Netpress 第2160号 採用できない・活躍しない根本原因と対策を知るために 戦略と仕組みの観点からの人材採用とは?

Point
1.採用難は、「将来性」「成長性」「働きがい」がない会社に共通の課題といえます。
2.規模が小さくても、チャレンジングな中期計画を策定することで、将来性・成長性を示すことができます。
3.評価報酬制度を刷新することによって、求める行動や成果を具体化すれば、社員はメリハリを効かせて活躍することができるようになります。


セレクションアンドバリエーション株式会社
代表取締役 平康 慶浩


1.採用難は規模を問わない経営課題

いつの時代にも、中堅・中小企業では採用難がついてまわります。


仮に新卒を大勢採用できても、優秀な人ほど早い段階で大手や伸び盛り企業に転職してしまいます。中途採用をするにしても、採用される側が求める金額と採用する側が払える金額が合わないことは日常茶飯事です。


そうして、なんとかよさそうな人が雇えたかと思えば、実務の面では期待外れでため息が出る…。そんな経営者や人事部長の悩みをよく聞きます。


こうしたことは、会社規模が小さくて、ネームバリューがないから仕方がないのでしょうか。


いえいえ、決してそんなことはありません。小さなベンチャー企業が、やすやすと優秀な人材の採用を続ける例もたくさんあります。


一方、大企業でネームバリューがある会社でも、採用に苦しむことはあるのです。お付き合いのある大企業の社員を思い出してみてください。その誰もが優秀な方でしょうか。


実は、採用に苦しむ会社には、「将来性」「成長性」「働きがい」という3つの魅力が欠けているのです。その魅力を獲得するためには、企業規模や財務力はあまり関係しません。


だからこそ、今から1つずつでも魅力を育てることができれば、決して人材難に襲われることはなくなるのです。

2.優秀者は企業の将来性を常に見ている

採用が難しいと思ってしまう現象の1つに、優秀者が来ないし、来てもすぐに出ていくというものがあります。


その理由は、とてもシンプルです。「将来性」という魅力が欠けているからです。起業したての従業員数名のベンチャー企業に優秀な人材が集まるのは、そこに将来性があるからです。


弊社セレクションアンドバリエーションがお手伝いした会社には、当初5名だけの小さな会社もありました。しかし、中期計画を定め、社長を中心にみんなが全力で活躍するなかで、優秀な人材が集まり、やがて100名を超える組織に成長していきました。


将来性とは、チャレンジングな中期計画で具体化されます。この中期計画ですが、実は大企業でもしっかりと公表している例は多くありません。


大和総研の調査によると、2021年の日本国内の上場企業による中期経営計画の発表件数は649件に過ぎません。その前年の2020年に至っては、発表件数はたったの315件でした。


ということは、逆にいえば、今からでもあなたの会社で中期計画を策定すれば、他の会社に一歩先んじることができるのです。


ただし、計画があればそれでよいかというと、そうではありません。

3.成長という夢を見せるのが経営者の役割

現状維持しか記されていない中期計画に魅力はありません。求められる2つ目の魅力は、「成長性」です。


今の40才以下の世代は、社会の成長を実感したことがありません。その一方で、GoogleやAmazonなどの成長による暮らしやすさの恩恵を受けて生活しています。成長とは海外のもので、自分の周囲には存在しない。そんな思いを持つ人もいるくらいです。


しかし、もし自分が働いている会社で成長が示されていたらどうでしょう。昨日と違う今日を感じ、明日を目指す目標が掲げられていたら。


「そんな簡単に成長なんて目指せませんよ」


そうおっしゃるクライアントの社長もいらっしゃいました。けれども、成長しない限り、今いる社員の給与は増やせませんし、新しい社員に活躍の場も与えられません。


優秀な人が来ないと嘆いている背景には、仮に採用できたとしても活躍させる場を用意できないという現実があるのです。それは、夢を見ようとしない経営者の怠慢とすらいえるでしょう。


成長を目指す計画は、一朝一夕に作れるものではありません。現実はシビアであり、競争は激しく、投資できる経営資源は限られています。


しかしながら、会社が成長を示せなければ、優秀な人ほど、成長を目指せる場所に移ってしまうのです。後には、どこにも行けない、安定だけを求める人たちしか残りません。


そうならないように夢を見せることこそが、経営者の役割なのです。

4.一人一人に働きがいを与える評価報酬制度

将来性と成長性を示し、従業員を鼓舞した後で備えるべき3つ目の魅力は、「働きがい」です。


経営層が頭を使って将来性と成長性を示したとしても、従業員には歯車としての活躍しか求めないとしたら、やはり会社に残ってはくれません。逆に、将来性と成長性をすべて従業員の知恵と工夫だけで何とかしようとしても、疲れ果ててしまうでしょう。


働き甲斐とは、言い換えるなら「メリハリの効いた働き方」です。


具体的には、オンタイムは徹底的に集中し、生産性を高め続け、チームとして最高のパフォーマンスを発揮していく。そして、オフタイムにはリラックスして、次のオンタイムに備えられるようにする。


会社としては、そのようなメリハリの効いた働き方を用意しなくてはいけません。


メリハリの効いた働き方を実現していくためには、「何に集中すべきか」ということが定まっていなくてはならないはずです。中期計画による将来性、具体的な目標として成長性を踏まえつつ、新しい発想や行動が求められます。それらを求める人材像としてはっきり定義し、評価報酬制度として設計することがとても重要です。


評価報酬制度が新しくなることで、従業員は何に集中し、自分自身をどのように成長させるべきかがわかるからです。


採用に苦しむ会社の経営課題は、将来性が見えないことです。それは、成長する方向が見えないことであり、従業員も何に力を注ぐべきかがわかっていないということです。


ぜひ、成長を目指した中期計画を策定するとともに、評価報酬制度を刷新してみてください。そうすることで、たとえ規模が小さくても、優秀な人材が集まる会社に生まれ変われるはずです。



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