Netpress 第2147号 DXの準備は大丈夫ですか? データ活用これがはじめの一歩!
1.これからは、データを活用できるかどうかが、企業が生き残るための重要な鍵となってきます。
2.「とりあえずデータを見てから考える」は、データ活用でよくある失敗例です。「目的」を明確化しましょう。
3.データから仮説を立てる方法として、「空雨傘」フレームワークが効果的です。
さくら情報システム株式会社
技術開発部 イノベーショングループ
大谷 隼
1.データ活用の必要性
近年、あらゆる場面で「DX」(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を見かけるようになりました。
経済産業省のDXの定義のなかには、「データとデジタル技術を活用して、ビジネスを変革すること」と記載されており、DXを行うためには、データ活用が必須であるといわれています。
クラウドサービスやモバイル端末、IoT等の利用が増加しており、意識せずとも大量のデータを収集・蓄積することが可能になりました。これらのデータを活用することによって、正確かつ素早い現状把握と未来予測を行い、経営判断や施策に反映させることができるかどうかが、企業が生き残るための重要な鍵になってきます。
しかし、実際にデータ活用をしたいと考えていても、第一歩をどのように踏み出していけばよいかわからない、という方は多いのではないでしょうか。
以下では、そのような方に向けて、データ活用の進め方を解説していきます。
2.データ活用の進め方
「いますぐデータ活用に取り組みたい!」と考えて、ついついやってしまいがちなのが、「データを見てから活用方法を考える」ことです。
目的が明確ではないままにデータを見て考えてしまうと、いろいろな気づきがあっても、本当に成果に結びつくかどうかがわからないため、無駄な時間を費やして失敗してしまいます。
では、どのようにデータ活用を進めていけばよいのでしょうか。私がおすすめするのは、次の順序で行う方法です。
①目的の明確化
最初に、データ活用を行う「目的」を明確化します。つまり、データ活用を行うビジネス要求や課題をハッキリさせるということです。
データ活用を行う目的としては、「売上を伸ばしたいが、余地はあるのか」「新規顧客を開拓したいが、どのセグメントに訴求すればよいか」「高い作業コストを削減したいが、原因がどこかわからない」など、さまざまなものが考えられます。
目的を明確化することにより、どのようなデータを見ればよいのか、どのような目線で分析すればよいのかで迷うことが少なくなります。
②問題の特定
目的を明確化した後は、問題を特定します。問題を特定するためには、目的に関係するビジネス構造を可視化して理解する必要があります。
たとえば、チケット販売を運営する企業で、「売上を伸ばしたいが、余地はあるのか」という目的がある場合、ビジネス構造を次のように可視化することができます。
この構造を見ていくと、売上を伸ばすためには、「満員率」を向上させることが有効であると考えられます。
このように、ビジネス構造を可視化することで、解決すべき問題を特定することができます。
③仮説検証
問題を特定した後は、解決策を考えるために、データから仮説を立てます。
データから仮説を立てる方法として、「空雨傘」フレームワークがあります。このフレームワークでは、「(1)事実を → (2)解釈して → (3)対策を立てる」という順序で仮説を考えることができます。
〈「空雨傘」フレームワークで考える順序〉
(1) 空(事実):空を見ると雲が見える
(2) 雨(解釈):雨が降ってきそうだな
(3) 傘(対策):傘を持って行こう
たとえば、来店者数のデータを見て、「6月だけ来店者数が落ち込んでいる」ということがわかる場合、次の順序で仮説を立てることができます。
(1) 空(事実):「6月の来店者数が落ち込んでいる」
(2) 雨(解釈):「梅雨で客足が遠のいたのではないか」
(3) 傘(対策):「梅雨時期に使えるクーポンを発行すると、6月の来店者数が増加する」
仮説を立てた後は、検証していきます。検証するにあたっては、仮説の効果を測定するための数値を、事前に設定する必要があります。
上記の例の場合なら、「6月の来店者数」を効果測定の数値として設定しており、梅雨時期に使えるクーポンを発行することで、この数値が増加したかを検証します。
このように、いくつかの仮説を立て、目的に照らし合わせて効果見込みが高そうなものから実業務で検証していきますが、仮説検証が1回でうまくいくことは少ないでしょう。何度も仮説検証を繰り返すことで、目的達成に効果的な対策を発見することができます。
3.データ活用の先にDXが存在する
仮説検証を繰り返していくと、必ず「いまの業務プロセス自体を変えたほうがよいのではないか」という仮説が出てきます。その仮説検証がよい結果をもたらせば、これがまさに「データ活用からビジネスの変革につながったDXの姿」です。
今回、紹介したデータ活用の進め方を試してみることが、DX実現のはじめの一歩になると確信しています。
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