一口メモ 最澄と東国

朝礼時の挨拶や、経営のヒントに――。日常の光景や歴史のエピソード、季節の話題等さまざまなトピックスを題材にまとめたミニコラムです。



最澄は東国との縁が深い人である。第二世天台座主の円澄、同じく三世の円仁、四世の安恵は皆、東国の人である。草創期の天台教団は東国出身の人材に支えられていたと言ってよい。


最澄の弟子の泰範が、最澄を裏切るような形で空海の弟子になってしまったことは、最澄と空海の確執を象徴するエピソードとして知られているが、これは泰範に限ったことではなく、草創期の天台教団では比叡山を去るものが少なくなかった。そんな折、門下の有能な弟子を最澄のもとに送り出してくれたのが、当時、上野国(群馬県)の浄法寺にあった道忠だった。


道忠はもと奈良にあって、「鑑真和上持戒第一の弟子」といわれた人物だった。若き日の最澄は天台の教えを独学で修得しようと、鑑真がもたらした天台経典を人を介して書写させてもらい、比叡山にこもって研究に没頭したという。もしかしたら道忠はその頃の最澄を知っていて、仏道を求める最澄の純粋さに心を打たれたのかもしれない。


今年は最澄没後1200年の大遠忌。年内に一度、比叡山をお参りしておくのもいいかもしれない。


◎「一口メモ」2021年12月号

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