Netpress 第2141号 使用書式などに注意! 36協定の届出で留意すべきこと
1.36協定届の様式が変更されるとともに、協定の内容により36協定届の様式が異なります
2.適用猶予事業・業務において適用猶予を活用する場合は、36協定届の様式が異なります。
社会保険労務士法人NACマネジメント研究所
特定社会保険労務士・中小企業診断士
小林 弘和
新年度に向けて、年度ごとに手続が必要な書類について、作成・届出の準備を行う時期となりました。
多くの会社で作成・届出が必要になるものとして、36協定(時間外労働・休日労働に関する労使協定)が挙げられます。36協定については、ここのところ協定届の様式の変更が相次いで行われていることから、正しい書式で届出をするよう留意する必要があります。
以下では、36協定の届出における留意点や実務上のポイントを解説します。
1.36協定届の様式変更
2019年4月1日から労働基準法が改正され、時間外労働の上限規制が法律に明記されたことなどから、36協定届の様式も変更されました。
ただし、中小企業については、時間外労働の上限規制の適用が1年間猶予されていたため、2020年4月1日以降の期間を対象とする36協定から、新しい協定届(以下、「新様式」といいます)の書式による届出となっています。
2.新様式における留意点
新様式の36協定届は、労働時間の上限について「原則どおりの上限とする場合」と「特別条項を適用する場合」によって、届出書の様式が異なります。
(1)原則どおりの上限とする場合
時間外労働の上限は、原則として次のとおりです。
1か月45時間・1年360時間 |
1年単位の変形労働時間制を適用し、対象期間が3か月を超える場合には、1か月42時間・1年320時間 |
原則どおりの時間外労働の上限にとどめる場合は、「様式第9号」により届出を行います。
(2)特別条項を適用する場合
原則の限度時間を超えて時間外労働・休日労働を行わせることがある場合には、「特別条項」を適用することになります。この場合は、「様式第9号の2」により届出を行います。
様式第9号の2による場合には、原則どおりの上限を記載する書式と、特別条項の内容を記載する書式の2枚の書式が必要となります。
3.適用猶予事業・職種の場合の留意点
建設業は「事業」として、自動車運転業務や医師は「職種」として、2024年3月31日までの間は、労働時間の上限規制の適用が猶予されています。この猶予措置を適用する場合には、「様式第9号の4」による届出が必要です。
建設業は「事業」として適用猶予となっているため、会社全体として次のようになります。
①猶予措置を適用しない場合 | 「様式第9号」または「様式第9号の2」により届出 |
②猶予措置を適用する場合 | 「様式第9号の4」により届出 |
運送業のように、運転手が「職種」で猶予措置の対象となる場合は、次のとおりです。
①運転手についても猶予措置を適用しない場合 | 従業員全員について、「様式第9号」または「様式第9号の2」により届出 |
②運転手については猶予措置を適用する場合 | ・運転手以外は「様式第9号」または「様式第9号の2」により届出 ・運転手については「様式第9号の4」により届出 |
4.2021年4月以降の36協定届の変更点
2021年4月以降、新様式の36協定届に下記の変更が加えられています。
(1)36協定の届出における押印・署名の廃止
労働基準監督署に届け出る36協定届について、使用者の押印と署名が不要となっています。ただし、記名は必要であることに留意してください。
また、36協定と36協定届を兼ねている場合(別途、「36協定書」を作成しないで、36協定届の書式で協定書を兼ねて届出をする場合)には、使用者の署名または記名・押印が必要となります。
(2)36協定の協定当事者に関するチェックボックスの新設
36協定の適正な締結に向けて、労働者代表についてのチェックボックスが新設されています。このチェックボックスの内容は、次の2点です。
① | 「協定の当事者である労働組合が事業場の全ての労働者の過半数で組織する労働組合である又は協定の当事者である労働者の過半数を代表する者が事業場の全ての労働者の過半数を代表する者であること」 |
② | 「労働者の過半数を代表する者が、労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でなく、かつ、同法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であって使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」 |
このようにチェックボックスの内容は、協定当事者が労働者の過半数代表として適格な者であることを確認するものとなっています。協定当事者である労働者の過半数代表者が適格な者でない場合には、36協定そのものが無効なものとなってしまうので、選任方法には特に留意する必要があります。
労働基準監督署の臨検調査が行われた場合、締結されている36協定の内容に基づいて「36協定の限度を超える時間外労働を行わせているか否か」の判断がなされ、超過している場合は法違反となってしまいます。
そのようなことにならないよう、会社の実態に即した正しい書式で届出を行うようにしてください。
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