Netpress 第2186号 経理業務を効率化! クラウド会計ソフトを導入・運用する際の留意点
1.クラウド会計ソフトは、インターネットに接続して使用し、会計ソフトも会計データもインターネット上のサーバーに置く方式の会計ソフトです。ウェブブラウザさえあれば、サイトにアクセスして利用することができます。
2.近年、急速な広がりをみせるクラウド会計ソフトのメリットとデメリット、導入・運用時の留意点を確認します。
税理士 米津 晋次
1.クラウド会計ソフトのメリットとデメリット
クラウド会計ソフトの主なメリットとデメリットをまとめると、次のとおりです。
主なメリット | 主なデメリット | ||
① | 法改正対応や機能の追加は自動で行われる(アップデート版の追加インストールが不要) | ① | インターネット通信環境がないと利用できない(インターネット回線にトラブルが発生して接続できない場合は、回線の復旧を待つしかない) |
② | パソコンのOSにかかわらず利用することができる(使える端末の種類が多い) | ② | 毎月または毎年など継続的に使用料を支払う必要がある(インストール型会計ソフトは買い取りだが、保守契約等の追加費用を考えると、必ずしもクラウド会計ソフトのほうがコスト高とは限らない) |
③ | 使う端末も場所も特定されないので、どこからでも利用することができる | ③ | インターネットに接続している以上、会計データの流出等のリスクがゼロとはいえない |
④ | 基本的にデータをバックアップする必要がない | ④ | 動作速度はインターネット環境に左右され、回線スピードが遅い場合はストレスになる |
⑤ | インターネットバンキングやクレジットカード、販売管理ソフト等とデータ連携できるものが多い | ⑤ | 現状ではクラウド会計ソフトに対応できない(しない)税理士事務所も多い |
⑥ | 自動仕訳・学習機能により、簿記の知識のない担当者でも利用しやすい | ||
⑦ | 税理士事務所との間でデータを送受信する必要がない(税理士事務所とデータを共有) |
2.導入・運用にあたっての留意点
(1)導入時の留意点
クラウド会計ソフトの導入時には、次の点に留意しましょう(無料お試し期間付きのものであれば、本格導入の前に使い勝手を実際に確認できます)。
①機能・データ連携・ユーザー数
クラウド会計ソフトにはさまざまなものがあり、それぞれ機能に違いがあります。
まずは、導入しようとするクラウド会計ソフトに、必要な機能が揃っているかをチェックします。各ソフトは、対象としているユーザー層が異なりますので、きちんと見分けることが大切です。
あわせて、データ連携が可能な範囲を確認することも重要です。会社で頻繁に使うサービスと連携できるか否かで、業務効率に大きな差が出ます。
また、最大ユーザー数は足りるか、何人までなら追加料金が発生しないかも確認すべきです。
②サポート体制
クラウドに限らず、会計ソフトはメーカーのサポート体制が重要です。サポート体制は、会計ソフトによって大きく異なり、サポートへのつながりやすさ、レスポンスの速さ、質問のしやすさ、対応範囲などに差があります。
サポート体制を確認し、自社に合ったサポート体制のサービスを導入しましょう。
③セキュリティ
会計データをインターネット上(メーカーのサーバー)に保管しますから、クラウドシステムに実績があり、事故のないメーカーの会計ソフトを利用すると安心です。
④会計担当者への対応
会計ソフトを変更すると、初期設定を行う時間が必要になりますし、画面や操作が変わるので慣れるまで入力効率も悪くなります。変更に際しては、事前に会計担当者の同意を得るとともに、導入後も一定の配慮が必要になります。
⑤税理士事務所の対応
税理士事務所が、使用したいクラウド会計ソフトに対応しているかを確認します。クラウド会計ソフトには対応していても、自社が導入しようとする会計ソフトには対応していないということもあります。
(2)運用時の留意点
①ログイン情報の管理
クラウド会計ソフトは、ログイン情報さえわかれば、どこからでも利用することが可能です。逆にいうと、ログイン情報さえわかれば、誰もが重要情報が含まれる会計データを見たり、変更したりすることができます。
その意味で最も注意すべきなのは、ID、パスワードといったログイン情報をしっかりと管理することです。そのためには、次のような対応が大切になります。
・ | 推測されにくく、複雑で長いものにする |
・ | メモ書きしたりエクセル等にまとめたりする場合は、他人に見られないように配慮する |
・ | ブラウザにログイン情報を保存する場合は、パソコン自体のアクセスを制限する |
・ | 担当者が退職・異動した場合は、すぐに利用制限をかける |
管理するログイン情報が多ければ、パスワード管理アプリを利用することを検討します。パスワード管理アプリ用のパスワードを1つ覚えれば、それ以外のパスワード管理をアプリに任せることができます。
②外部パソコンからのアクセス
出張先のホテルやインターネットカフェなど、不特定多数の人が使う外部のパソコンから会計ソフトにアクセスすることがあるかもしれません。その場合は、次のことに気をつけましょう。
・ | パソコンにセキュリティソフトが入っているかを確認し、入っていない場合は使わない |
・ | ログイン情報を保存しない |
・ | 利用を終えたら、必ずログアウトする |
・ | ブラウザに保存された履歴やクッキーを削除する |
セキュリティ保護を優先するのであれば、クラウド会計ソフトへのアクセスは社内と自宅のパソコンに限定し、外部パソコンからのアクセスは禁止する運用にするとよいでしょう。
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