Netpress 第2129号 2022年4月1日から義務化 中小企業のパワーハラスメント防止対策のポイント

Point
1.中小企業の事業主は、職場におけるパワーハラスメント(以下「パワハラ」といいます)を防止するために、雇用管理上講ずべき措置として、2022年4月1日から一定の措置を必ず講じなければなりません。
2.ここでは、パワハラ防止対策を講ずる際の留意点と、効果的な運営のポイントについて解説します。


弁護士法人北浜法律事務所
弁護士 清水 勇希


1.事業主が講ずべき措置とは

「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(以下「パワハラ防止法」といいます)により、中小企業にも、2022年4月1日から、パワハラ防止対策を講ずることが義務付けられます。


具体的には、中小企業の事業主は、以下の10項目のパワハラ防止対策を必ず講じなければなりません。



【事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発】

・「パワハラの内容」「パワハラを行ってはならない旨の方針」を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること

・パワハラの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
【相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備】

・相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること

・相談窓口担当者が、内容や状況に応じて適切に対応できるようにすること
・パワハラが現実に生じている場合だけではなく、発生のおそれがある場合や、パワハラに該当するか否かが微妙な場合であっても、広く相談に対応すること
【職場におけるパワハラへの事後の迅速かつ適切な対応】

・事実関係を迅速かつ正確に確認すること

・事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと

・事実関係の確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと

・再発防止に向けた措置を講ずること
【併せて講ずべき措置】

・相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知すること

・事業主に相談したこと、事実関係の確認に協力したこと、都道府県労働局の援助制度を利用したことを理由として、解雇その他不利益な取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

 


前頁に挙げた10項目のパワハラ防止対策を講ずべき義務に違反した場合には、行政処分の対象となります。具体的には、厚生労働大臣による助言、指導、勧告の対象となり、勧告にも従わない場合には、企業名が公表される可能性があります(パワハラ防止法33条)。


本稿では、パワハラ防止対策について解説していますが、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについても、同様の防止対策を講じることが義務付けられていますので、厚生労働省の下記サイトもあわせてご参照ください。


「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」



なお、本稿に含まれる意見は、あくまで筆者の個人的見解であって、筆者が現在所属する組織の見解ではないことを念のため申し添えます。

2.事業主が講ずべき措置の具体的内容

紙面のスペースの都合もあり、すべての項目について詳しく触れることはできません。


ここでは、「①、②、⑩(措置等の周知・啓発に関すること)」と「③、④、⑨(相談対応に関すること)」について、その留意点・効果的な運営のポイントを解説します。


●「①、②、⑩」について


①、②、⑩の取組例としては、まず、これらの事項について規定した「パワハラ防止規定」等の文書を作成し、当該文書で規定した事項を、社内報、社内ポスター、パンフレット、社内ホームページ等に記載し、従業員に周知・啓発することが考えられます。


社内報等については、作成するだけではなく、実際に全従業員に読んでもらえるような工夫を実施すると、より効果的でしょう。


たとえば、社内報等をもとにパワハラ研修、講習等を定期的に実施する、社内ホームページの該当ページへのアクセスログを取り、該当ページにアクセスしていない従業員に対して確認するよう促す、といった取組みを行うことが挙げられます。


●「③、④、⑨」について


③、④、⑨の取組例としては、まず、相談しやすい窓口担当者(外部の弁護士等を相談窓口とする企業もあります)を選定します。そのうえで、窓口担当者が適切に対応できるよう、対応マニュアル等をあらかじめ作成しておくことが考えられます。


また、実際にハラスメントが行われている場合のみならず、ハラスメントであることが疑われる場合等も含め、相談内容を幅広く受け付けることが効果的であると考えられます。


加えて、相談の方法についても、相談者のプライバシー等に配慮し、面談だけではなく、電話、メール等でも受け付け、相談者に配慮した窓口を設置し、このような相談者に配慮した窓口を設置していることを、社内報等で周知・啓発する必要があります。

3.最後に

以上のとおり、パワハラ防止法により、中小企業に対しても、2022年4月1日から、パワハラ防止対策を講ずることが義務付けられます。


パワハラ等に関して個別具体的な相談がある場合には、弁護士や社会保険労務士等の各専門家に個別にご相談いただくようお願いいたします。


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