多田智子の働き方改革関連コラム 稼ぐ力・長期的な企業価値の向上へ(サステナビリティ・トランスフォーメーション)

多田国際社会保険労務士法人は、忙しいビジネスパーソンが知りたい【労務管理に関する旬な情報】を厳選してお送りします。

今回は、サステナビリティ・トランスフォーメーションについてお知らせします。


皆様の会社では、気候変動問題や人権問題をはじめとしたサステナビリティへの対応はされておりますでしょうか。


この度、経済産業省では、「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」・「価値協創ガイダンス2.0」を公表しました。


本レポートでは、サステナビリティへの対応は、企業が対処すべきリスクであることを超えて、長期的かつ持続的な価値創造に向けた経営戦略の根幹をなす要素となりつつあり、企業が長期的かつ持続的に成長原資を生み出す力(稼ぐ力)を向上させていくためには、サステナビリティを経営に織り込むことがもはや不可欠であるといっても過言ではないとしています。


実際、サステナビリティ課題に対応しない企業は、投資家、消費者、労働市場から評価を得ることが難しく、結果として事業活動の継続に影響が生じるケースも多くなってきているようです。


これを日本の企業・投資家をはじめとするインベストメントチェーン全体にとって大きな試練とともにチャンスであるとし、今こそ、※サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を実践するときであると提言しています。


※SXとは、社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを「同期化」させていくこと、及びそのために必要な経営・事業変革(トランスフォーメーション)を指します。「同期化」とは、社会の持続可能性に資する長期的な価値提供を行うことを通じて、社会の持続可能性の向上を図るとともに、自社の長期的かつ持続的に成長原資を生み出す力(稼ぐ力)の向上と更なる価値創出へとつなげていくことを意味します。


また、このSXを実現するための具体的な取組としては、以下の三点を挙げています。


①社会のサステナビリティを踏まえた目指す姿の明確化

SXの実現に向けては、第一に、社会のサステナビリティも踏まえつつ、自社が長期的に目指す姿を明確化することが重要であり、そのためには、まず、社会への長期的かつ持続的な価値提供に向けて判断軸となる価値観を明確化し、それに基づき、自社の事業活動を通じて解決する重要課題を特定することが求められます。


その上で、それら自社の価値観や重要課題とも整合的な形で、どのように社会に価値を提供していくか、それによってどのように長期的な価値向上を達成するかという、目指す姿を設定することが重要としています。


②目指す姿に基づく長期価値創造を実現するための戦略の構築

企業には、目指す姿に基づき具体的にどのように価値創造を実現していくか、企業全体の長期価値創造の在り方を示す長期戦略を構築するとともに、その具体化に向けた短・中・長期別の戦略を組み立てることが求められます。


長期戦略を構築する際には、重要事項として、(1)長期的に目指す姿の設定に加え、(2)その実現に向けて基盤となるビジネスモデルの構築・変革、(3)視野に入れるべきリスクと機会の分析を統合的に行うこととしています。


このように定めた長期戦略の具体化・実現に向けて、目指す姿と現在の自社の姿とのギャップを埋める観点から、事業ポートフォリオ戦略、DX 推進、イノベーション実現のための組織的なプロセスと支援体制の確立・推進、人的資本への投資・人材戦略、知的財産を含む無形資産投資戦略などを、短・中・長期のそれぞれの時間軸に応じて推進していくことが重要です。


③長期価値創造を実効的に推進するためのKPI・ガバナンスと、実質的な対話を通じた更なる磨き上げ

長期的かつ持続的な企業価値向上を実効的に推進するためには、※KPI の設定と※ガバナンス体制の整備が有効である。これらを通じて、企業には、目指す姿とそれに基づく戦略を着実に構築・実行するとともに、外部環境の変化等に応じて適切な見直しを図ることが求められます。


※KPIの設定…戦略のみならず、価値観や重要課題と関連付けることも有益です。また、それらのKPIを長期の時間軸においてどのように達成していくかという見通しや、それが長期的な価値創造にどのようにつながるかを併せて示すことで、投資家等の理解をさらに深めることができるとしています。


※ガバナンス…自社の長期的な価値向上の観点から、なぜそのようなガバナンスの仕組みを構築しているのか、それがどのように自社固有の価値創造ストーリーの中に位置づけられ、機能するのかを併せて示すことが望ましいとしています。その上で、取締役会と経営陣の役割・機能分担を明確化するとともに、重要課題及び戦略に関するKPIと連動した役員報酬や、株式報酬をはじめとする中長期的なインセンティブ報酬を設計することも有益であるとしています。


詳細は下記リンクをご覧ください。


※関連リンク

〇経済産業省「伊藤レポート3.0(SX 版伊藤レポート) 」

https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220831004/20220831004-a.pdf

〇経済産業省「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0」

https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220831004/20220831004-b.pdf

〇経済産業省『「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」・「価値協創ガイダンス2.0」を取りまとめました』

https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220831004/20220831004.html



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