Netpress 第2153号 2023年10月開始! インボイス制度で企業に求められる対応

Point
1.2023年10月1日より、消費税の「インボイス制度」(適格請求書等保存方式)が導入されます。
2.社内各部署で正しい知識を共有し、役割分担を決めて、制度導入に向けて準備を進めましょう。


税理士法人日野総研
代表社員・税理士 高井 大輔


現行の消費税の仕入税額控除は、軽減税率(8%)の適用対象となる仕入れなのか、標準税率(10%)の適用対象となる仕入れなのかの区分を明確にするための記載事項を追加した帳簿と請求書等の保存が要件とされています。これを「区分記載請求書等保存方式」といいます。


この区分記載請求書等保存方式に代わって、2023年10月1日より、「インボイス制度」(適格請求書等保存方式)が導入されます。

1.インボイス制度とは

インボイス制度とは、ひとことで言うと、「仕入税額控除を取るための書類の保存方式」のことです。とはいえ、「仕入税額控除を取る」ということが何を意味しているのかがわからないと、どういうことかピンと来ないでしょう。


「仕入税額控除を取る」とは、消費税の納税額を計算する際、納める消費税額から、支払いにかかった消費税額を差し引くことをいいます。


言い換えると、仕入税額控除が取れないと、それだけ納める消費税が多くなってしまうということです。


ただし、これは極端な言い方で、必ずしも正確な表現ではありません。あくまでもインボイス制度の理解を促すために、一般的かつ原則的なケースを前提として説明しています。


ともかく、ここでは、インボイス(適格請求書)を発行してもらわないと仕入税額控除が取れず、消費税の納税額が増える可能性が出てくる、ということを理解していただければと思います。

2.どのような影響・問題が生じるか

インボイスがないと、消費税の納税額が増えてしまう可能性があるわけですから、自社が売る側であるか、買う側であるかによって、次のような立場になります。


・自社が売る側 → 「インボイスをください」と言われる立場
・自社が買う側 → 「インボイスをください」と言わなければならない立場


そのため、売る側としては、インボイスの発行が認められる事業者として登録し、インボイスの記載要件を満たした請求書や領収書を発行しなければなりません。


一方、買う側としては、現在の仕入先や外注先がインボイスを発行できるのか否かが問題となります。発行できなければ、自社の消費税の納税額に影響が及ぶ可能性があります。

3.企業に求められる対応


(1)売る側に求められる対応

売る側の対応としては、適格請求書発行事業者への登録とインボイスの発行準備が必要になります。


①適格請求書発行事業者への登録

自社の納税地の所轄税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出して、インボイスを交付できる事業者として登録を受ける必要があります。適格請求書発行事業者への登録は、すでに2021年10月1日から受付が開始されています。


ここでポイントとなるのが、免税事業者は、適格請求書発行事業者の登録申請ができないということです。自らが消費税の課税事業者でなければ、適格請求書発行事業者にはなれません。


②インボイスの発行準備

適格請求書発行事業者は、取引先から要求された場合には、インボイスを交付する義務があります。インボイスと認められるためには、適格請求書発行事業者として認められた登録番号や、消費税率ごとの本体価格と消費税額の表示など、記載しなければならない事項があります。


請求書や領収書は、普段はシステム等で発行していることが想定されますが、そういった発行システムをインボイスが発行できるように改定・更新する必要があります。


(2)買う側に求められる対応

買う側の対応としては、現在の仕入先や外注先がインボイスを発行できるのかを確認する必要があります。


これについては、仕入先や外注先が免税事業者であるか否かがポイントとなります。上記のとおり、免税事業者は、適格請求書発行事業者になることができないからです。


普段から消費税を納税しているような事業者であれば、申請により適格請求書発行事業者になることができます。しかし、消費税の課税事業者ではない、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者は、まず消費税の課税事業者にならなければ、インボイスを発行することができません。


つまり、フリーランスや1人親方などの個人事業主を外注先としている場合や、個人の地主から駐車場を借りている場合などに影響を受けることが想定されます。


いま現在の契約にもよりますが、これまで取引価格の10%ほどの消費税の仕入税額控除が取れていたのに、2023年10月1日以降は取れないとなると、金額的な影響は小さくないと思われます。


インボイスを発行できる先に容易に代えられればよいのですが、現在の外注先のフリーランスなどが自社のビジネスに欠かせないという企業もあるでしょう。


そのような場合には、簡易課税を選択したうえで消費税の課税事業者に移行し、適格請求書発行事業者になるといった方法もあります。外注先のフリーランスなどにとっても、消費税分を値下げすることに比べれば、それほど大きな負担とはならないでしょう。


そうした正しい知識を外注先のフリーランスなどに伝えて、対応を促すことも必要になると思われます。


4.最後に

インボイスの導入時期は2023年10月1日ですから、まだ1年以上先ではあります。しかし、インボイスを発行するための社内準備や、取引先等に対する対外的な確認や対応準備など、やるべきことは少なくありません。営業や購買、総務など、関係する部署も多岐にわたります。


そうしたことを考えると、決して余裕のあるスケジュールとはいえません。すべての部署が網羅的に正しい知識を共有し、どの部署が何に対応するのかを決定し、来たる2023年10月1日のインボイス導入に向けて、一丸となって対応することが重要になるでしょう。



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