Netpress 第2116号 「ハイブリッド型」も選択肢 人事制度の再構築を成功に導くポイント

Point
1.コロナショック、少子高齢化社会のなか、人事制度や戦略についても再構築する時期を迎えています。
2.特に兼務の多い中小・中堅企業においては、完全なジョブ型ではなく、階層・職種に応じてメンバーシップ型を併用するハイブリッド型の人事制度を検討するケースが増えています


株式会社タナベ経営
大阪HRコンサルティング本部
本部長 竹内 建一郎


人材ポートフォリオ(中長期的な人的資源の最適配分、組織づくりの判断基準)を定義し、「採用」「育成」「活躍」「定着」の4つをバランスよく取り入れた人事戦略の構築は、企業が持続的に成長していくための重要な経営戦略の一つといえます。


一方で、コロナショック、少子高齢化社会のなか、人事戦略は大きな変化の時を迎えています。このような環境下にあるからこそ、理念・ビジョン・企業風土・ブランド・採用競争力・評価・給与連動などの多面的要素を踏まえて、人事制度をデザインすることが強く求められています。


タナベ経営にも、既存の人事制度の見直し(再構築)を検討されている企業からのコンサルティングのご依頼が多く寄せられていますが、企業ごとに再構築する目的やきっかけは、さまざまです。


最近では、職務をベースとしたジョブ型人事制度、定年延長に伴う高年齢者向けの処遇の見直し、副業や短時間勤務などの働き方の多様化への対応といった大きな環境変化に直面し、これまでのメンバーシップ型をベースにした人事制度では対応しきれず、人事制度の見直しを実施している企業もあります。


また、数十年来、過去から人事制度の見直しをかけていないため、実態と合わなくなり、形骸化しているケースも多く見られます。


そうした状況を踏まえて、次のような相談を受けることが増えています。




人事制度の設計では、「中期ビジョンや事業戦略と連動した設計」という企業側の視点と、「社員の活躍を最大化させる」という社員側の視点を、ともに追及する必要があります。


また、人事制度の構築を考えるにあたり、最も重要で根幹となるものが「経営理念」であり、その経営理念のもとに人材マネジメントの仕組みの設計・運用・管理の方針として定められる「人事・労務ビジョン」の組み立ても必要になります。


企業の存在価値である経営理念を実現すべく、企業(組織)に求められる人材像を想定し、人事・労務ビジョンに則り、人を創ることで、企業の目指す事業戦略を支えることができるのです。


人事制度は、一般的に「等級制度」「評価制度」「賃金制度」(各企業により表現は異なる場合があります)から成り立ち、そのほかに退職金制度、ストックオプション制度、インセンティブ制度、人材育成制度、キャリアデベロップメントプログラムなど、多くの補完制度が存在します。


補完制度は、それぞれ「等級制度」「評価制度」「賃金制度」と連携して機能することから、人事制度としては、これら「等級制度」「評価制度」「賃金制度」を基幹制度と位置付けます。


人事制度構築の基本的な取り組みのステップは、以下のようになります。




これらの基本ステップにおける人事フレーム設計の検討のなかで、複線型人事制度やハイブリッド型人事制度について検討する企業も増えています。


メンバーシップ型人事、ジョブ型人事、ハイブリッド型人事の特徴について、以下に紹介します。


新卒一括採用が中心の日本では、メンバーシップ型が主流となっています。メンバーシップ型では、知識・経験がない状態から潜在能力に期待して採用し、社内教育を行う前後で配属先が決まります。その後、配属先ではOJTにより育成され、職能レベルを高めていくなかで人材配置を繰り返し、身に付けたスキルに応じて、選ばれし人材が管理職を命じられ、評価されることになります。


一方、ジョブ型では、新卒か中途かを問わず、入社後は保有するスキルに応じた職務を担い、処遇されます。その前提として、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)で、役割や責任、権限、目標などを明確に整理する必要があります。


ジョブ型には、企業にとって生産性向上につながる働き方を促進でき、社員も責任の範囲が明確で業務遂行がしやすいというメリットがあります。その反面、求めるスキルを保有する人材の確保が困難になる、スキル向上を求めて人材が流動していくといったデメリットがあります。


特に兼務の多い中小・中堅企業においては、完全なジョブ型ではなく、階層・職種に応じてメンバーシップ型を併用するハイブリッド型で検討することが増えています。



最後になりますが、タナベ経営では、人事制度は何よりも運用が大切であり、「制度構築が20%」「制度運用が80%」と申し上げています。そのため、制度の構築に関することは当然として、運用段階でしっかりと会社に受け入れられるようにイメージした取り組みも非常に大切になります。



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