Netpress 第2101号 改正育児・介護休業法が公布 男性の育児参加を促す「出生時育児休業」等に注目!

Point
1.少子化や労働力人口の減少がますます深刻化するなか、育児をめぐる環境の改善が急務となっています。
2.育児休業の取得促進等を目的とする法改正が行われましたので、その内容と留意点をチェックします。


特定社会保険労務士
米澤 裕美


改正育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律)が2021年6月9日に公布され、2022年4月より段階的に施行されます。


以下では、まず現行の産休・育休制度がどのようになっているかを確認したうえで、今回の改正のポイントを解説していきます。

1.現行の産休・育休制度

(1)産前・産後休業

女性は、原則として、出産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)の「産前休業」と、出産後8週間の「産後休業」を取得することができます。


(2)育児休業

育児休業は、原則として、子ども1人につき1回、子どもが1歳になるまでの間で希望する期間、男女を問わずに取得することができます。


ただし、保育所等に入れないなどの一定の要件を満たす場合は、子どもが1歳6か月(最長で2歳)になるまで延長して取得することが可能です。


(3)パパ休暇

男性も育児休業を取得する場合は、「パパ休暇」という特例があります。


育児休業の取得は、原則として、子ども1人につき1回ですが、子の出生後8週間以内に男性が育児休業を開始し、かつ、終了した場合には、特別な事情がなくても再度の育児休業の取得が可能となります。


(4)パパ・ママ育休プラス

両親がともに育児休業を取得する場合は、子どもが1歳2か月に達するまでの間、育児休業を取得できる「パパ・ママ育休プラス」制度もあります。両親のそれぞれの取得可能期間は、1年間です(女性の場合は、出生日以降の産前・産後休業期間を含みます)。

2.改正育児・介護休業法のポイント

(1)「出生時育児休業」の創設

男性の育児参加(育児休業の取得)を促すため、「出生時育児休業」制度が創設されます。妻の産後休業中に、夫も4週間までの休業を取得できるようになるため、「男性版産休」とも呼ばれています。


出生時育児休業の特徴は、次のとおりです。




現在の「原則ルール」と、夫が休業する場合の「パパ休暇」「パパ・ママ育休プラス」に加えて、新たに「出生時育児休業」が加わりますので、各制度を整理しておきましょう。


なお、休業期間中は、休業開始時賃金日額に出生時育児休業期間の日数を乗じて得た額の100分の67に相当する額の「出生時育児休業給付金」が支給されることになります。


(2)育児休業の雇用環境整備/個別の制度周知・意向確認の義務化

育児休業の申出・取得を円滑にするための雇用環境の整備(研修、相談窓口の設置など)に関する措置が義務付けられます。また、妊娠・出産(本人または配偶者)の申出をした労働者に対して、事業主から個別の制度周知と休業の取得意向の確認のための措置を講じることが義務付けられます。


育児休業については、家庭の事情等によって取得の期間やパターンがさまざまです。社内への制度周知については、社内イントラネット等へ概要資料を掲載する形とし、子どもを授かった従業員に対しては、本人の希望を聞きながら個別に説明するとよいでしょう。


(3)育児休業の分割取得

新設される「出生時育児休業」を除く育児休業について、分割して2回まで取得することが可能になります。


(4)育児休業の取得状況の公表の義務化

常時雇用する労働者数が1,000人超の事業主については、自社の育児休業の取得状況を公表することが義務付けられます。


(5)有期雇用労働者の育児・介護休業の取得要件の緩和

有期雇用労働者の育児休業・介護休業の取得要件のうち、「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件が廃止されます。


ただし、労使協定を締結した場合には、無期雇用労働者と同様に、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外することができます。


■改正項目と施行日の一覧
改正項目
施行日
(1)「出生時育児休業」の創設
2022年秋頃(公布日から1年6か月を超えない範囲内で、政令で定める日)
(2)育児休業の雇用環境整備/個別の制度周知・意向確認の義務化
2022年4月1日
(3)育児休業の分割取得
2022年秋頃(同上)
(4)育児休業の取得状況の公表の義務化
2023年4月1日
(5)有期雇用労働者の育児・介護休業の取得要件の緩和
2022年4月1日



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