Netpress 第2099号 顧客の視点で考えよう 成功確率を高める新規事業開発の進め方
1.新規事業を育てるというのは、子供を育てるのと同じくらいの覚悟が必要になります。
2.新規事業開発を進めるうえでは、リーンキャンバスなどを用いることがありますが、自社の視点ではなく「顧客の視点」で考えることが重要です。
みらいコンサルティング株式会社
上席執行役員 下阪 安勝
公認会計士 西原 和光
各社を取り巻く経営環境は激しく変化している状況にあります。コロナ禍以前から自社に内在していた問題が、コロナ禍でより顕在化したというケースも見受けられます。
こうした状況下で、たとえば事業再構築補助金制度を活用し、これまでの自社のノウハウ等を活かして新たな事業を立ち上げる、といった取り組みが進んでいます。一方で、新たな事業を立ち上げることは決して簡単ではありません。子供を育てるのと同じくらいの覚悟で「事業を育てる」ことが必要です。
そこで、成功確率を高めるための新規事業開発の進め方・ポイントについて解説します。
新たな事業を立ち上げるステップは、一般的に以下のとおりです。
今回は、Step1とStep2での主なポイントについて解説します。
■Step1:ドメインを選ぶ
「とにかく多くのアイデアを出す」ことが必要です。そのためには、批判は厳禁、自由奔放に行う、質より量を重視する、他のアイデアに便乗する、といったスタンスが重要になります。とにかく多くのアイデアという観点では、まずは100個程度、最終的には1,000個くらいのアイデアを出すことを目標にすることが考えられます。
アイデアを出すときのポイントは、「徹底的に顧客の視点で考える」こと。事業化を目指すにはこの視点は不可欠です。
■Step2:顧客と提供価値を決める
顧客をセグメント化し(例:年齢・性別)、各セグメントの特徴・ニーズを踏まえたうえで、ターゲットとするセグメントを特定します(例:20代の女性)。そして、ターゲットとするセグメントへの「提供価値」(お客様の課題を解決するものは何か?)を考えます。
提供価値を考えるときのポイントは、「あったらいいなぁ」ではなく、「このために必要だからお金を出す」といったものであることです。また、B to Bの場合は、「あなたの商品を買うと当社はどう得をするの?」に答えられるものであることが重要です。これらの検討には、リーンキャンバスやビジネスモデルキャンバスを用いることが効果的と考えられます。
たとえばリーンキャンバスは、「特定の顧客の」「どんな課題を」「どのように解決するか」といったプロダクトの本質を簡単に描いたものです。具体的には以下の項目から構成され、まずは①~⑧の順番で検討を進めることが考えられます。
① 課題:世の中における課題、潜在的なニーズ
※代替手段:課題を解決している既存の代替品(もしあれば)
② 顧客:上記①の課題を抱えている顧客セグメント(顧客の特徴・職業など)
※アーリーアダプター:顧客セグメントで最初に話を聞いてくれそうな顧客層
③ 独自の価値提案:顧客に価値をもたらす製品またはサービス
④ 解決策:課題を解決して価値を提供するための手段
⑤ 顧客流入元:顧客にインタビューするための場所・手段
⑥ 収益の流れ・費用構造:年間の収益・費用(赤字にならないように)
⑦ 主要指標:うまくいっているかどうかを判断するための指標(=KPI)
⑧ 競合優位性:差別化要素(何が新しいか)
このうち、③独自の価値提案においては、「顧客の目を引くほどのもの」である必要がありますが、顧客の目を引くためには、(1)「理屈」で価値を訴える(従来の代替品と何が違うかを明確にする)、もしくは(2)「感情」で価値を訴える(製品・サービスを利用したあとの幸福感をストーリーで演出する)ことが重要です。
リーンキャンバスを用いる際には、「自社の視点ではなく、顧客の視点で考える」ことが最大のポイントになります。
以上が新規事業開発に係る一般的な進め方ですが、最後に新規事業開発に必ず失敗するパターンをいくつか紹介します。以下のような状況に陥ることがないよう、取り組みを進めていただければと思います。
・優れた技術・高性能であれば売れると思っている(顧客の視点がない)
・市場調査などの分析を重視する(むしろ顧客の声のほうが重要)
・可能な限り失敗を避けようとする(失敗なくして成功はない)
・なんでも自前でやろうとする(自社にないものは外から)
・すぐに儲かる事業を期待する(中長期的な目線が必要)
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