの程度可能なのかを把握しておく


どんなによい企画でも、決裁者の理解が得られていない、予算がまったくない・足りないといった状態では企画は通りません。企画する前に、企画が通る可能性があるか、どのポイントが障壁になりそうか、しっかりと分析しておきましょう。

2.システム企画書の項目・内容

システム企画書に必要となる基本的な項目・内容は次の通りですが、企画の提案相手や内容、状況に応じて、順番や内容を変更してください。




起案に至る背景

解決方針

企画実施後のシステム構成や業務プロセス(TO-BE)

スケジュール

企画の目的

導入効果

解決策(製品やサービスを含む)の比較、概算費用

制約、リスクなど

課題

現状のシステム構成や業務プロセス(AS-IS)

実施体制



それでは、これら各項目のポイントや記載のコツなどを解説していきましょう。


①起案に至る背景……「なぜ、企画をすべきなのか、なぜ、今なのか」を記載します。特に、外部の各種統計、調査情報(消費動向や人口推計など)や社内の状況を分析して、取り組む根拠をしっかりと記載しましょう。


②企画の目的……企画の「ゴール」を書きます。システム部としては、システムを入れることが目的になりがちですが、会社全体としての取り組む目的を書くようにしましょう。


③課題……現在、顕在化している課題だけではなく、潜在的な課題も含めてしっかりと検討しましょう。DXについて、自社の理想像との差分(ギャップ)もこの部分に記載します。


④解決方針……課題に対して、どのように解決するかを記載します。解決方法は一つではない場合がほとんどですが、ここでは解決方法として最も有力なもの(取り組もうと思っているもの)を記載します。この部分や⑧については、解決方針を考えたり情報収集したりするだけでも時間と手間がかかり、なかなか大変です。外部(自社の環境や状況をきちんと理解して支援してくれるベンダーなど)からの情報を上手く使ってまとめるとよいでしょう。また、先にベンダーなどに相談しておくことで、その後の実施フェーズでもスムーズに実施できる可能性があります。


⑤導入効果……導入した際の効果を記載します。効率化した金額や時間など、極力、定量的に数値で記載することで、企画の説得力が増します。定量的に表わせない場合にだけ、定性的に記載します。特に、システム運用(パッチ更新やバックアップなど)に関する情報システムの作業の削減効果は、記載を忘れがちなので注意しましょう。


⑥現状のシステム構成や業務プロセス(AS-IS)……システム企画書の特徴部分である現状のシステムの全体構成を鳥瞰図のような粒度で記載します。業務の一部分であれば、その業務プロセスを図示します。


これらの図のどの辺りに課題があるかマッピングして記載すると、関係者の理解が進むでしょう。また、このシステムの全体構成図については、システムを保守する際、特にトラブル時において非常に重要になります。日頃からきちんと整備しておくようにしましょう。


⑦企画実施後のシステム構成や業務プロセス(TO-BE)……企画実施後に、システムや業務プロセスがどう変わり、どの部分がどうよくなるか、システムの全体構成図やフロー図を使って記載するとよいでしょう。


⑧解決策(製品やサービスを含む)の比較、概算費用……主に、④の結論(解決方針)に至った根拠となる情報を記載します。課題に対してどのような方法をとるか、どんなサービスを使って解消するか、また、解消するにあたってどの程度の費用がかかるか、場合によっては複数を表記し、それぞれの方法のメリット・デメリットなどを記載します。


⑨実施体制……自社内の人員体制や役割とともに、ベンダーなど外部の協力体制も記載するとよいでしょう。


⑩スケジュール……どの時期に、どの課題が解消されるかを表現します。3年後などの中長期のスケジュールは、計画後少し時間が経過した時点で、課題が変わっていることや課題の優先順位を変更しなければならないこともあります。そのため、見直しするポイント(マイルストーン)をあらかじめ設けるなど、柔軟に動ける余地を残すように説明しましょう。


⑪制約、リスクなど……企画を実施するうえでの制約(契約で期限が設定されているなど)、実施する/しないことによるリスクや発生確率、影響などを記載します。


システム企画書自体を書いたことがなく、自社だけで作成する自信もないというケースも多々あるかと思います。そうした企業を支援するサービスも出てきていますので、外部の支援や知見を上手く利用しながら、自社のDXを着実に実現していきましょう。




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