Netpress 第2513号 中小企業が今やるべきこと 利益を生み続けるための“高業績体制”への転換

Point
1.高業績企業に共通する「人への投資」「人材成長の仕組み」「業績管理の仕組み」という3つの特徴を軸に、体制転換の重要性を解説します。
2.特に業績管理の中核である予算管理の役割に触れながら、「POST経営」の視点から持続的に成果を生み出す組織づくりのポイントを提示します。


御堂筋税理士法人
御堂筋パートナーズ株式会社
社員税理士・取締役
小笠原 知世


 人件費の上昇や物価高、採用難など、中小企業を取り巻く経営環境は大きく変化しています。このまま従来のやり方を続けていては、利益を確保し続けることが難しい時代に入りました。


 こうしたなかで求められているのは、「やり方の改善」ではなく、「体制そのものの転換」です。

1.高業績企業に共通する3つの特徴

 私たちが中小企業のご支援を行うなかで見えてきた成果を出し続けている企業の共通点は、次の3つです。


・Point①【人への投資を惜しまない】:高業績企業は、良い人材に適正な給与を支払うだけでなく、採用や育成に継続的に投資しています。「お金がないから投資できない」のではなく、「お金がないからこそ人に投資する」という発想が特徴です。最大の投資対象は“人”であるという考え方が、企業の成長を支えています。


・Point②【人材の採用・成長を仕組み化している】:場当たり的ではなく、人材を育てるための仕組みや機能を持っています。個人任せではなく、組織として人を育てていく体制が整っています。


・Point③【業績を管理する仕組みがある】:単なる数字の把握ではなく、数値を通じて現場の行動と経営判断がつながっています。従業員が“経営している感覚”を持てる状態が重要です。

2.業績を左右する「予算管理」の役割

 業績管理の中核となるのが予算管理です。多くの企業では予算は「作るもの」になりがちですが、本来は「経営の意思を現場の行動につなげるもの」です。売上であれば、「誰が・どの顧客に・何を・どれだけ販売するのか」といった具体的な行動まで分解されていることが重要です。たとえば、売上目標が月1,000万円なら、それを担当者別・顧客別に分解し、さらに訪問件数や提案数といった具体的な行動に落とし込むことで、初めて現場で実行可能な計画となります。


 また、予算と実績の差異を確認するだけでなく、「なぜ差が生まれたのか」「次にどう打ち手を変えるのか」といった意思決定に活用されているかどうかが、成果を分けます。


 さらに重要なのは、予算を「作って終わり」にしないことです。月次での振り返りを通じて、実績との差異を確認し、その要因を分析したうえで、次のアクションにつなげていく必要があります。具体的には、売上が未達となった場合でも、「なぜ達成できなかったのか」を担当者別・顧客別に分解して考えることで、改善の打ち手が明確になります。逆に、計画を上回った場合も、その要因を把握することで再現性のある成功パターンとして活用することができます。


 このように、予算を起点として「振り返り→改善→実行」のサイクルを回していくことが、継続的に成果を生み出すためには不可欠です。

3.“人を軸にした経営”への転換

 高業績企業に共通しているのは、「人を軸にしている」という点です。


 労働生産性や分配率といった指標だけではなく、従業員一人ひとりが「価値を生み出している」という実感を持てる状態が重要です。そのためには、会社の目標と個人の目標がつながっている必要があります。


 たとえば、会社としての売上目標や利益計画が、各部門や個人の役割にまで具体的に落とし込まれているかどうかが重要です。自分の仕事がどのように会社の成果につながっているのかが見えることで、主体的な行動が生まれます。


 また、適正な評価やフィードバックを通じて、「頑張れば報われる」「成長できる」という実感を持てる環境づくりも欠かせません。こうした積み重ねが、個人の力を組織の成果へと転換し、結果として高業績体制の実現につながります。


 さらに重要なのは、こうした取り組みを一部の人だけで終わらせないことです。経営者や幹部だけでなく、現場のメンバー一人ひとりが自分の役割を理解し、主体的に関わることで、初めて組織としての力が発揮されます。


 そのためには、目標の共有や日常的なコミュニケーションを通じて、「自分たちで会社を良くしていく」という意識を育てていくことが重要です。

4.高業績体制をつくる「POST経営」とは

 高業績体制を構築するための考え方が「POST経営」です。POSTという言葉には「支柱」という意味があります。企業経営においても、会社を持続的に成長させていくためには、土台となる“支柱”が必要です。


 POST経営では、経営計画(P)・組織(O)・組織風土(S)・人材(T)の4つをその支柱と捉えています。


P(Planned Management)経営計画を中心としたマネジメント(経営計画、実行管理、業績数値資料、問題解決と価値創造の会議)
O(Organizational Structure)組織体制とルールの整備(組織体制、コミュニケーション・意思決定ルール)
S(Spirit)組織風土の構築(人事制度、評価、リーダーシップ、チームビルディング、動機づけ)
T(Training)人材の育成(人材採用、人材育成制度、OJT、教育)


 この4つをバランスよく整えることで、初めて組織として成果を出し続けることが可能になります。


 たとえば、経営計画(P)を現場の行動につなげる役割を担うのが予算管理であり、日々の業績管理の仕組みです。さらに、組織(O)・風土(S)・人材(T)が連動することで、“再現性のある成果”が生まれます。


 重要なのは、これら4つの支柱はそれぞれ独立しているものではなく、相互に影響し合っているという点です。たとえば、人材育成(T)を強化しても、それを活かす組織体制(O)が整っていなければ成果にはつながりません。また、組織風土(S)が伴わなければ、制度や仕組みも形骸化してしまいます。


 このように、全体を一つのシステムとして捉え、バランスよく整えていくことが、高業績体制の構築には不可欠です。



 本取り組みは、総務部門に限らず、経営者や幹部、各部門のリーダーが一体となって推進していくことが重要です。数値情報の管理にとどまらず、組織や人材に関わる仕組みづくりを通じて経営を前に進めていく役割が求められます。


 これからの時代においては、“頑張り”に依存する経営から、“仕組みで成果を出す”経営への転換が不可欠です。その中心にあるのが、人を軸に据えた高業績体制の構築です。


 そして、その体制は一朝一夕でできるものではなく、日々の積み重ねによって形づくられていきます。だからこそ、自社の現状を見つめ直し、できるところから取り組んでいくことが、持続的な成長への第一歩となります。



◎協力/日本実業出版社

日本実業出版社のウェブサイトはこちらhttps://www.njg.co.jp/



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