Netpress 第2178号 DX時代にどう進める? リアルと連動したデジタルマーケティング

Point
1.コロナ禍においては、ライバルに先んじて攻めのDXに転じることで、勝機を見出すことが可能になります。
2.マーケティング改革は、「リアル×デジタルの融合」がポイントであり、顧客創造力の強化を導きます。


株式会社タナベ経営
ストラテジー&ドメインコンサルティング大阪本部
本部長代理 森田 裕介


1.マーケティングコンセプト

コロナ禍、また人口減少に後押しされる内需縮小下、既存の延長線では企業の競争力が低下するという正しい危機感のもと、新たな顧客を創造し続けなければなりません。マーケティングの定義は以下のとおりです。


マーケティング・・・顧客の価値観を的確につかみ、顧客価値を最大化するための顧客創造のスキーム設計と実行


タナベ経営が提唱するマーケティングコンセプトは、「リアル×デジタルのハイブリッド型マーケティングによる圧倒的顧客創造力の向上」です。自社のマーケティング活動をリアルとデジタルの融合によるハイブリッド型へと進化させ、変容する社会課題や顧客課題を的確につかみ、圧倒的に顧客創造力を向上させよう、というメッセージです。


タナベ経営によるマーケティングに関するアンケート(2021年10月)では、「マーケティング戦略そのものを見つめ直した」と回答した企業は約33%でしたが、「マーケティング施策をデジタルへシフトした」と回答した企業は約14%に留まっています。それだけ各企業は攻めのDXに遅れをとっているということです。


場当たり的な営業活動ではなく、マーケティング活動へのデジタル融合を前提とし、「リードジェネレーション(見込創出) → リードナーチャリング(見込育成) → 受注 → アフターフォロー」という道のりの設計と実行が必要です。




上図は、BtoBにおけるマーケティング体系図であり、上段にマーケティングスキーム、下段に各工程に応じたマーケティング施策をリアルとデジタルに分け、一例として示しています。


いかに受注確度を上げ、その後のリピート率を高め、ロイヤルカスタマー数を増やすか、というゴール設定に対して、リアルとデジタルに分けた効果的な施策検討が肝要です。BtoCにおいては、「AIDMA(Attention:注意 → Interest:関心 → Desire:欲求 → Memory:記憶 → Action:行動)」に置き換えれば、同様のスキームを描くことができます。

2.実例から学ぶデジタルマーケティング

以下に、リアルとデジタルを融合したマーケティングに成功している中小企業を2社紹介します。


●CASE1:A社(塗装機器製造業) ―― 「リアルな商流を守り、Web活用でDtoCへビジネスモデル革新」

A社は、コンプレッサ、塗装機器、塗装設備などを扱うメーカーです。業界は、古くからの商習慣で代理店を通じたユーザーへの販売が一般的で、その背景からデジタルに転じる企業は一切存在しない状況でした。同社は業界の常識を疑い、新たにデジタルマーケティングへと舵を切り、成功を収めています。そのポイントは2点あります。


1点目は、ウェブメディアの活用。まず実施したのは、ホームページのリニューアルで、リニューアルのみで顧客からの問い合わせ数が2倍に増加しました。いかにデジタル化が遅れている業界であったかがわかります。


現在は、YouTubeやSNSを活用し、機械の取り扱い動画を紹介するなど、馴染みのない機械をユーザーにわかりやすく説明しています。また、創業100周年を機に、顧客がSNS上に機械の使用シーンをアップすることで、同社製造の機械をプレゼントするといったキャンペーンも実施しています。


2点目は、アフターサービスの充実。同社は、イニシャルコスト・ランニングコスト・メンテナンスコストの3つを、顧客が負担するライフスタイルコストとして定義しています。


直近では、新たな販路として、ECサイトを立ち上げました。通常の商流は、先述のとおり代理店経由というアナログ営業ですが、ECサイトを開設することの制約条件の一つは、代理店を守れないことでした。それらが障壁となる産業は、多く存在します。同社では、販売は代理店経由、一方で部品購入といったメンテナンスはECサイト経由という商流を確立し、その制約条件をクリアしたのです。そして、ECサイトを立ち上げることにより、イニシャルコストはかかるものの、ランニングコストやメンテナンスコストは低減するという、顧客のコストダウンも実現しています。


●CASE2:B社(ヘルメット製造販売業) ―― 「ウェブメディアを活用した幼児用ヘルメットの認知拡大」

B社は、ヘルメットと車両周辺部品を扱う製造販売業です。バイクヘルメット事業で国内トップシェアを誇りますが、なかでも自転車のチャイルドシートに同乗する幼児から小学校高学年を対象としたチャイルドヘルメット事業は、国内シェアナンバーワンに君臨し続けています。全社員が「子どもの頭を守る」ことを追究する同社は、2020年に生後12か月~2歳に限定したブランドを新たに開発しました。そのブランドを推し進めるマーケティングのポイントは2点あります。


1点目は、保護者であるママへの情報発信。同社は、マーケットニーズを正しく捉え、ファッションアイテムとしての楽しみ方も提案しています。コンセプトは、「被る」から「着る」です。おしゃれを気にする保護者に対して、圧倒的なデザイン性によって差別化を図っているのです。同時にホームページもリニューアルし、企業としてリブランディングに成功しています。


また、SNSでは「#はじめてのヘルメット」や「#1歳ヘルメット」「#赤ちゃんヘルメット」といったキーワードにより、ママからママへと伝達され、顧客が顧客を呼ぶ善循環を形成しています。


2点目は、安全の啓蒙活動。生後12か月~2歳に限定したブランドは、2歳までの子供に合うヘルメットが世に存在しないことから、その安全を追求するために生まれたものです。実は、幼児のヘルメット着用は努力義務で、ヘルメット着用により死亡リスクが低下するといったことも、多くの人に認知されていないのが実情でした。


リーディングカンパニーとしての責任を果たすため、保護者に対するマーケティング活動を通じた安全に対する意識醸成の啓蒙活動まで実現し、死亡事故の減少にも貢献しているのです。



マーケティング活動が生むものは、LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)の向上です。社会課題や顧客課題が大きく変容するafterコロナをチャンスと捉え、顧客を創造するマーケティングへとアップデートすることが必要でしょう。



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