Netpress 第2198号 DX成功の鍵! 「PoC」の重要性とその実施手順

Point
1.PoCとは、新しいアイデアやコンセプトの実現可能性や得られる効果などを実際に検証することです。
2.企画の実現性の確認、失敗リスクの低減、費用対効果の確認、意思決定の円滑化などが可能になります。
3.PoCは、(1)仮説・KPI設定、(2)検証方法の検討、(3)検証実施、(4)結果分析の順に実施するとよいでしょう。


さくら情報システム株式会社
技術開発部 松澤 文明


最近、「PoC(Proof of Concept:概念実証)」(ピーオーシーやポックと呼ばれます)という言葉を、さまざまな場面で耳にするようになってきました。DXの成功確率を高めるためには、PoCがとても重要なプロセスになります。

1.「PoC」とは何か?

PoCとは、新しいアイデアやコンセプトの実現可能性や、それによって得られる効果などについて、実際に試作段階のサービスを使って検証することです。


実は、PoCは特に目新しいことではありません。これまでも新しい商品を考えるとき、事前に社員にテスト版を使ってもらって感想を聞くなど、規模や呼び方は違ってもPoCを実施していたケースは多いのではないでしょうか。


PoCでは、MVP(Minimum Viable Product)と呼ばれる、顧客に価値を提供できる最小限のサービスや製品(簡単にいうと体験版や試作品といった簡易なもの)を使って効果を測定したり、試用導入したりすることで、机上の空論ではなく、実際に顧客価値を事実ベースで確認します。ほぼ同様の意味・位置付けで、「実証実験」と呼ばれることもあります。


PoCを実施する目的としては、アイデアやコンセプトが実際に実現できるかの確認、問題・改善点の発見、価値・効果測定などがあります。やはり、実際に利用してみないとわからないことも少なくありません。一気に製品化したものの、利用者に受け入れられなかった、致命的な問題が発覚して大きな損害を被った、といったことを防ぐために実施します。


ではなぜ、今PoCが話題になっているのでしょうか。必ずしも性能や機能が高いものが売れるわけではないという不確実性が増す時代になり、企画からすぐにサービス、製品へというスタイルから、失敗リスクを極力下げるためにPoCを行い、効果を確かめてから製品化しようという考え方に変化してきたからだと推測できます。


特に、これまでは試作品としてシステムを使用する場合、どんなに小さなものでもサーバー機器を買って、システムを構築してと、ある程度の調達時間と費用が必要でした。しかし、クラウドサービスの登場により、システム環境が欲しいときにすぐ、安価で(1日数百円)、「短期間利用」するという選択ができるようになりました。


こうした背景により、近年、PoCが盛んに行われるようになったと考えられます。


昔 : 企画 ⇒ ⇒ ⇒ プロジェクト化(製品化)
今 : 企画 ⇒ PoC ⇒ プロジェクト化(製品化)


実際に自動車の自動運転、AI自動走行宅配ロボット、AIカメラによる人流計測、離島へのドローンを使った荷物の配達など、本格的に運用を開始する前に、さまざまなことを確かめるPoCや実証実験を行うことが多くなってきています。


DXという未知の課題に取り組む際にも、このPoCを行うというプロセスが成否を分ける重要な鍵になります。

2.PoCのメリット

PoCのメリットを詳しくみてみましょう。そのメリットは、主に以下の4つがあります。


(1)実現性を知ることができる

企画書上は可能だが、そのアイデアやコンセプトを実際に実現しようとすると、非常に高度な技術や巨大な設備が必要になるということがあります。PoCによって、こうした実現のための高いハードルやリスクを事前に排除できます。


(2)失敗するリスクを低減できる

アイデアやコンセプトに価値があることを事前に確認することで、性能の高い製品や機能が多いサービスを作ってはみたが利用者が受け入れてくれないなど、失敗するリスクを低減することができます。


(3)費用対効果を推量できる

実際に検証することで、概算ではあるものの、検証で使ったコストから、おおよそのコスト(初期投資額や必要費用)が高い精度で把握できるようになります。


また、効果についても事前に把握できるため、より事実に基づいたビジネスモデルを描きやすくなります。


(4)投資判断・リリース可否などの意思決定がスムーズになる

机上の企画ではなく、事実を踏まえた企画書ですから、意思決定者も安心してスムーズに決裁できるようになります。

3.PoC実施の手順

PoCは、以下のような手順で進めると効果が出やすくなります。


(1)仮説・KPI(Key Performance Indicator)設定

事前に、PoCで確かめたい仮説や事実として押さえておくシナリオ、効果や価値を計測する指標(KPI)を決めます。


(2)検証方法の検討

(1)で決めた仮説を検証する方法やKPIを変化させるための方法を検討します。検証方法は、コスト(費用、準備時間)を考えて、できるだけ小さく簡易に実行する方法を取るとよいでしょう。


(3)検証実施

仮説やKPI以外にも注目し、予測していない問題点や利用者の反応など、多くの情報を収集しましょう。


(4)結果分析

PoCにとっては、最も重要なプロセスとなります。実施結果を振り返って効果を確認するとともに、実施時に仮説では考えていない事実、効果を踏まえて、課題や改善点を発見します。この結果をもとに、製品・サービス化へ向かうのか、改善を加えてより深い仮説検証を行うのかを決定します。


以上がPoCの実施手順ですが、PoCを実施すること自体をゴールとしてはいけません。PoCは、あくまでもアイデア・コンセプトの実現可能性や効果・問題点などを事前に把握することが目的であることを忘れないようにしましょう。


また、PoCは1回で終わりではなく、結果をもとに繰り返しブラッシュアップしていくことで、より成功しやすいアイデアやコンセプトに近づく可能性があります。




いかがだったでしょうか。不確実性の高いDXにおいて、PoCはDX成功のための非常に大切なプロセスになってきますので、しっかりと実施していきましょう。



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