Netpress 第2435号 新年スピーチ事例<2025年新春> 〜 わが国経済の回顧と新年の展望 〜

2024年のわが国経済の回顧と2025年の展望を新年のスピーチ事例としてまとめました。社内の年頭挨拶や各種会合のご挨拶などにお役立てください。


株式会社日本総合研究所
調査部  朱雀 愛海



皆さん、あけましておめでとうございます。新たな年の初めを迎え、皆さまには健やかにお過ごしのことと、お慶び申し上げます。
昨年1年、それぞれの持ち場で業務に真摯に取り組んでいただきましたことに対し、心より感謝を申し上げます。

◆2024年の回顧 ―― 変化の胎動が始まった

 さて、2024年を振り返りますと、歴史的な出来事がいくつもあったように思います。


 スポーツ界では、大谷翔平選手がメジャーリーグで史上初の「50‐50」を達成し、世界中を沸かせたことは記憶に新しいところです。そして、経済界でも、新たな局面を迎えた一年となりました。


 昨年のわが国では、経済が着実に回復しました。


 多くの産業で業況が改善し、特に外国人観光客が日本各地に押し寄せたことから、宿泊や飲食などインバウンド消費に関連したサービス業が活況を呈しました。企業はデジタル化への取り組みも進め、なかでも、人手不足を克服するためのソフトウェア投資が急増していることから、情報通信などの法人向けサービス業も好調でした。製造業でも、海外経済の回復に支えられ、輸出が持ち直しました。


 こうした動きを受けて、多くの企業では収益が増加し、その成果は労働者にもしっかりと還元されました。春闘では33年ぶりとなる賃上げが実現し、多くの家計で収入が伸びています。また、これまで高騰してきた物価もようやく落ち着きつつあり、家計の消費意欲にも改善の兆しが見られています。


 このようにわが国の経済は、「賃金と物価の好循環」の実現に向けて着実に前進しました。


 これを受けて、日本銀行は10年以上に及んだ異次元緩和に終止符を打ち、「金利ある世界」にむけた第一歩を踏み出しました。


 株式市場でも、日経平均株価がバブル期の最高値をついに超えて4万円台に達するなど、「失われた30年」からの脱却を印象づける動きも見られました。


 このように、わが国経済はいよいよ新たな成長局面に向けて動き始めています。

◆新年の展望 ―― 回復が持続

 新年のわが国経済を展望しますと、景気回復が続く見込みです。


 家計では、雇用・所得環境の改善に支えられて、個人消費が回復する見込みです。次の春闘でも、昨年に見劣りしない賃上げが予想されます。多くの企業が従業員の待遇改善に積極的に取り組んでおり、賃金の引き上げに意欲的です。政府も、最低賃金をこれまで以上に引き上げる考えを表明しています。企業がデジタル化への取り組みを進めていることも、生産性の向上を通じて、賃上げの原資を拡大させる方向に作用します。


 企業は海外への輸出も積極化させる見込みです。特に、生成AIやデータセンター向けなどが需要のけん引役になることが予想され、わが国が強みを持つメモリー半導体や半導体製造装置の分野を中心に輸出が増加すると考えられます。


 このように、わが国では自律的な景気回復メカニズムが作動し、好循環への足取りが確かなものとなることが期待されます。


 こうした動きが潰えることがないよう、環境変化に注意深く備えておくことが新年の重要課題といえます。


 特に、海外情勢が不安定化していることが気がかりです。海外では、ポピュリズムの流れがさらに強まり、欧州では、ウクライナ戦争の影響で急増した移民への反発などで、極右政党が躍進し、ドイツやフランスなどでは政治情勢がかなり混乱しています。


 アメリカでも、自国中心主義を掲げるトランプ氏が大統領に返り咲きます。新政権の発足後、通商政策や環境・エネルギー政策など、多くの分野で政策転換が行われると見られています。


 たとえば、中国やメキシコなどに対する関税の大幅引き上げなど、トランプ氏は対外的な圧力を強める構えを見せており、世界経済に大きな影響が及ぶと考えられます。


 わが国もそうした圧力を受けることが否定できないだけに、その動向には十分な注意が必要です。

◆新年の抱負 ―― しなやかに、したたかに

 このようにわが国は、重要な変化の過程にあります。こうした変化を経済成長につなげていくためには、従来の考えに拘泥しない柔軟な姿勢とともに、弛まぬ努力が必要になります。


 今年の干支は、「乙巳(きのと・み)」です。「乙」は困難があっても紆余曲折しながら進むことや、しなやかに伸びる草木を表しています。「巳」は蛇のイメージから「再生と変化」を意味します。脱皮し強く成長する蛇は、その生命力から「不老長寿」を象徴する動物、または神の使いとして信仰されてきました。


 わが国の経済は、国内外ともに新しい局面の入り口に立っています。変化の激しい世界情勢に振り回されることなく、盤石な経済基盤を構築することが大切です。本年の干支にあやかって、しなやかに、したたかに、日本経済もわが社も老いることなく、不老長寿の道を歩んでいけることを願ってやみません。


 変革の時代には困難に直面することも多くあるかと思いますが、相互扶助の精神のもと、一致団結して力強く邁進していきましょう。



 結びに、本年が皆さんとご家族にとり、より佳き年となりますことを祈念いたしまして、私の年頭のご挨拶とさせていただきます。


◎協力/日本実業出版社
日本実業出版社のウェブサイトはこちら 
https://www.njg.co.jp/



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