Netpress 第2406号 中国の子会社・関連会社に関する対応事項 中国の会社法が改正され7月1日から施行されました

Point
1.「外商投資法」による今年12月31日までの定款変更に加え、各種登記手続などの際に新会社法に適合するよう定款変更を求められる場面があります。
2.従業員300名以上の場合、従業員代表を董事に加えるなどの対応が必要となっています。
3.董事・監事・総経理等の役員の責任に関する条文が増えました。法令順守はもちろん、万一に備えて賠償責任保険(D&O保険)への加入も検討してください。


弁護士法人キャストグローバル
パートナー・弁護士 金藤 力


1.日系企業と新会社法対応

2024年7月1日、中国の改正「会社法(公司法)」が施行されました。日系企業の中国現地法人を含め、中国国内の会社には、いずれも今後は一律にこの新会社法が適用されます。


日系企業をはじめとする外資系企業(外商投資企業)、特に中国国内の企業や個人との合弁会社(中外合弁企業)では、多くの場合、「外商投資法」により今年12月31日までに「会社法」に準拠した定款への変更が必要となっています。7月1日以降にこの「外商投資法」対応のための定款変更を行おうとする場合には、新しい定款の内容は必ず新会社法に適合していなければなりません。


また、「外商投資法」による定款変更が不要またはすでに完了している会社であっても、今回の新会社法の施行に伴い、登記申請などの際に新会社法に適合するよう定款変更を求められることがあります。


以下では、新会社法の施行前後に日系企業からよく寄せられている質問について、Q&A形式で紹介します。

2.よくある質問(FAQ)

(1)定款変更について



日系企業各社では、どの会社でも、2024年12月31日までに定款変更が必要なのでしょうか?

設立から5年以上経っている中外合弁企業の場合、会社内部の組織機構として株主会が設置されず、董事会のみとなっている場合があります。
この場合、2024年12月31日までに株主会を設置する内容に定款を変更する必要があります。一方、すでに株主会を設置している場合には、改めて定款変更をする必要はない場合が多いものと思われます。



新会社法の施行を受けて、どの会社も必ず定款を変更しなければならないのでしょうか?

いいえ、そうではありません。今回の新会社法では、一部の例外的な場合(出資払込期限が新会社法に適合しない場合など)を除き、既存の会社の定款を変更することを必須とはしていません。
しかし、一部の地方では、法定代表者や董事・総経理といった役員の変更などの登記手続を申請する際、合わせて新会社法に沿う内容に定款を変更するよう求められる事例もすでに発生しています。



定款変更を行わない場合、何らかの処罰を受けることがありますか?

定款変更を行わなくても、そのことだけで特に処罰を受けることはありません。
ただし、「外商投資法」による定款変更については、2024年12月31日までに完了しない場合、その後は登記申請が受理されなくなり、法定代表者や董事・総経理など役員の変更や住所の変更などができなくなる不都合が生じることになりますので、早めの対応を考えてください。



定款変更が必要な場合、政府機関所定の書式を使っておけば問題ないでしょうか?

各地の会社登記機関の窓口では、7月1日以降に提出される定款について、新会社法に適合しているかどうかをチェックしています。定款書式(フォーマット)を参考として提供している場合もあります。
ただし、政府機関が配布している書式はあくまで一般的なものに過ぎず、すべての会社に当てはまるものではありません。
不用意に提供されている書式をそのまま使ってしまうと、重要な権利を失ったり思わぬ義務を課されてしまったりすることもあり得ます。合弁契約との矛盾・衝突が生じないかなどの問題もありますので、自社の状況に合わせて修正したうえで使用することをお勧めします。


(2)従業員代表董事について



従業員代表を董事に加えなければならなくなったと聞きましたが、本当でしょうか?

すべての会社ではなく、従業員300名以上の会社についてのみですが、従業員代表を董事会または監事会に参加させることを義務付ける条文が今回の新会社法で新たに設けられました。
従業員代表を董事に加えていない場合でもそのこと自体を処罰する条文はありませんが、この従業員代表董事がいないままの状態で放置していると、董事会での決議が手続の瑕疵により無効・取消しとなってしまうおそれがあります。
したがって、従業員300名以上の会社では早めに対応しておいたほうがよいものと考えられます。



従業員代表が董事に加わっていなくてもよい場合がありますか?

従業員が300名未満の会社の場合、そもそも従業員代表董事を置くことを義務付けられてはいません。
また、従業員が300名以上の会社の場合であっても、監事会を設置しており、かつ、監事のうちに会社従業員代表がいる場合には、条文の文言上、董事会については従業員代表董事がいなくてもよいこととなっています。


(3)董事等の役員の責任について



新会社法では董事等の役員の責任が重くなったと聞きましたが、どう変わったのでしょうか?

新会社法では、董事・総経理など役員の責任に関する規定が大幅に拡充されました。
具体的には、董事・総経理の第三者に対する賠償責任の規定や、清算手続につき董事が清算義務者である旨の規定などが新たに追加されています。
日系企業においても、会社法改正前から董事等に就任している個人の方々が被告として訴えられる訴訟事例が実際に発生していますので、今回の改正を受けて、今後はますます気をつけておくべき事項と思われます。



董事等の役員の責任を何らかの方法で限定できますか?

残念ながら、中国の会社法では、日本における取締役の責任限定契約のような制度は、会社法上はまだ取り入れられていません。ですので、董事等に就任する個人の方々が役員としての責任を追及される危険を避けるためには、当然ながら法令順守に留意するほか、賠償責任保険(いわゆるD&O保険)への加入など、他の方法を考える必要があります。
一部の中国の保険会社では、すでに新会社法に対応した保険商品の販売を開始しています。万一に備えて、そのような保険に加入することも検討するとよいかもしれません。



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