Netpress 第2497号 企業として押さえておきたい 製造物責任の基礎と実務対応について

Point
1.製造物責任が問題となる事案においては、迅速な判断・対応が求められます。
2.製品安全法4法(消費生活用製品安全法、電気用品安全法、ガス事業法、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律)について、近年の取引実態に合わせた改正が行われました。


岡村綜合法律事務所
弁護士 澤田 孝悠

1.製造物責任(Product Liability)とは

 製造物責任法第3条では、製造業者等が、引き渡した製造物の欠陥により他人の生命、身体または財産を侵害したときに、損害賠償責任を負うことを定めています。一般に製造物責任というと、この製造物責任法上の損害賠償責任を指すことが多いですが、後述するリコール等の実施に関する責任を含む広い意味で用いられることもあります。


 なお、製造物の欠陥が問題となる事案では、製造物責任法だけでなく、民法上の債務不履行責任(民法第415条)や不法行為責任(同法第709条)に基づき、損害賠償請求されることもあります。

2.製造物責任が問題となる製造物の「欠陥」とは

 製造物責任法第2条第2項では、「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」を「欠陥」と定義しています。欠陥には、製造や設計の過程で生じた問題(製造・設計上の欠陥)のほかに、適切な情報を提供しなかったことで生じた問題(指示・警告上の欠陥)も含まれると解されています。たとえば、医薬品の場合には、その添付文書による情報提供が不十分であったことが欠陥であるとして争われることがあります。

3.製品に不具合があることが発覚した場合の実務対応

(1) リコールの実施について

 一般に、不具合が確認された製品を市場や流通先から回収すること、また、それに付随する措置を講じることをリコールといいます。


 リコールは、一定の場合には、法律上の要求に基づいて実施されます。たとえば、消費生活用製品安全法(以下「消安法」といいます)第39条では、重大製品事故が発生した等事態が深刻なケースにおいて、主務大臣が、消費生活用製品の製造業者や輸入業者に対し、当該製品の回収を図ることを命ずることができるとされています。食品については食品衛生法、医薬品については医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律というように、それぞれの法律に製品の安全性確保や危害拡大を防止するための措置に関する規定が設けられています。


 もっとも、実務上は、法律による必要性が生じるよりも前に、企業の自主的判断によってリコールが実施されることが少なくありません。また、法律でリコールの実施が求められる事業者以外の者が、諸般の事情(たとえば、製造業者が既に廃業しているなど)を踏まえてリコールを実施することもあります。


(2) どのような観点からリコール実施の要否を判断すればよいか

ア 前記(1)のとおり、必ずしも製品の製造業者だけがリコールを実施するわけではなく、立場によって考慮すべき事項は異なりますが、以下では、製造業者がリコール実施を判断する場面を念頭に説明します。


イ まず、リコール実施の要否は迅速に判断する必要があります。これまで製造業者の初動遅れが被害の拡大を招き、企業の社会的信用を大きく損なったケースは多数存在します。


ウ リコール実施の要否を判断するうえでは、経済産業省が消費生活用製品について取りまとめた「消費生活用製品のリコールハンドブック」(以下「リコールハンドブック」といいます)が参考になります。リコールハンドブックでは、企業がリコール実施を意思決定するにあたっての判断要素が次のように類型化されています。

  ① 被害の質・重大さについて

    人への被害の有無・可能性があるか、軽微な物損に留まるか

  ② 事故(被害)の性格について

    多発・拡大の可能性があるか、単品不良に留まるか

  ③ 事故原因との関係について

    事故原因が製品欠陥、消費者の誤使用、修理・設置工事ミス、改造による事故または経年劣化によるものか


エ 事故の発生頻度や被害の程度を正確に予測するためには、事故原因を具体的に特定する必要があります。原因分析に時間を要する場合には、新規の製造・販売の停止など、暫定措置の実施も検討しなければなりません。


オ また、リコールを実施した場合に生じる費用や損失を見積もること、そして、そのうちどの程度を自社が加入する製造物責任(PL)保険で賄うことができるかを確認することも重要です。一般に、リコールで生じる費用や損失としては、次のものが挙げられます。

  ① 原因分析費用

  ② 修理・代替品等の準備・製作費用

  ③ 情報の収集・提供、注意喚起に要する費用

  ④ 製品の回収、交換等の作業に要する費用

  ⑤ 製造・販売停止による逸失利益


カ また、継続企業としては、以上のような短期的なコストだけでなく、製品の不具合や事故が拡大した場合に生じる将来のレピュテーションリスクも十分考慮する必要があります。


(3) 監督官庁等への報告

 製造物の欠陥により一定の事故が発生した場合、製造業者らには、監督官庁への報告が求められます。たとえば、消費生活用製品について死亡事故や火災などの重大製品事故があった場合、その発生を知った製造業者や輸入業者は、その詳細を内閣総理大臣に報告しなければなりません(消安法第35条第1項)。


 また、消費生活用製品の事故のうち、重大製品事故に当たらないような軽微な事故であっても、製造業者らには、経済産業省の通達により、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)への報告が要請されています。

4. 最新の法改正について

 2024年6月に消安法をはじめとする製品安全法4法が改正され、2025年12月25日から施行されています。


 近年のインターネット取引では、輸入事業者を介さず、海外事業者から製品を直接購入する機会が多くなっている一方で、従来の法律では、海外事業者は法規制の対象外となっていました。今回の改正では、そのような海外事業者が新たに規制対象とされたほか、オンラインモールなどの取引デジタルプラットフォームを提供する事業者の責務に関する規定等が創設されました。


 また、消安法では、子供用製品の安全確保を充実化させるための新たな規制も創設されています。



◎協力/日本実業出版社

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