Netpress 第2452号 心構えは? 行動は? 組織で目標を達成するために管理職に求められる役割

Point
1.組織で目標を達成するために管理職に求められる役割は、リーダーシップ、マネジメントなど多岐にわたります。
2.自らの役割をしっかり認識したうえで、組織の成果を最大限に生み出す管理職を目指しましょう。


株式会社アタックス
シニアパートナー・執行役員
中小企業診断士・産業カウンセラー
北村 信貴子

1.管理職に求められるリーダーシップとマネジメントとは

(1) すべての管理職、学び直しの時代!

 長年人事制度コンサルティング、経営者・後継者・マネージャーの教育訓練や、組織マネジメントに携わり実感していることがあります。それは令和時代の管理職は、過去のどの時代よりも、極めて高難度の知識・スキルが求められているということです。プレーヤーとして高い成績を収めた人であっても、従来の延長線上で管理職の責任が務まるほど甘くありません。新任管理職、ベテラン管理職ともに、今の時代に求められるマネジメント、リーダーシップを理解しましょう。


(2)「マネジメント」は組織を動かす土台!

 管理職は、〇部や〇課などの単位組織のトップとして、組織をあるべき姿(目標)に向けて動かし、成果(結果)を出すことが期待されているポジションです。


 一番の特徴は、一人で達成するのではなく、組織を動かして達成する点にあります。しかも、組織を動かすとは、そこに在籍するメンバー(部下)を動かすこととイコールです。つまり、メンバー(部下)の活動の良し悪しが組織の成果を決めるといってもよいでしょう。したがって、管理職は組織を動かすための「マネジメント」について理解し、実行できなくては責任を果たせません。


 「マネジメント」をシンプルに表現すると、「仕事の管理」と「ヒトの管理」です。具体的には、次のようなことです。


 〇上位方針に即した部署・課の目標設定

 〇役割と責任の明確化

 〇組織運営上の規則やルール、部門間連携などの明確化

 〇業績管理とマネジメントサイクルの推進

 〇メンバーの勤怠管理、業務負荷の調整などの労務管理

 〇メンバーの教育計画の策定(OJT、OFF-JT)


(3) リーダーシップとは「影響力」!

 しかし、マネジメントだけで組織が動くわけではありません。人間の集合体である組織がまとまって動くには、管理職のリーダーシップが不可欠です。リーダーシップを一言でいうと、「影響力」です。現在、さまざまなリーダーシップ類型が提唱されていますが、時にはトップダウン、時にはメンバーのサポートに徹するという具合に、状況に応じて適切にリーダーシップを発揮することが求められます。


 「価値観も経験も異なる感情を持つ人間」をその気にさせるには、有事には力強く行く先を指し示し、こうすべきだと導いていく。本人の成長に重きをおく場面では、部下の話をじっくり傾聴し、相手の意見を尊重しながら導いていく。管理職にはこのような状況判断力と柔軟な対応力が必要です。

2.社員の成長支援こそが管理職の重要責務!

 「社員の成長こそが組織成果獲得の源泉」。これに異論を唱える人はいないでしょう。


 管理職が次にすべきことは、メンバー(部下)の成長を心から願い、その支援を惜しまないことです。メンバー(部下)を確実に成長させる手法として、上司や職場の先輩社員が仕事を通じて指導を行うOJT(オンザジョブトレーニング)と、外部の教育機関を利用したセミナーや、講師を招聘して行う研修を指すOFF-JT(オフザジョブトレーニング)があります。さらにOJTには、自ら考え行動を促す「コーチング」と知識やノウハウを提供する「ティーチング」を使い分け、メンバー(部下)の成長を促す方法があります。


 これまではOJTが社員育成の中心でした。職場内で上司や先輩社員から直接指導を受けることにより、日常の実務能力が高まることは事実です。しかし、現在は環境変化が激しく、これまでのやり方が必ずしも正解とはいえなくなってきており、今後は、常に新しい知識や技能をインストールすることが求められます。そのためには、計画的にOFF-JTを取り入れ、社員の成長をさらに促進することが必要です。管理職は、メンバー(部下)に対してOJTだけでなく、OFF-JTの機会を提供することが不可欠なのです。

3.コミュニケーションを強制発生させよう!

 管理職であれば誰もが、メンバー(部下)に「早く成長して成果を上げて欲しい」と願うものです。しかし指導の方向性を間違うと成長するどころか、退職リスクを高めてしまいます。それを防ぐためには、メンバー(部下)との日常のコミュニケーションが、何よりも重要です。


 多くの企業が目標管理を導入し、半年単位や1年単位でPDCAサイクルを回しています。そのなかでも特にDO(実行)における部下指導が重要です。


 年度計画から個人目標へと落とし込む「目標設定面談」、昇給・賞与の根拠となる「評価・フィードバック面談」は、年中行事化されており、どの企業も確実に実施しています。これからは、「目標設定」と「評価・フィードバック」の間のDO(行動)をいかに確実にしていくかが重要です。


 「何かあったらいつでも相談に来てね」は、丸投げ、放置と同じです。


 何もなくても、必ず部下とのミーティングを定例化しましょう。たとえば、毎日終業時間前10分は振り返り時間を設ける、1か月に1回は30分間面談して目標の進捗確認を行うなどです。これからはコミュニケーションを自然発生ではなく、強制発生させることが大切です。

4.まずここから始めよう!

 組織で目標を達成するために求められる管理職の役割は、上述した以外にも多岐にわたります。まず、最初に行うべきことは、会社(上司)の期待を受け止め、自身の立ち位置と等級(資格)定義をしっかり咀嚼することです。定義がない場合は、管理職の「人事評価シート」に何が盛り込まれているのかをしっかり読み解きましょう。そのうえで、管理職としてやるべき具体的なジョブ(業務分掌)を把握すること、以前の業務を継続する場合はそれも含めて業務を洗い出し、上司と「握る」ことが大切です。


 「私の今後の業務をこのように認識しております。抜け・漏れはありませんか?」


 自信をもって管理職の役割を遂行するには、このように上司とのすり合わせも大変重要です。管理職として、業務内容は明確か、部下とのコミュニケーションの仕組みは適切か、上司とのすり合わせは万全かを点検し、組織の成果を最大限に生み出す管理職を目指してください。



◎協力/日本実業出版社
日本実業出版社のウェブサイトはこちら 
https://www.njg.co.jp/



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