Netpress 第2404号 管理職の方へ ご存知ですか?Z世代社員への関わり方

Point
1.今の新入社員は、1990年代後半以降に生まれた「Z世代」と呼ばれる若者で、SNSの普及と長い不況を経験したことで、働く動機とコミュニケーションの取り方に特徴があると言われます。
2.営業研修の講師としてZ世代と多く接し、その経験から掴んだZ世代との関わり方のポイントをお伝えします。


株式会社営業会議
代表取締役 野口 明美


私が代表を務める株式会社営業会議は、営業教育が主軸の研修会社です。営業教育の研修の講師として、さまざまな企業のZ世代の新入社員に接する機会があり、そのなかで研修を充実させるために私自身が掴んだ、彼らとの関わり方のポイントがあります。


研修講師としての事例ではありますが、Z世代を部下にもち、接し方で悩んでいらっしゃる管理職の方のヒントになればと思い、ポイントのいくつかをご案内します。

1.反応が薄いZ世代社員と「共通理解を行う」

初めて営業活動をするZ世代には、研修の冒頭で、必ずチャンネル合わせ(=互いの目的・意義・価値の理解)を行います。すでに営業経験のある社員や中堅社員に対しては、この作業のための時間を特に取ることはありませんが、Z世代の場合は欠かせません。


管理職の方も、何か仕事を始める前に、部下であるZ世代社員と、その仕事の目的・意義・価値について、共通理解を行うことが大切です。


私の研修の一例ですが、『営業』の目的・意義・価値について、彼らとの共通理解の時間を取ります。そこで『営業』という仕事をどんな内容ととらえているか、彼らに聞きます。すると、「商品をPRする仕事」、「売ること」、「お客様と話す仕事」、「会社の利益を上げる仕事」など、さまざまな反応が返ってきます。


まず彼らの意見に同意を示したうえで、『営業』において最も重要な業務と私自身が考えている【交渉】(納期の交渉、価格の交渉、提案内容を理解してもらう交渉、導入スケジュールの交渉など)について伝え、「いかにお客さまと対等な関係で、交渉を進めていくか」の研修であることを説明し、互いの目的・意義・価値の共通理解を確認し合います。


Z世代は、企業方針や経営層の姿勢を観察し、自分たちにとって必要なこと・価値があることなのかどうかを常に判断しているように思います。最初から素直に信用する姿勢ではありません。もし研修の冒頭で「売り上げ拡大のためのテクニックを説明します」と切り出したなら、その段階でその切り出しに同意できる部分が少しもないと感じた受講者の参加姿勢は一変していたでしょう。自分たちの存在価値が高まる、自分たちの未来に必要であることを学べるとの共通理解ができることで、彼らの積極性を高めることができます。


管理職の方は、互いの目的・意義・価値についての確認が必要なこと、Z世代の部下が管理職の自分たちを観察している現実も理解してください。

2.言われたことを実行しないZ世代社員への関わり方

とある研修での出来事です。講義に臨む気持ちを切り替えるため、受講者の一人に講義の開始・終了の号令係をお願いしました。しかし、その号令係が、時間になっても号令をかけません。明らかに忘れている様子でもありません。その時は、私が自身で講義の開始・終了の号令をかけました。


休憩時間中に、その号令係が私のところに来て、時間通りの役割を果たせなかった理由を告げました。それは、研修再開時間に席に戻らない同じ参加者を気遣い、号令をかけることができなかった、というものでした。彼は、受講者の横のつながりを大切にするあまり、研修時間厳守の優先順位を変えたというのです。


Z世代は、はみ出した行動はとらない、つながりは大切にする、という傾向が強くあります。号令係であった彼の価値観は、【人間関係・つながり】>【時間厳守】>【役割遵守】でした。


私は彼に、営業パーソンに必要な資質である『時間厳守』と『約束を守る』『リーダ-シップ』について3分ほど講義を行いました。彼は自分の優先順位の付け方が間違っていたことを理解し、彼自ら遅刻をした参加者に時間厳守を求め、参加者全員が良い学びができることを目指そうと伝え、次の講義からはキチンと号令をかけてくれました。


管理職の方は、目に見えた現象だけで、いきなり厳しい言葉を発しないでください。言われたことを実行しなかった場合、必ずそこには理由があります。その理由を確認し、その理由のさらに奥にある目的・意義・価値を把握してから、行動修正を促すことで、その後の関わり方が良好になります。


この双方の目的・意義・価値確認の重要性を指導者側・管理職側が把握し、働く価値観の順位付けに働きかけることができれば、今後のZ世代の部下への動機づけがやりやすくなることは間違いありません。


まずは、相手を知ってから行動に移すことが重要です。くれぐれも、目から入る現実の様(さま)だけで判断し、指導することがないようにしてください。

3.期待する水準まで業務を行ってくれないZ世代社員への関わり方

「できれば、ここまでやってほしい」、「可能なら仕上げて欲しい」という期待の水準までZ世代の社員が業務を行ってくれない場合、これは上司側の指示ミスと思ってください。期待値があるなら、具体的に言語で伝えることが肝心です。


研修の途中で座学からグループ協議に移行するとき、「討議できるレイアウトの準備をしてください」と言うだけでは、Z世代は動きません。私は彼らに、具体的な出来上がり(机の配置イメージ)と個々の手順(教材をしまう⇒椅子を下げる⇒机を移動する⇒椅子を戻す⇒教材を机に並べる)を明示して作業を指示します。


こんなこともZ世代はできないのか、と思わないでください。


彼らはもちろん、その手順はわかっています。しかし、失敗を極度に恐れるZ世代は、具体的な指示やゴールが示されない状況で、勝手に自分から行動は起こしませんし、言われた以上のことはしません。


一方で、具体的な指示やゴールが示されると、その水準まできちんと行動してくれます。


皆さんは、期日までに必要な資料があるときに、「期日に資料を出せ」とだけ指示をしていませんか。もし、部下の資料をそのまま使うつもりならばよいですが、そうでなければ、この指示は間違いです。期日の業務終了間際に、期待水準とは程遠い資料を受け取ることになると覚悟してください。


それが嫌であれば、資料提出の期日を示したうえで、チェックと修正に必要な日数を示し、「そこから逆算した自分への提出期限」と「その段階で期待する資料の水準」を明示しましょう。


「ここまでやってくれると助かる」、「これくらいは伝わるだろう」というのは、上司側の勝手な思い込みです。業務指示は、ゴールが理解できるように具体的に伝えることがポイントです。



Z世代への関わり方について、私が自分の経験をもとに感じたポイントをお伝えしました。管理職の皆さんが、Z世代の部下と関わる際のヒントとして、少しでもお役に立てたら幸いです。



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