Netpress 第2394号 外国人材の確保と育成に向けて 新たに始まる 「育成就労制度」とは
1.技能実習制度に代わる「育成就労制度」の創設(2027年までに制度が開始される予定)を柱とする改正入管難民法等が、先の通常国会で成立しました。
2.技能実習制度との違い、新制度の主なポイントなど、現時点で判明している情報をお届けします。
行政書士 飯田哲也
1.新制度創設の背景
「育成就労」とは、現行の技能実習制度に代わる新たな外国人雇用の制度です。
本来、途上国への技能移転を目的とした技能実習制度ですが、その目的は形骸化して実態と乖離し、法令違反も多発していました。
こうした現状を鑑みて実施される新制度は、育成就労者のキャリアの明確化と適切な権利保護、受け入れる側の要件厳格化などを通じて、人口が減少する日本を労働者にとって魅力的な「選ばれる国」にし、また外国人労働者が地域に根付くことで、産業を支える人材を確保することを目指しています。
2.技能実習制度と育成就労制度の違い
(1) 対象職種の増加
育成就労制度では、制度が適用される産業分野が変わります。
現行の技能実習制度は、農業、漁業、建設、食品製造、繊維・衣服、機械・金属等を対象としています。一方、育成就労制度では、原則として「特定産業分野」(特定技能ビザが対象とする産業分野)と同じ産業分野へと対象が広がります。2023年末時点での特定産業分野は、介護、ビルクリーニング、素形材産業・産業機械製造業・電気電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業ですが、今後、分野の種類は順次拡大することが予定されています。
(2) 転籍(転職)が容易に
現行の技能実習制度では、人権侵害があった場合などやむを得ない場合を除いて、原則として転籍ができない仕組みですが、新制度では労働条件について「聞いていた話と違う」といった場合でも転籍が認められることがあります。
また、就労期間が1年を超えており、本人の技能・語学レベルが基準を満たし、転籍先が育成就労の適正な実施基準を満たすなどの条件が整えば、「本人意向による転籍」も認められるようになります。
(3) 育成就労者を受け入れる機関が手数料を一部負担
技能実習制度では、技能実習生が本国で実習生を送り出す機関に対して多額の手数料を支払う仕組みになっており、借金を抱えて来日する実習生も多かったため、実習生による失踪・不法就労といった問題を生んできました。
新制度では、手数料の適正化に加えて、受け入れる企業側も一部を負担することが求められます。
3.ビザの要件・取得方法
育成就労ビザの取得には、日本語能力試験で一番やさしい「N5」レベル(またはN5レベル相当の講習の受講)が必要です。ビザの申請は、申請者を雇用する企業が直接受け入れる「単独型」と、雇用する企業を監理・支援する法人が受け入れる「監理型」の2種類があります。
4.特定技能への移行
現行の技能実習制度では、特定技能(1号)の在留資格を得る方法は技能実習を5年満了することによる「技能実習ルート」と、3年の技能実習を経て所定の技能検定と日本語能力試験等に合格することで取得できる「試験ルート」があります。
一方、育成就労制度においては、当面の移行期間を経た後は「試験ルート」のみ認められる予定です。
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