Netpress 第2096号 法違反に注意! 「産後休業」「育児休業」中の就業はどこまで許される?

Point
1.会社内の長年の労務上の慣行やルールなども、よく確認してみると法違反であることが少なくありません。
2.ここでは、「産後休業」「育児休業」中の就業の可否や正しい労務管理の方法について解説します。


特定社会保険労務士 鎌田 良子


出産した経理担当のAさんのケースを例に、休業中の就業の可否や注意点を確認してみましょう。




C部長は、Aさんの経過が良好で元気そうだったので、安易にお願いしてしまったのかもしれませんが、産後休業中に就業させることは法違反となります。

1.休業中の就業可否を整理する

(1)産前産後休業中の就業可否

①産前休業(労働基準法65条1項)

出産予定の女性労働者は、出産予定日の6週間(多胎妊娠は14週間)前から、休業を使用者へ「請求」できます。
休業の請求は任意ですが、請求があれば使用者はそれを拒否できず、就業させることはできません。


②産後休業(労働基準法65条2項)

使用者は、原則として産後8週間(本人が就業を請求し、医師が支障ないと認めた業務に就く場合には6週間)を経過しない女性を就業させることはできません。
これは任意ではなく、強制的な就業禁止です。正常出産、死産、早産を問いません。


(2)育児休業中の就業可否

育児休業は、育児・介護休業法により、1歳に満たない子を養育する労働者からの申出により、子の1歳の誕生日の前日までの期間で、1人の子につき原則1回取得することができます(保育園に入れないなどの事情がある場合には、1歳6か月または2歳まで延長が可能)。


育児休業は本人の申出に基づくものであるため、労使の合意があれば就業することができます。これが臨時的な就業であれば、引き続き育児休業を取得することもできます。恒常的な就業になると育児休業が終了します。


(3)Aさんのケースを確認

休業の整理ができたところで、Aさんの産前産後休業・育児休業の期間や要件等を確認してみましょう。




Aさんの場合、3月21日から産前休業を請求することもできましたが、3月は請求をせずに働いていました。


4月1日から産前休業を請求し、予定どおりに産まれたので、出産日である5月1日までが産前休業となりました。翌5月2日から8週間、つまり6月26日までが産後休業となります。


たとえ在宅勤務であっても、使用者は6月26日までは就業させてはならず、医師が支障ないと認めた業務であっても、6月12日までは就業禁止です。

2.法違反には罰則、育児休業給付金にも影響

産後休業中の就業は、就業させた使用者の法違反で、罰則は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です。


また、育児休業中にも働くことを検討する場合、前述のとおり「臨時的」であれば育児休業は終了にならず、その後も育児休業給付金の対象です。


臨時的の範囲は限定的で、労使の話し合いによって、子の養育をする必要がない期間に限り、一時的・臨時的にその会社で働くことが可能となります。会社の一方的な指示により働かせることはできません。


労使の合意のもとで臨時的に働くことになった場合であっても、就業日数の目安は「月10日まで(10日を超える場合は80時間まで)」となります。


一方、あらかじめ決められた期間や日時、毎週特定の曜日または時間に勤務するといった場合は、日数や時間数が少なくても「恒常的」とされ、臨時的な就業とは認められません。


その結果、育児休業給付金が支給されなくなったり、社会保険料の免除が受けられなくなったりしますので、注意が必要です。

3.休業期間と就業可能な範囲を確認する

在宅勤務であっても、働くことに変わりはありません。産前産後休業・育児休業期間中は、法律上の就業の制約のもと、本来の目的である「母体保護」や「子の養育」に目を向けましょう。


そのために、①「いつからいつまでがどの休業か」、②「どこまでなら就業可能で、本人はどう希望しているか」を労使双方でしっかりと確認することが重要です。


①については書面で確認します。産前産後休業や育児休業の申出は口頭でも可能ですが、多くの法律が適用される制度であり、1日の違いでも制約が異なることがあります。間違いがないよう、休業スケジュールの表などを見ながら労使双方で確認し合うとよいでしょう。


②については、本人が希望している場合であっても、就業できる期間に制限があることや、育児休業給付金などが受けられなくなる場合があることを必ず伝えるようにしてください。


休業前の後任者への引き継ぎ時は、上司も同席して、後任者が対応しきれないケースが生じても上司がフォローできるような仕組みづくりを進めましょう。引き継ぎに万全を期すことで、本人も安心して休業に入ることができます。



◎協力/日本実業出版社
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