Netpress 第2136号 【2022年新春】新年スピーチ事例 〜 わが国経済の回顧と新年の展望 〜
株式会社日本総合研究所
調査部 研究員 内村 佳奈子
あけましておめでとうございます。新たな年の初めを迎えて、みなさまには健やかにお過ごしのことと、お慶び申し上げます。昨年1年、それぞれの持ち場で業務に真摯に取り組んでいただきましたことに対し、心より感謝申し上げます。 ◆2021年の回顧 ―― 感染に左右された1年さて、2021年の日本経済を振り返りますと、みなさんもご存じのとおり、新型コロナウイルスへの感染に左右された1年となりました。 新型コロナの波が押し寄せるたびに、緊急事態宣言が繰り返し発令され、経済は閉塞感を強めました。飲食店や大型商業施設は、営業時間の短縮や休業を余儀なくされ、不要不急の外出が手控えられたことから、旅行をはじめレジャー関連の企業も大きな打撃を受けるなど、サービス業を中心に厳しい状況が続きました。 しかしながら、秋以降は景気回復の兆しが見え始めました。政府・自治体を中心に、医療関係者の多大なご尽力のもと、ワクチン接種が進み、感染者数が急減したことがその大きな理由です。 すべての緊急事態措置等が昨年9月末にようやく解除され、商業地や観光地には人出が戻りました。外食や旅行などを中心に、消費が持ち直しに転じています。 足元でも、企業と自治体が協力してワクチン接種証明書の活用が試行されるなど、感染予防と経済活動の両立に向けた取り組みが進められており、感染の第6波が来ても、極力かつての非常事態宣言下の状況に逆戻りしないよう、官民挙げての努力が続いています。 そして、昨年の大きなイベントとして思い出されるのが、東京オリンピック・パラリンピックでしょう。 史上初の原則無観客での開催となったことで、海外客の受け入れが見送られ、経済へのプラス面は限られましたが、コロナ禍の厳しい状況でも全力で挑戦する選手の姿に、多くの人が勇気づけられたのではないでしょうか。特に、スケートボードなどの新しい競技で若い選手の活躍が光ったことは、多くの人に日本の未来の明るさを感じさせるものでした。 また、その他のスポーツに関する話題としては、大リーグにおける大谷翔平選手の二刀流での大活躍も、新型コロナの閉塞感を吹き飛ばす明るいニュースであったと思います。 ◆新年の展望 ―― 新型コロナとの共存が続くなか、緩やかに回復新年の日本経済を展望しますと、昨年の年末近くに新たな変異株が発見されたように、新型コロナ感染への脅威が続く心配はありますが、景気は緩やかに回復するとみています。 まず、注目されるのは、個人消費、特にコロナ禍で落ち込んだサービス消費の回復力です。コロナの再流行に備えて、3度目のワクチン接種が進んでいますし、医療提供体制も強化されています。 こうした対策が講じられることで、緊急事態宣言の発令が避けられ、サービス消費は腰折れせずに回復していくとみています。政府の経済対策も消費の回復をサポートするでしょう。 さらに、政府の給付金を受けたことや、コロナ禍で消費機会が奪われた影響で、家計の貯蓄が積み上がっています。こうした 「コロナ貯蓄」も、徐々に消費に向かうとみられます。 企業の経済活動も前向きです。コロナ禍で課題となったデジタル化投資が今年は本格化するでしょう。人手不足に対応した省力化投資や、産業用ロボットや無人店舗の開発などが進められる見込みです。加えて、世界全体の景気も回復傾向を辿ると予想されるなか、日本でも機械関連の輸出や生産の増加が期待されます。 脱炭素に向けた取り組みも進んでいくでしょう。日本政府は、2050年までのカーボンニュートラルを宣言し、民間でも素材メーカーを中心に、今後、多額の環境関連投資が実行される見通しです。 脱炭素への取り組みは、世界経済が持続的に発展するために不可欠であることは言うまでもありません。企業も、この潮流をビジネスにつなげていく必要があります。 コロナ禍のなか、企業も多くの試練に直面しましたが、これを逆手にとって、オンラインビジネスの拡充や働き方改革など、自社の構造改革につなげた例も多くあります。2022年は、こうした企業努力が一層広がるとともに、成果が花開く年になることを祈念しています。 ◆新年の抱負 ―― 人の力で強い組織へさて、新型コロナの流行から、2年が経過しました。この間、働き方の多様化を含め、デジタルを活用した新たな生活様式の定着が進み、環境問題への人々の意識も高まっています。 このような経済・社会構造の大きな変化に対して、わたしたちは、変化をチャンスと捉え、挑戦し、そして成長を続けていくことが求められます。 今年は寅年です。寅と申しますと、戦国時代に「甲斐の虎」として畏れられた武田信玄が思い浮かびます。信玄の有名な言葉に、「人は城、人は石垣、人は堀」があります。 信玄は、他の武将が豪壮な城を建築するなか、小さな館に居を構え続けました。これには、まさに「人こそが城であり、石垣であり、堀である」との思想があったとされています。 企業も同じです。洗練された設備だけでは、企業は発展しません。いろいろな技術や知識を持った人が互いに結集することで、堅固な城となり、険しい石垣となり、深い堀となることができるのです。 また、相場の格言に「寅は千里を走る」というものがあり、寅年は経済や市場が大きく動く年回りとされます。日本経済が飛躍するためにも、先ほどの信玄の言葉のように、企業には多くの人々が活躍する場を作っていくことが求められているといえます。 コロナという見えない敵は、これからも、わたしたちの前に立ちはだかります。みなさんの力を結集して、この戦いに挑んでいきましょう。 最後になりましたが、本年がみなさんとご家族にとり、より佳き年となりますことを祈念いたしまして、わたくしの年頭の挨拶とさせていただきます。 |
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