Netpress 第2095号 課否は? 精算方法は? 在宅勤務に関連した費用負担等の税務取り扱い

Point
1.在宅勤務を導入した場合、業務のための費用か否か、またその金額等をめぐって誤りが生じやすくなります。
2.そこで、在宅勤務に関連した費用負担等の税務面の取り扱いや留意ポイントについて確認します。


税理士 平井 満広


在宅勤務に関連した費用を企業が負担した場合の税務取り扱いについて、国税庁は「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」を公開しています。その内容を踏まえて、具体的な処理や留意点を解説します。

1.在宅勤務手当・パソコン等の支給

在宅勤務に通常必要な費用を従業員に実費精算で支給する場合は、給与として課税されません。一方で、在宅勤務手当(在宅勤務に通常必要な費用として、使用しなかった場合でも返還しないもの)として、定額の金銭を従業員に支給する場合は、給与として課税されます。


たとえば、渡切り(使途不問・精算不要)で毎月5,000円を支給すれば、5,000円の全額が給与課税されます。


また、企業が所有するパソコン等を従業員に貸与する場合は、給与として課税されません。一方で、企業所有のパソコン等を従業員に支給(所有権が従業員に移転し、返却も不要)する場合は、現物給与として課税されます。


なお、パソコン等を「支給」という形で従業員に配付しても、従業員がパソコン等を自由に処分できず、業務に使用しなくなったときには企業に返却する場合は、「貸与」と考えて差し支えありません。

2.在宅勤務に通常必要な費用の精算

(1)従業員に貸与するパソコン等を購入する場合

①企業が従業員に金銭を仮払いした後、従業員がパソコン等を購入し、その領収書等を企業に提出して購入費用を精算(超過金額を返還)する方法


②従業員が立替払いで購入し、その領収書等を企業に提出して購入費用を受領する方法


なお、①②いずれの方法で購入しても、「パソコン等の所有権を従業員が有する場合」は貸与に該当せず、現物給与として課税されます。


たとえば、企業が従業員に10万円を仮払いし、従業員は8万円でパソコン等を購入して、企業に2万円を返還したとします。この場合、在宅勤務終了後にパソコン等を企業に返却しなければ、8万円が現物給与として課税されます。


(2)通信費や電気料金を精算する場合

①企業が従業員に金銭を仮払いした後、従業員が家事部分(生活費)を含めて負担した通信費や電気料金について、業務のために負担した部分を合理的に計算し、その金額を企業に報告して精算(超過金額を返還)する方法


②従業員が家事部分を含めて負担した通信費や電気料金について、業務のために使用した部分を合理的に計算し、その金額を企業に報告して業務のために使用した部分の金額を受領する方法


なお、(1)の①、(2)の①の場合とも、企業が従業員に支給(仮払い)した金銭のうち、購入費用や業務使用部分を超過した金額を返還しない場合に給与として課税されるのは、超過金額部分のみとなります。


たとえば、企業が従業員に通信費や電話料金として5,000円を支給(仮払い)し、そのうち業務に使用したのは3,000円で、超過金額の2,000円を企業に返還しなかったとします。この場合、業務に使用した3,000円については給与として課税されず、超過金額の2,000円のみが課税対象となります。

3.従業員が負担した在宅勤務に係る通信費の計算

(1)電話料金


①通話料

通話料(②の基本使用料を除きます)については、業務のための通話料を通話明細書等によって確認し、その金額を従業員に支給する場合は、給与として課税されません。


また、業務のための通話を頻繁に行う業務(営業担当や出張サポート担当など、通話が多いと企業が認める業務)に従事する従業員については、通話明細書等による確認に代えて、次の算式により算出した金額を業務のために使用した通話料とすることができます。




算式中の「1/2」は、1日24時間から平均睡眠時間8時間を除いた時間(16時間)のうち、労働時間(法定8時間)の占める割合を仮定して算出されています。


なお、この算式によらず、より精緻な方法で算出した金額を業務のために使用した金額とすることもできます。


②基本使用料


基本使用料等については、業務のために使用した部分を合理的に計算する必要があります。たとえば、上記の算式により算出した金額を従業員に支給する場合は、給与として課税されません。


(2)インターネット接続通信料

基本使用料やデータ通信料等については、業務のために使用した部分を合理的に計算する必要があります。たとえば、上記の算式により算出した金額を従業員に支給する場合は、給与として課税されません。


ただし、従業員本人が所有するスマートフォン本体の購入代金や、業務のために使用したと認められないオプション代等(音楽・動画等の定額利用料等)を企業が負担した場合は、その金額は従業員に対する給与として課税されます。

4.従業員が負担した在宅勤務に係る電気料金の計算

電気料金(基本料金や電気使用料)については、業務のために使用した部分を合理的に計算する必要があります。たとえば、次の算式により算出した金額を従業員に支給する場合は、給与として課税されません。




算式中の「1/2」は、前出の算式と同様の仮定で算出されています。


なお、この算式によらず、より精緻な方法で算出した金額を業務のために使用した金額とすることもできます。



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