Netpress 第2486号 発注側も注意! 2025年中に施行予定の建設業法等の改正について
1.2024年6月7日、建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(公共工事適正化促進法)の改正法が国会で可決・成立し、2025年中に施行が予定されています。
2.改正により、労働者の処遇改善、資材高騰による労務費へのしわ寄せ防止、働き方改革と生産性の向上の3つの観点から、新たな規制内容が盛り込まれました。
3.改正法のもとでは、建設業を営む経営者の皆さんは、特に、新たな規制内容を理解したうえで、労務費が適正に設定されているかを確認していただくとともに、建設業者より請負代金変更の申出があった場合には、注文者としてはかかる申出に対して誠実に応じる必要があります。
1.建設業法等に関する改正の概要
建設業は、社会資本の整備・管理の担い手であるものの、就労条件等を背景に就業者の減少が続いており、担い手の確保に向けた取り組みを強化することが急務となっています。
また、昨今の急激な資材価格高騰を受けて職場技能者の賃金の原資となる労務費等がしわ寄せを受けないよう、高騰分の適切な価格転嫁も求められています。
これらの状況を踏まえ、以下の3本を柱として、今般、建設業法等に関して改正が行われました。
| ① 労働者の処遇改善 |
| ② 資材高騰による労務費へのしわ寄せ防止 |
| ③ 働き方改革と生産性の向上 |
以下、各項目の概要について解説します。
2.労働者の処遇改善
今回の法改正では、労働者の処遇改善を建設業者に努力義務化したうえで、国が当該取り組み状況について、調査・公表することが盛り込まれています。
また、中央建設業審議会が「労務費の基準」を作成・勧告することで、著しく低い労務費等による見積もり提出や見積もり変更依頼を禁止しました。
これに伴い、かかる規定に違反して契約した発注者には、国土交通大臣から勧告・公表措置がなされることとなりますので、今後建設業者に対する発注を行う際には、上記「労務費の基準」を参照のうえ、適正な労務費を設定することが必要となります。
3.資材高騰による労務費へのしわ寄せ防止
これまで資材価格の高騰や資材不足に関するリスク負担が受注者に偏っていたという経緯も踏まえ、資材高騰に伴う請負代金等の変更方法を、契約書の法定記載事項として明確にしています。
また、資材高騰が生じるおそれがあると認められるときは、請負契約の締結をするまでに、受注者から注文者に対して、主要な資機材の供給不足または価格の高騰に関する、いわゆる「おそれ情報」を通知することが義務づけられています。
そのうえで、契約後に資材高騰が生じた場合には、受注者は注文者に対して請負代金等の変更協議を申し出ることができ、注文者には当該協議に誠実に応じることが努力義務として求められます。
そのため、今後建設業者がかかる変更協議を申し出た場合には、注文者としてはかかる変更の可否について、誠実に検討のうえ、説明する必要が生じます。
4.働き方改革と生産性の向上
(1) 働き方改革
建設業における長時間労働を是正するため、受注者の発意による著しく短い工期の請負契約の締結(いわゆる「工期ダンピング」)を禁止する旨の改正がなされています。従来は、注文者に対してのみ及ぼしていた規制を受注者側にも適用することを内容とするものです。
さらに、工期変更の協議に関しては、上記3で述べたのと同様に、資材の入手困難等が生じるおそれがある場合には、受注者は注文者に対して、当該入手困難等に関する「おそれ情報」を通知することが義務づけられているほか、かかる通知をした受注者は、注文者との間で工期の変更を協議でき、注文者には当該協議に誠実に応じることが努力義務として求められます。
(2) 生産性の向上
生産性の向上の観点からは、①現場技術者の専任義務の合理化のほか、②ICT(情報通信技術)を活用した現場管理の効率化についても改正内容に盛り込まれています。
具体的には①について、一定の条件を満たす範囲で複数の現場をまたいだ現場技術者の兼任を可能とするほか、②については、国が現場管理の「指針」を作成のうえ、多くの下請業者を扱う建設業者や、公共工事受注者に対しては効率的な現場管理を努力義務化しています。
効率的な現場管理を行う方法としては、タブレット端末を通じた関係者間での現場写真の共有のほか、ウェアラブルカメラを用いた工事現場映像のリアルタイム共有等が想定されます。
5.改正を踏まえた対応
上記改正を踏まえ、今後建設業者に対して建築工事の発注を行う場合には、特に、以下の点に留意することが要求されます。
まず、前記2でも触れたところですが、建設業者との取引においては、「労務費の基準」を参照のうえ、労務費が適正に設定されているかという点に意識を向けることが重要です。
建設業者から見積書の提出を受けた後に、著しく低い労務費を内容とする見積もりの変更依頼を行うことも禁止されるという点もポイントとなります。
さらに、前記3のとおり、契約締結当初における請負代金変更の可能性の有無にかかわらず、建設業者より請負代金変更の申出があった場合には、注文者としてはかかる申出に対して誠実に応じることが求められます。
この点については、そもそも契約内容につき「契約の変更を認めない」旨の規定を設けることも禁止されている点には留意が必要となります。
◎協力/日本実業出版社
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