Netpress 第2206号 最新動向をふまえて 外国人材の活躍を促す自社体制の見直しの進め方

Point
1.人材不足を補い、自社の競争力を高めるためにも、外国人材の戦力化の必要性が高まっています。
2.外国人雇用の最新動向や注意点も含めて、その活躍を促すための自社体制の見直し方を解説します。


みらいコンサルティンググループ
特定社会保険労務士
福本 祐子


1.在留資格と就労の可否について留意すべき点

在留資格とは、外国人が日本に滞在する根拠となるもので、出入国管理及び難民認定法に定められた活動を行うことができる資格のことです。


在留資格は、就労の制限がないものと、制限があるものに大きく分けられます。日本国内で就労が認められていない外国人が就労すると、不法就労となるだけでなく、採用した企業も不法就労助長に該当し、罰則規定が適用されます。企業は、従事させる予定の業務内容と本人に許可されている活動内容が合致するか、確認することが非常に重要です。




不法就労となるケースは、主に次のようなものがあります。



不法滞在者や被退去強制者が働くケース……密入国した人、在留期限が切れた人が働く場合など

就労できる在留資格を有していない外国人で、出入国在留管理庁(以下、「入管」といいます)から就労許可を受けずに働くケース……留学の在留資格を持っている人が「資格外活動許可」を受けずに働く場合など

入管から認められた範囲を超えて働くケース……語学学校の教師として就労を認められている人がトラックドライバーとして働く場合など


なお、「留学」や「家族滞在」の在留資格を持っている人が「資格外活動許可」を得ていれば、その許可の範囲で就労できます。この場合でも、1週間に28時間を超えて働くことはできません。この1週間とは、会社が独自に起算日を定めることはできず、残業時間や掛け持ちアルバイトをしている場合は他社の勤務時間も含めて、どの7日間をとっても常に28時間以内となるよう、管理が必要です。留学生は、夏休みなどの長期休業期間に、1日8時間、1週間40時間まで就労することが認められていますが、学則によらない場合は、週28時間が上限時間となるので留意しましょう。

2.外国人労働者の募集・採用のポイント

外国人労働者の募集・採用にあたっては、国籍で差別しない公平な採用選考を行いましょう。日本国籍でないこと、外国人であることのみを理由に、採用面接などへの応募を拒否することは適切ではありません。


募集にあたっては、日本人と同様、従事すべき業務内容、労働契約期間、就業場所、労働時間や休日、賃金、労働・社会保険の適用などについて、書面の交付により明示するとともに、外国人に対しては、母国語や平易な日本語を用いるなど、外国人労働者が理解できる方法で明示するよう努める必要があります。


特に、海外に居住している外国人を募集する場合、渡航・帰国にかかる旅費や寮・社宅の利用にあたって、本人が負担すべき費用がある場合には、あらかじめ明確にするよう努めなければなりません。



3.外国人労働者の労務管理の基本

労働基準法や健康保険法などの労働関係諸法令は、国籍に関係なく外国人労働者にも適用され、国籍による労働条件の差別は禁止されています。外国人労働者であっても、最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。


外国人労働者固有の対応の一例としては、労働災害防止のための指示などを理解できるようにするため、必要な日本語、基本的な合図などを習得させるよう、会社には努力義務が課せられています。厚生労働省では、外国人労働者の安全衛生対策に活用できる教材を多数公開していますので、活用するとよいでしょう。


加えて、不法就労者を採用しないよう、外国人には在留カード、パスポートの提示を求め、在留資格・期間、在留期限、資格外活動許可の有無などを確認することが重要です。不法就労者であることを知らなくても、外国人の採用時に在留カードの確認をしていないなどの過失がある場合は、不法就労助長罪の対象となるため、留意しましょう。


在留カードのコピーでは改ざんされる恐れがあるため、在留カードの原本(両面)確認に加えて、会社側でできることとしては、以下のような対応が考えられます。




在留カード等番号失効情報照会を行ったインターネットページの画面キャプチャの保存

入管が無料配布している在留カードのICチップ読み取りアプリケーションで確認した内容の画面キャプチャの保存


併せて、在留期限を超えて就労させることのないよう、在留期限の管理を本人任せにせず、在留カードなどにより在留期限を超えていないか、会社側で定期的に確認することも望まれます。

4.外国人労働者採用に対応した就業規則と雇用契約書

外国人労働者の受入れにあたって、就業規則を外国人労働者の母国語に翻訳することは義務付けられていませんが、母国語やわかりやすい日本語で説明するなどして、就業規則を周知する必要があります。


また、自社で働くために必要な在留資格の取得・更新・変更ができなかった場合など、万一、日本を退去せざるを得なくなることに備えて、内定取消し・雇止め・解雇などの条項を整備することをお勧めします。


厚生労働省では、3つのツールとして、①「外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集」、②「雇用管理に役立つ多言語用語集」、③「モデル就業規則やさしい日本語版」を公表していますので、活用するとよいでしょう。


雇用契約書の整備にあたっては、停止条件付雇入れ日に関する条項を整備しておくことが重要です。


海外に居住している外国人を採用する場合は、特に、コロナ禍の影響を受けて、入社日までに在留資格が取得できなかったり、日本に入国できなかったりしたケースも散見されました。こういったケースに対応するために、自社で働くために必要な在留資格を取得してから効力を有する、日本に入国してから効力を有するといった、雇入れにあたっての条件を足しておくことで、労使トラブルの回避につながります。


「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」に沿って、国籍に関係なく働きやすい職場環境を整備していくことが望まれます。



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