Netpress 第2156号 いまこそ踏み出そう 「DX」(デジタルトランスフォーメーション)のはじめ方・進め方

Point
1.DXを成功に導くためには、自社にとってのDXの意義、目的を明確にすることが重要な鍵となります。
2.自社だけで考えるのではなく、ベンダーに頼りきりでもなく、外部のノウハウを上手に利用することで、効率的にDXを推進していきましょう。


さくら情報システム株式会社
技術開発部 松澤 文明


近年、至る所で耳にする「DX(デジタルトランスフォーメーション)」。そろそろ自社でもチャレンジしたいが、DXをどう進めればよいかわからず困っている、という方が多いのではないでしょうか。


今回は、そのような方に向けて、自社のDXを推進するためにはどうすればよいか、そのヒントをお伝えします。


1.DXの現状

『DX白書2021』(独立行政法人情報処理推進機構)によれば、日本企業は従業員数が多い企業ほど、DXへの取り組みが進んでいますが、従業員数1,000人以下の企業では、その3割~5割がDXに取り組めていません。


一方、米国企業の場合には、従業員数1,000人以下の企業でも積極的にDXに取り組んでいて、日本に比べてDXは進んでいるようです。




では、どうして日本企業は、DXを進めたくても進められていないのでしょうか。


DXを阻む障壁は、多くの日本企業で、DX人材、ひいてはIT人材不足という総務省の調査結果があります。実際に、私が関わっている中小企業の方々からも同じことを耳にします。


経済産業省の調査によれば、IT人材の不足は2022年で約32.6万人、2030年には最悪のケースで約79万人が不足するとの予測が出ています。


この先、DXを実現できるかどうかが、企業が生き残るための鍵になります。しかし、IT人材の奪い合いにリソース(採用に要する人材、時間、費用)を割かれてDXの実施が遅れるもしくは実現することができなければ、ビジネス的に不利な戦いを強いられることになる可能性が高くなるでしょう。


2.DXビジョンの設定

DXが重要だということはわかっていても、「やったことがないDXをどう進めればよいかわからない」という方は多いのではないでしょうか。


DXでまずやるべきなのは、自社が「なぜ、DXをやるのか」「DXによって、何を成し遂げたいのか」というDXを行う意義、目的(以下、「DXビジョン」といいます)を決めることです。


たとえば、次のようなものがDXビジョンとして考えられるでしょう。


・新規事業による業務領域の拡大
・業務プロセス改革による競争力向上
・従業員のエンゲージメント向上


DXビジョンを設定することは、DXを進めていくうえで、とても重要です。このDXビジョンによって、全社でDXの方向性を定め、共通認識をもって取り組めるようになり、DXの推進スピードは飛躍的に上がります。


また、DXビジョンは、この後の工程である「実際にどの課題から手を付ければよいか」を考える際の優先順位の判断軸ともなります。


3.DXの全体方針

DXビジョンが設定できたら、①自社のなりたい姿や理想像と現状とのギャップ、②現状の業務課題の2つをDXビジョンに照らし合わせて総合的に分析、評価し、優先順位を決めて対応していきます。


こうした自社の全体像を把握しておくことで、社会やマーケットなどの急激な外部環境の変化や自社の状況が変化した際にも、素早く適応できるようなDXができます。


自社のなりたい姿の作成や現状の業務課題分析は、自社だけで行うことは難しいという企業もあるでしょう。そうした場合には、外部の力を使って実施することを検討してみてください。ファシリテーション(プロセスのサポート)をしてもらうだけでも効果的です。


4.DXに取り組む体制

以前の記事でも、DXに取り組む体制については少し触れましたが、自社にDX人材がいない場合、新たにDX人材を採用して推進するのがベストです。しかし、先述したように、IT人材の大幅な不足が見込まれ、人材の調達は今後、よりいっそう難しくなるでしょう。


また、IT人材がいるという企業でも、実際には「DXを自社だけでやるのは難しい」という声があります。たとえ、IT人材がいたとしても、外部からの意見は貴重であり、参考になるはずです。


自社業務、環境を一番理解しているのは自社の従業員ですから、その従業員を中心に自社のDXに協力してくれるベンダーを見つけ、1つのチームとして一緒に進めていくことで、素早く効率的にDXを推進できます。


自社のDXを進める時には、ベンダーと協力してDXを推進する「ワンチーム体制」を構築してみてはいかがでしょうか。



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