Netpress 第2154号 予防策は? 炎上した場合は? いま急増しているSNSトラブルへの対処法

Point
1.昨今、Twitter、Instagram、Facebookなど、SNSをめぐるトラブルが後を絶たない状態になっています。
2.企業にとって問題となりやすいSNS投稿について、主な予防策と事後的な対応策を概説します。


ベンチャーラボ法律事務所
弁護士 淵邊 善彦
弁護士 木村 容子


1.SNSトラブルの主な予防策

SNS投稿は、短い期間に拡散されやすく、ひとたび「炎上」すると、企業に重大な損害を与えるおそれがあります。こうした投稿について、大きく3つの場面に分けて、主な予防策をみていきます。


(1)企業の公式SNSアカウントにおける投稿

①チェック体制の整備

多面的な立場からチェックを行うべく、複数人によるチェック体制を整え、人選も年齢や性別、経験などに偏りがないよう工夫することが重要です。また、主に次の観点からチェックすることも有用でしょう。


□ 事実関係に誤りがないか
□ 法的観点からのチェックを行ったか(適法性のみならず、社会的、倫理的に問題にならないかも含む)
□ ステレオタイプな価値観に基づいていないか、価値観を強要していないか
□ 差別的、侮辱的、不適切な発言等と捉えられるおそれがないか(特に、性別、人種、年齢、宗教、政治、思想・信条、歴史観、外見等に関する話題、賛否両論ある議論に結び付き得る話題は慎重に検討する)
□ 投稿するタイミングに照らして適切な内容か(戦争、災害、大規模な事件や事故等があった日でないか等)


②情報管理体制・社内規程等の整備

業の情報管理体制の整備と見直しの検討が必要です。たとえば、特に公式アカウントについては、利用する貸与端末で個人アカウントを利用しないことや、ID・パスワード等の管理体制を見直すことが挙げられます。


また、各種社内規程の策定・見直しも検討しましょう(詳しくは後述)。従業員向けのガイドラインに加えて、公式アカウントの運営担当者向けのマニュアルやチェックリスト等を作成することも考えられます。


いずれにせよ、最新の炎上事案や社会情勢等を分析し、見直すことが肝要です。


③研修・教育

社内規程等の実効性の確保を図るべく、研修や教育が重要となります(詳しくは後述)。


(2)従業員等の関係者のアカウントからの投稿

従業員に関しては、主に次頁の①、②の対策が挙げられます。業務委託先等の関係者に対しては、契約の秘密保持義務の条項等の見直しや、情報管理体制につき注意喚起等をすることなどを検討しましょう。


①情報管理体制・社内規程等の整備

営業秘密の流出等を防ぐための企業の情報管理体制の見直しは重要です。併せて、SNS利用ポリシー・ガイドライン、就業規則、秘密情報や貸与端末の管理に関する規程等の策定・見直しも検討します。就業規則の規定に基づき、従業員のSNS利用の合理的な制限や、情報管理につき誓約書を得ることも検討に値します。


ただし、従業員の個人アカウントでの投稿という私生活上の行為の制限は、プライバシー権侵害となり得るので、これらの規程や誓約書の整備・見直し等に関しては、慎重な検討が必要です。


企業批判等の投稿の根本原因になり得る問題自体を早期に解決するために、内部通報制度の充実も重要です。


また、就業規則の規定に基づき、貸与端末のモニタリング等をすることも考えられます。ただし、モニタリングが権利濫用としてプライバシー権侵害等となる可能性もあるので注意しましょう。


②研修・教育

アルバイトを含む従業員に対し、定期的な研修・教育を行うことが重要です。弁護士等の専門家を講師に招き、ケーススタディ型にすることが有用でしょう。


また、SNSの特徴(限定公開でも拡散されやすい、投稿者を特定されやすい、情報が残るおそれが高い点等)を従業員に説明し、リスクの大きさ等を認識してもらうことも肝要です。


(3)顧客その他第三者のアカウントからの投稿

クレーム投稿等の原因になり得る問題自体が発生しないよう、日頃より顧客対応を適切に行い、内部通報制度や従業員の教育等を充実させることが重要です。

2.炎上した場合の一般的な対応策


(1)公式アカウントまたは従業員の個人アカウントの投稿の炎上

①従業員への対応

当該炎上により企業の秩序等が害されたとき、まずは情報・証拠を収集し、事実関係を調査・検討します。そのうえで、調査結果を踏まえて、投稿した従業員に対する懲戒処分または指導を検討します。


特に、企業外非行行為等については懲戒権の濫用となりやすく、事案に応じた慎重な検討が必要です。従業員の違法な投稿により企業に損害が発生している場合は、事情に応じて損害賠償・求償の請求を検討します。ただし、請求し得る額は、信義則上相当と認められる限度で制限されると考えられます。よほど悪質な場合は、刑事告訴も視野に入ります。


とはいえ、企業の従業員に対する指導が不十分であったとされる可能性もあり、基本的には、責任追及よりも、再発防止策の検討に重点を置くことが多くなるでしょう。


②対外的な対応

公式SNSアカウントの投稿に違法な権利侵害があれば、原則として企業は被害者に対して責任を負うと考えられます。従業員の個人アカウントの投稿についても、企業が責任を負う場合があります。被害者に対する責任が企業に生じ得る場合、損害賠償の交渉などの被害者対応を検討します。


また、事案に応じて、謝罪、経緯、対応策、再発防止策等に関して、早期に公表すること等も検討します。その内容次第では、さらに炎上する可能性があり、ケースに応じた配慮が必要です。


なお、場合によっては、行政処分や刑事罰等の対象になり、行政対応等も必要になることがあります。


(2)顧客その他第三者による投稿の炎上

まずは情報・証拠を収集し、事実関係を調査・検討します。その結果を踏まえ、本人またはSNSサービス提供者に投稿の削除要請を行うかを検討します。ただし、相手方を刺激して、さらに炎上する可能性もあるので留意が必要です。


また、投稿の内容や影響等によっては、相手方を特定して損害賠償請求をするために、発信者情報開示請求を行うことも検討します。投稿が悪質な場合は、刑事告訴も検討対象となります。



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