Netpress 第2228号 知らないでは済まされない! 企業におけるSNS活用と著作権法上の留意点

Point
1.画像や動画をSNSに投稿する場合には、第三者の著作権等を侵害しないことが非常に重要です。
2.著作権法を中心として、第三者が著作権等を保有する画像・動画(以下、「第三者コンテンツ」といいます)をSNSに投稿するうえで、企業の担当者が知っておくべき権利関係について説明します。


弁護士 瀧澤 輝


1.第三者の著作権を侵害しないために

第三者の著作権を侵害しているか否かは、以下のフローチャートに従って判断します。




①対象となる第三者コンテンツは著作物か?

まず、利用したい第三者コンテンツが「著作物」であるかを判断します。著作物は、著作権法に「思想または感情を創作的に表現したもの」と定義されています。


著作物かどうかの判断が難しいケースもありますが、過去の裁判例や外部の専門家の意見を踏まえつつ、それでも判断がつかない場合には、著作物であることを前提に次のフローに進むのが望ましいでしょう。


②第三者コンテンツは保護期間内にあるか?

第三者コンテンツが保護期間内にあるかどうかを判断します。著作物の保護期間は、原則として「著作者の生存期間中+その死後70年」です。共同著作物の場合は、最後に死亡した著作者の死後70年となります。


③担当者の利用行為は支分権の対象となる利用行為か?

著作権(ここでは財産権のことを指します)の効力が及ぶ利用行為については、「支分権」として規定されています。


第三者コンテンツを利用してSNSに投稿する場合に、特に問題になりやすい支分権は次のとおりです。



複製権
著作物をコピーしたり、ダウンロードしたりする場合に問題となる
公衆送信権
著作物をアップロードしたり、インターネット配信したりする場合に問題となる
翻案権
著作物を要約したり、新たな創作性を付与したりするような改変を行う場合に問題となる


④担当者の利用行為は権利制限規定に該当しない形態での利用か?

支分権に該当する行為であっても、一定の要件を満たす場合には、著作権者に許諾を得ることなく利用することができます。これを「権利制限規定」といいます。


第三者コンテンツを利用してSNSに投稿する際に知っておきたい権利制限規定は次の3つです。


1.
付随対象著作物の利用
いわゆる「写り込み」に関する権利制限規定。スクリーンショット、生配信、CG化などにあたり、意図せず他人の著作物が写り込んだ場合や、写り込んだまま著作物を利用する場合には、著作権の効力が及ばないとされる。
2.
検討の過程における利用
著作物の利用について、許諾の有無等を検討する段階での著作物の利用を認める規定。この規定により、主にSNSに投稿する前段階において、第三者コンテンツの利用を検討するために、社内の企画書に第三者コンテンツを掲載することができる。
3.
引用
公表された著作物は、公正な慣行に合致し、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内であれば、基本的に引用して利用できる(出所の明示が必要)。


なお、著作権の制限規定に該当したとしても、後述する「著作者人格権」までは制限されません。


⑤著作権者である第三者から著作権に関する譲渡や利用許諾を受けていない状態か?

著作権の制限規定に該当しなかった場合、著作権者等と連絡を取り、著作権(財産権)の譲渡または利用許諾に関する契約を結ぶ必要があります。


また、第三者コンテンツが著作物の場合、著作者人格権については、別途考慮が必要です。たとえば、次のようなケースです。




著作物に改変行為を行う場合……同一性保持権(意に反して著作物の変更、切除その他の改変を受けない権利)

著作者の名前を表示あるいは省略する場合……氏名表示権(著作者の名前を表示あるいは表示しない権利)

社会的な評価に影響を及ぼすような著作物の使い方をする場合……名誉声望保持権(著作者の名誉等を害する方法で著作物を利用されない権利)


著作者人格権は譲渡できませんので、著作者人格権の効力を制限したい場合には、通常、著作者人格権の不行使特約を契約条項に入れます。

2.注意すべき被写体の権利

著作権以外でも、他人の肖像(顔や姿)を利用する場合(偶然、他人の肖像が写り込んでしまった場合も含みます)には、肖像権やパブリシティ権について注意が必要です。


肖像権は、みだりに自己の容ぼう・姿態を撮影・公表されない権利です。肖像権侵害の判断基準は、「本人の人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものか」ですが、その判断にあたっては、デジタルアーカイブ学会の「肖像権ガイドライン」が参考になります。ただ、実務的には、本人から承諾を得るか、編集でボカシを入れることで特定を困難にするのが望ましいでしょう。


パブリシティ権は、自己の氏名・肖像がもつ顧客吸引力を独占的に利用する権利です。顧客吸引力をもつことが前提ですので、著名人の肖像を利用する場合などに問題となります。実務的には、本人または本人が所属する事務所の承諾を得て利用する(広告の場合には、広告出演に関する契約のなかで処理する)のが一般的でしょう。



ここまで、SNS活用と著作権法上の留意点について説明してきましたが、第三者が作成したコンテンツが著作物に当たらなくても、それを不正に利用して自社が利益を上げている場合やコンテンツを作成した第三者の利益が減っている場合には、不法行為が成立する可能性があります。また、コンテンツの内容次第では、不正競争防止法による規制なども考えられるところです。さらに最近では、実際には著作権を侵害していなくても、侵害の疑いをもたれただけで、SNS等において「炎上」するケースも多く発生しています。


こうした点を踏まえると、著作権法以外の法律による規制にも十分に注意したうえで、他のユーザーからの反応、炎上した場合の対応といった点を考慮して、コンテンツを投稿するかどうかを判断することが重要です。



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