Netpress 第2477号 実践的なノウハウ! 経理業務を効率化する「生成AI」の活用術

1.このところ、経理業務においても生成AI(ChatGPT)を活用した業務効率化が注目されています。
2.プロンプト作成のコツを中心として、経理業務を効率化するための生成AIの活用術を紹介します。
1.プロンプト最適化の基本原則
生成AIから質の高い回答を得るためには、適切なプロンプトを作成することが重要です。そのために、まず以下の基本原則を押さえておきましょう。
(1) 明確さと具体性
プロンプトが「明確で具体的」であるほど、AIは適切な回答を提供してくれます。曖昧な質問ではなく、具体的な条件や要望を記載しましょう。
(2) 完全な文章での記述
プロンプトは完全な文章で記述しましょう。キーワードをただ羅列するのではなく、文法的に正しい文章で指示することで、AIがよりプロンプトの内容を理解しやすくなります。
(3) 詳細情報の提供
詳細な情報を提供することで、より具体的な回答が得られます。前提条件や背景情報を含めるとよいでしょう。
【プロンプト最適化の基本原則 ― NG例・OK例】
(1) 明確さと具体性 | (2) 完全な文章での記述 | (3) 詳細情報の提供 | |
NG | 経費精算について教えて。 | 備品購入 経費計上 仕訳方法。 | 減価償却の計算方法は? |
OK | 交通費の経費精算で、領収書がない場合の処理方法と必要な代替証憑について教えてください。 | 少額な備品購入費用を経費として計上する場合の正しい仕訳方法を教えてください。 | 2025年4月に購入した500万円のサーバー機器(法定耐用年数5年)の定額法による月次の減価償却費の計算方法と仕訳例を教えてください。 |
2.プロンプト最適化のコツ
(1) 役割の明確化
AIに特定の役割を与えることで、より専門的な回答を引き出すことができます。
(2) 構造的な区切り
マークアップ言語や区切り記号を用いて、プロンプトの構造を明確にします。見出しを入れると読み手が理解しやすくなるのと同じことです。
(3) 命令の箇条書き
複数の指示を出す場合は、箇条書きで明確に整理します。
(4) 出力形式の指定
回答の形式を明確に指定することで、使いやすいかたちで情報を得られます。
【プロンプト作成のコツの例】
(1) 役割の明確化 | あなたは経理部門で10年以上の経験を持つ財務アナリストです。当社の四半期決算データを分析し、改善点を指摘してください。 |
(2) 構造的な区切り | # 役割 .................. あなたは経理専門のコンサルタントです。 # 分析対象 .......... 以下の売上データと原価データ →[ データ内容 ] # 依頼内容 .......... 上記データに基づき、利益率改善のための3つの提案をしてください。 |
(3) 命令の箇条書き | 以下の作業を順番に実行してください: 1.提供したExcelデータから月次の売上推移をグラフ化するための数式を作成 2.前年同月比の増減率を計算するための数式を提示 3.異常値(前月比±30%以上の変動)を自動検出する条件付き書式を設定 |
(4) 出力形式の指定 | 上記の分析結果を、以下の形式で出力してください: 1.重要な発見事項(箇条書き3点) 2.詳細な分析(表形式) 3.改善提案(優先度順) |
3.出力結果からプロンプトを逆算させるテクニック
誰しも最初から上手に質問はできません。AIを使い続けることで、プロンプト作成のスキルは徐々に向上していきます。そのスキルを大きく向上させてくれるのが、「出力結果からプロンプトを逆算させる」というテクニックです。
ある程度の回答が出力された段階で、「この出力結果が得られるプロンプトを考えてください」というプロンプトを入れることで、その回答を引き出す最適な質問方法をAIは教えてくれます。
これにより、質問の構造や表現を学ぶことができるため、プロンプト作成能力が飛躍的に向上します。
4. 経理業務におけるAI活用の留意点
以下の点に留意したうえで、AIを経理業務の効率化のために役立ててください。
(1) データの最新性
生成AIは、最新の法改正や会計基準の変更が反映されていない可能性があります。特に税制や会計基準に関わる内容は、必ず最新の法令や公的資料で確認することが重要です。
(2) 情報の取り扱い
社内の財務データや顧客情報などの情報をAIに入力する際は、会社の規定に則るようにしてください。情報は可能な限り匿名化・一般化してから入力しましょう。
(3) 回答検証の必要性
AIの回答は必ずしも正確とは限りません。特に計算結果や法令の解釈などは、人間の専門家によるレビューが必要です。AIは「判断の主体」ではなく、「思考の補助」と位置づけることが重要です。
(4) 段階的な導入
まずは定型的な文書作成や情報整理など、リスクの低い業務から段階的に導入していきましょう。
(5) 学習と改善の継続
効果的なプロンプトは一度では完成しません。継続的に改善し、社内で情報を蓄積・共有することが重要です。
◎協力/日本実業出版社
日本実業出版社のウェブサイトはこちらhttps://www.njg.co.jp/
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