Netpress 第2417号 基本的な流れを確認 令和6年分の 年末調整の実務はこう進める
1.年末調整では、その年に収めるべき税額を正しく計算し、すでに徴収した税額との過不足額を求めて、その差額を徴収または還付することになります。
2.ここでは、ことしの年末調整事務の一般的な手順とスケジュール、留意点などを確認します。
会社などの給与の支払者が、その役員または従業員に対して給与を支払う際に所得税・復興特別所得税(以下、所得税等といいます)の源泉徴収を行っています。
しかしながら、その年の1年間に給与・賞与(以下、給与等といいます)から源泉徴収した所得税等の合計額は、その役員または従業員のその年の1年間の給与等の支給総額について納付すべき所得税等とは必ずしも一致しません。
そこで、それらを一致させる手続きを「年末調整」といいます。
1.年末調整の対象になる人・ならない人
(1) 年末調整の対象となる人
その年の最後に給与等の支払いを受ける際に扶養控除等(異動)申告書を提出している人で、その年の1年間の給与等の支給総額が2,000万円以下の一定の人です。
(2) 年末調整の対象とならない人
① | 扶養控除等(異動)申告書を提出していない人(源泉徴収税額表の乙欄適用者) |
② | その年の1年間の給与等の支給総額が2,000万円を超える人 |
③ | 年の中途で退職した人で年末調整の対象とならない人 |
④ | 非居住者など |
2.年末調整を行う時期
年末調整は、原則として、その年の最後に給与等を支払う際に行います。
なお、年の中途で退職等した人の場合は、年末調整の時期について、次のような特例があります。
① | 退職時に年末調整を行う場合 | |
・ | 死亡退職した場合 | |
・ | 12月に給与等の支給期の到来する給与等の支払いを受けた後に退職した場合 | |
・ | いわゆるパートタイマーとして働いている人などで、年の中途で退職した人(給与等の総額が103万円以下で、かつ、退職後、他の勤務先等に再び勤務しないことが明らかである人に限る) | |
② | 非居住者となった時に年末調整を行う場合 | |
・ | 年の中途で非居住者となった人 |
3.年末調整の一般的な手順とスケジュール
(1)各種申告書の配布と受理による各種控除額の確認――10月中旬から12月初旬
① | 扶養控除等(異動)申告書 |
この申告書により、「障害者控除」、「寡婦控除」、「ひとり親控除」、「勤労学生控除」、「扶養控除」による各種所得控除額を確認できます。 | |
② | 保険料控除申告書 |
この申告書により、「社会保険料控除」、「小規模企業共済等掛金控除」、「生命保険料控除」、「地震保険料控除」による各種所得控除額を確認できます。 | |
③ | 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書 |
この申告書により、「配偶者控除」、「配偶者特別控除」、「基礎控除」による各種所得控除額を確認できます。 (注1) 所得金額調整控除申告書では、給与所得から控除する「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」の控除額を確認できます。 (注2) 令和6年分所得税の定額減税が実施されていますが、令和6年中の所得金額の見積額が1,000万円超の給与所得者の同一生計配偶者(※1)について、年調減税額(※2)の計算に含める場合には、「年末調整に係る定額減税のための申告書」を年末調整時までに勤務先等に提出する必要があります。そのため国税庁から、基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書との兼用様式が提供されています。 (※1) 同一生計配偶者とは、控除対象者と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等を除きます)のうち、その年の1年間の合計所得金額が48万円以下の人をいいます。 (※2) 年調減税額とは、年末調整の際、年末調整時点で定額減税額に基づき精算される額をいいます。 | |
④ | 住宅借入金等特別控除申告書 |
金融機関からの住宅借入金等の年末残高に応じた「住宅借入金等特別控除」による税額控除額を確認できます。 |
(2)年調年税額の計算による過不足額の計算――11月中旬から12月下旬
① | 本年分の給与等の支給総額と源泉徴収した所得税等の額の集計 |
② | 給与所得の金額(給与所得控除額を控除した給与等の金額)の計算(調整控除後の金額) |
使用する申告書…所得金額調整控除申告書 | |
③ | 各種所得控除額の計算 |
使用する申告書…扶養控除等(異動)申告書、保険料控除申告書、基礎控除申告書、配偶者控除等申告書 | |
④ | 本年分の給与等に係る税額(年調年税額)の計算 |
使用する申告書…住宅借入金等特別控除申告書、年末調整に係る定額減税のための申告書 | |
⑤ | 過不足額の計算 |
(3) 過納額の還付または不足額の徴収(源泉所得税等の納付)――12月下旬から翌年1月中旬
① | 年調年税額(上記(2)④)よりも本年分の給与等から源泉徴収した所得税等の額(上記(2)①)が多い場合には、その差額(過納額)が還付の対象となります。 |
② | 本年分の給与等から源泉徴収した所得税等の額(上記(2)①)よりも年調年税額(上記(2)④)が多い場合には、その差額(不足額)が徴収の対象となります。 |
③ | ①と②の精算結果を、年末調整をした月分の所得税徴収高計算書(納付書)に記載し、徴収税額を納付します。 |
(4) 源泉徴収票等の作成と提出――翌年1月(末日まで)
① | 源泉徴収票…従業員に交付 |
② | 源泉徴収票と法定調書合計表…源泉徴収義務者の所轄税務署へ提出 |
③ | 給与支払報告書と給与支払報告書(総括表)…役員または従業員の住所地の市区町村へ提出 |
◎協力/日本実業出版社
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