Netpress 第2402号 トラブルを回避する 契約関係を解消する際の手続と留意ポイント

Point
1.会社が締結する契約書は売買契約書をはじめ多岐にわたりますが、ビジネスの状況によっては、いったん締結した契約を解消したい場合もあります。
2.そこで、どのような場合に、どのような方法で契約を解消できるのかについて、手続と留意点を解説します。


湊総合法律事務所
弁護士 屋敷 里絵


1.契約の締結と契約関係の解消

契約を締結するかどうか、契約の相手方として誰を選択するか、どのような内容の契約にするかに関しては、法令の制限内において自由に決めることができます。これは、「契約自由の原則」という私法上の大原則です。


他方で、いったん契約を締結した場合には、当事者は当該契約に拘束されますので、一方当事者が任意にこれを終了させることはできません。


契約関係を解消したい場合には、以下の点を検討することになります。



契約書に定められた解除事由やその他の終了原因に該当するか

法定解除事由が存在するか

相手方との間で解約交渉が可能かどうか


なお、契約の終了原因に関して「解除」や「解約」という用語が使われますが、「解除」とは、解除権を有する者が一方的な意思表示により解除権を行使して契約を終了させることをいいます(民法540条1項)。「合意解除」という用法も必ずしも間違いではありませんが、本稿では、「解除」は、解除権者の一方的な意思表示により契約を解消することをいうものとし、当事者の合意や申入れによる契約の解消については「解約」という文言を使用します。


契約の終了原因としては、解除や解約のほかに、無効・取消し・契約期間の満了などもあり、これらを整理すると以下のようになります。


無効
契約が当初から効力を有しない場合(公序良俗に違反する内容の契約、意思能力がない当事者により締結された契約 など)
取消し
一応有効に成立した契約を、後日、取消権者が取り消す場合(詐欺または強迫行為による取消し、法定代理人の同意を得ない未成年者の法律行為の取消し など)
解除
契約または法律の規定により解除権を有する当事者の意思表示による契約の終了
解約
契約当事者の合意による契約関係の解消
期間満了
契約に定めた有効期間が満了したことによる契約の終了


2.契約解除の手続

法令または契約書に定めた解除事由が認められる場合、契約の解除を検討することになります。


解除を行うために催告が必要とされている場合には、まず履行の催告を行います(下参照)。




無催告解除が認められている場合には、相手方に対して解除の意思を表示することによって契約を解除します。


意思表示ですから口頭でも可能ですが、後に紛争になることを回避し、また、解除の意思表示が相手方に到達したことを確認できるようにしておくため、内容証明郵便や、配達記録付きの郵送手段で発送しておくことが重要です。


解除通知書には、次のような事項を記載します(下参照)。



どのような根拠に基づいて解除するのかという解除事由の明示

解除通知書によって解除の意思を表示する旨

解除される契約の明示(基本契約だけでなく個別契約も解除する必要がある場合や、基本契約に付随する覚書等も解除する必要がある場合もある)

解除に伴って返金・返品等が必要な場合には返金・返還請求




契約を締結する段階では、契約関係の解消にまで考えが及ばないこともあります。


しかし、トラブルを避けるためには、契約期間、契約内容に即した解除条項、任意解約条項についても十分に検討することが必要といえます。


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