Netpress 第2480号 Z世代マネジメントの常識 管理職の指示の出し方で組織は変わる!

Point
1.管理職が目的と理由を明確にして指示をすれば、部下は納得し、主体的に行動します。
2.Z世代の部下は、自身の成長につながる情報やスキルを提供してくれる管理職を求めています。
3.逆に、Z世代の部下は、無価値と思うことに自分の時間が拘束されることを嫌いますので注意しましょう。


株式会社営業会議
代表取締役
野口 明美


 昨今、多くの企業で管理職が若手社員、特にZ世代とのコミュニケーションに課題を抱えています。


 かつての「言われた通りにやればよい」という指示命令型マネジメントは、ハラスメントと受け取られるリスクがあるため、現代の多様な価値観を持つZ世代には通用しません。


 営業教育を主軸とする研修会社の代表として、私は多くの企業の社員と接するなかで、その原因が管理職の指示の出し方にあると考えるようになりました。


 ここでは、私の経験に基づき、Z世代の若手社員と建設的に関わり、組織を活性化させるための具体的なマネジメントのヒントをお伝えします。

1.指示は「なぜなら」「目指すべき目標・ゴール」とセットで伝える

 Z世代の若手社員は、単に「やれ」と命じられるだけでは動きません。


 彼らは、行動に移す前に、その指示の背景にある目的や理由、そして目指すべき目標・ゴールを理解したいと考えています。もし「上が言うから」といった返答をすれば、「思考停止」の烙印を押されかねません。


 たとえば、オンライン会議での映像ONについてです。単に「映像ONにしてもらえないかな?」とお願いするのではなく、その必要性を具体的に伝えるべきです。


 私は社内会議で映像ONを推奨する際、次のように説明します。


 「会議では非言語コミュニケーションも対話の一部だと考えています。納得していない表情の参加者に意見を求めることで、新しい方向性が見つかったこともあります。また、商談では相手の非言語コミュニケーションを掴むスキルも必要となり、日頃から社内会議でこの経験を積むことが重要です。」


 そして、「理解、同意できたなら、映像をONにしてください」と伝えています。


 このように目的と理由を明確にすることで、部下は納得し、主体的に行動するようになります。

2.時間外コミュニケーションは「投資」であり、「質」が重要

 業務時間外の部下とのコミュニケーションは、単なる付き合いではなく「投資」です。Z世代は時間効率を重視し、自分の時間を拘束されることへの対価を求めます。


 過去に、「ランチミーティングの内容が薄く、ランチ代も割り勘で迷惑だった」という不満を聞いたことがあります。


 ランチミーティングを行うのであれば、単なる情報交換の場ではなく、具体的な成果につながる有意義な時間にすることが重要です。


 たとえば、午後の商談の目的・ゴール確認、商談相手の情報の共有、ロールプレイングなど、部下にとって時間をかける価値があったと納得できる内容にしましょう。


 もし、単なる情報交換であれば、部下の時間を拘束するのですから、管理職が食事代を負担すべきです。さもなければ、部下からの評価を下げるだけの残念な結果に終わってしまいます。

3.情報やスキルを提供せよ

 Z世代は将来への不安を抱えており、自身の成長につながらない職場には未来がないと考えます。


 彼らは、ビジネスの世界で役立つ情報やスキルを提供してくれる管理職を求めています。構える必要はありません。たとえば、普段の行動で直したほうがよい点を伝えるなど、些細なことで構いません(もちろん、「なぜなら」と理由を伝えることを忘れずに)。


 私は以前、Z世代の受講生が名前を呼ばれても返事をせずに意見を話し始めることに気づきました。そこで、次のように伝えました。


 「皆さんの存在を認め、『〇〇さん』とお呼びしているのですから、『はい』と返事をして私の存在を認め、周囲にあなたの存在を共有してから、自分の意見を発表するのが、ビジネス人としての『作法』だと私は思うのですが、いかがでしょうか?」


 すると、受講生全員が名前を呼ぶと「はい」と返事をするようになりました。


 単に「返事をしろ」と怒鳴るのではなく、「はい」と返事をすることが、単なるマナーではなく、ビジネスの世界を生きていくためのルール=「作法」であると伝えることで、彼らは納得し、行動を変えました。


 管理職の皆さんも、自身が当たり前にしている行動の意味を部下に伝えることで、部下のあなたを見る目は変わるはずです。

4.相互理解は、真正面から短時間で深める

 私は研修講師以外に、顧客の営業部に駐在して社員を指導する業務も行っています。指導対象のZ世代の若手社員とのリレーション構築は不可欠です。


 彼らと相互理解を深めるために、私は以下のような提案をしています。


 業務を効率的に行い、業績もアップさせていくために、互いの情報交換が必要だと思います。そこで、今から3分間だけ、互いの情報交換を行いませんか? 情報交換するテーマは次の3つです。
1.この仕事を通じてどんな自分になりたいか?
2.職場で、仕事上で、されたら嫌なことは何か?
3.もっともやる気が高まるときはどんなときか?


 この提案のポイントは、情報交換の目的と3分間という時間の区切りを明確にすること、管理職側が率先して自分の情報を開示すること、そして部下にとって「されたら嫌なこと」という質問を必ず入れることです。


 この3分間の情報交換を拒否したZ世代の社員は、これまで一人もいませんでした。わざわざランチの1時間を費やすことなく、職場のデスクで、たった3分間で深い相互理解を促すことが可能です。


 Z世代の若手社員は、明確な理由と目的、そして自身の成長を重視します。一方的な指示ではなく、対話を通じて彼らの納得を引き出し、主体性を促すことが、これからのマネジメントには不可欠です。


 本稿で述べたヒントが、管理職の皆さんのマネジメントの一助となり、組織の活性化に繋がることを願っています。



◎協力/日本実業出版社

日本実業出版社のウェブサイトはこちらhttps://www.njg.co.jp/



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