Netpress 第2094号 プロスポーツチームの理念から見る「インナーブランディング」の可能性と重要性

Point
1.生き残り続ける組織には共通点があり、その手法をまとめたものが「インナーブランディング」です。
2.何より、共感を生む「言葉」が重要。関わる人すべての記憶に残り、すべての企業活動の発展の軸となります。


株式会社揚羽
インナーブランディング研究室室長 黒田 天兵


世の中にはさまざまな「組織」があります。企業はもちろん、政治、宗教、部活、サークル、ボランティアなどの名称がありますが、同一の目的を持った2人以上の集団。それが「組織」の定義です。


この「組織」は、割と簡単にすぐ組成されるのですが、長続きせずに消滅したり、影響力を持たない小さい組織だったりというものが数多くあります。それを私は「弱い組織」と呼びます。


一方、何年も続けて成長しており、影響力を強く持つ大きい組織もあります。それを「強い組織」とします。


では、「強い組織」と「弱い組織」との違いを生み出すものは何でしょうか?



結論からいいます。それは、「言葉」です。「言葉」とは、その組織の方針となるメッセージであり、企業経営においては「理念」や「戦略・戦術」と呼ばれます。


たとえば、常勝を続ける一流のプロスポーツチームには必ずといっていいほど、力強い「言葉」があります。



「言葉」の重要性について、サッカー日本代表を例にとって説明します。


まず、歴代のワールドカップを戦ったサッカー日本代表チームの名称と結果を振り返ってみましょう。




さて、それぞれの歴代のサッカー日本代表チームには、どんな「言葉」があったでしょうか? 歴代の監督の就任会見や大会前後の発言を参考にしながら、次頁のようにまとめてみました。




こうして一覧で振り返ると、「言葉」を明文化した監督は、トルシエさんと岡田さん(2回目)であったと思います。


私が思うに、トルシエさんが一定の成功を収めた一番の理由は、戦略・戦術と一人ひとりに求める行動が恐ろしくはっきりしていたことでしょう。よく一人ひとりに求める行動を曖昧な表現にしてしまっている組織があるのですが、そういう組織では従業員から「どう動いたらいいか、よくわからない」という声が出てきます。トルシエさんのときは、かなり細かくマニュアルまで規定していたようですので、反発はあったにせよ、「どう動いたらいいか、よくわからない」という選手は一人もいなかったのではないかと思うのです。


また、岡田さんは、目指す姿と戦略・戦術が常に明確でした。特に南アフリカ大会では、直前のコンセプト変更はあったものの、準備段階からかなり明確に明文化しており、チームスタッフやメンバーは岡田さんの下では迷うことが少なかったのではないでしょうか。



一方、「言葉」が曖昧であり、明文化もしていない監督はジーコさんでした。


ジーコさんは、「選手に考える自由」を与えました。この考え方自体は素晴らしいことなのですが、あまりにすべてを考えさせてしまうと、組織としてはやはり機能しません。このときの日本代表チームは、黄金世代と呼ばれるようなタレントが成熟期を迎えており、個々の能力は非常に高かったのですが、組織としての統率が取れていなかったようで、会話もかなり少なかったというのが有名です。



「強い組織」と「弱い組織」を分かつもの。それは「言葉」であると私は確信を持っています。曖昧ではなく力強い「言葉」は、明文化された瞬間から、関わる人すべての記憶に残り、すべての企業活動の発展の軸となります。


よい「言葉」の定義は、以下の5つの条件を兼ね揃えているものだとも思います。


①他社とは異なる「自社の強み」をはっきりと浮かび上がらせている。
②「自社が進むべき道」を指し示している。迷ったときの判断基準になってくれる。
③お客様(カスタマー/クライアント)が他社ではなく自社を選ぶ理由となっている。
④社員が働く理由となっている。
⑤世の中の想いと共振している。


コロナの影響もあり、改めて組織の存在意義そのものから見直す必要がある企業は急増しています。方針の再策定、従業員の意識改革にお悩みの企業の方に、本記事が少しでも参考になれば幸いです。



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